超低価格アパレルのシーイン(Shein)、IPOを控えるもサプライヤー工場の労働環境に批判が集中

Shein

超低価格帯のアパレル小売であるシーイン(Sheinが新規株式公開(IPO)控える中、同社のサプライヤー工場の労働条件に対する疑問が一層強まっている。新しい報告書によると、同社の工場の従業員らは、依然として過酷な長時間労働を強いられていることが明らかになった。

変化が見られないシーインの劣悪な労働環境が明るみに

スイスの擁護団体、パブリック アイ(Public Eye)が実施した最新の調査では、一部の労働者が75時間の労働週間を強いられていることが判明。これは、同団体が2年以上前に発表した報告書に続くものである。ファッション業界では、外部の生産施設に依存する企業において、労働条件の問題が長年懸念されてきたが、厳格な規制が導入されているにもかかわらず、依然として違反が見受けられる。

パブリック アイは、シーインに供給している中国の6つの工場で13人の従業員にインタビューを実施。労働者たちは、過度の残業が依然として常態化していることを証言している。特に広州にある6つの生産拠点が、過度な残業を強いられている工場として特定された。

「毎日、朝の8時から夜の10時半まで働いて、毎月1日休みを取る。お金がかかるから、これ以上休めません。」パブリック アイの取材に対し、こう語ったのは、20年以上ミシンに携わり、シーイン製品の特に目立つ見返しの縫い目を出来高制で作っている男性だ。

シーイン(Shein)は自社のサプライヤーを公表していないが、パブリック アイは従業員の証言と製造中のシーイン製品の存在に基づいて、工場を特定。同団体が訪れた6つの拠点は、40〜80人の労働者を雇用する小規模な作業場や、最大200人の労働者を雇用する大規模な工場が含まれていた。

労働者たちは、昼食と夕食の休憩を除いて、平均して1日12時間働いており、通常は週6日、場合によっては週7日働いているとのことだ。ある会社では、夜11時までの終業が公式に認められているという。

シーインのために服を縫う労働者たち。2023年、広州。Courtesy of Public Eye

また賃金に関しても、2021年の報告書と比較し、ほぼ変化は見られない。工場、季節、専門知識のレベル(超過残業時間のみを含む)により、一般労働者の賃金は月6,000~10,000元の間で変動するが、季節変動が激しく、給与は依然として生産アイテム数に左右されている。

またシーインのサプライヤーは、少量生産で常に変化するパターンを扱う為、かなりの専門的経験が必要となり、労働者は30代後半よりも上の世代が多く見れる。そうした背景から、カバーステッチの専門家は、月に1万元以上を受け取ることもある。他の針仕事職人の賃金は6,000元から8,000元、品質チェック職人の賃金は7,000元ほどだという。

これらの調査結果に対し、シーインはBBCへ「問題の解決に向けて真剣に取り組んでおり、労働条件の改善に関して大きな進展を遂げた」と主張。また、「我々のサプライチェーン全体のガバナンスとコンプライアンスの強化に数千万ドルを投資している」と付け加えた。

IPOを目前に控えたシーインだが、倫理的な実践と労働条件の改善を示すために、ますます監視の目は厳しくなっている。今後、同社がどのような具体的な対策を講じるかが注目されるところである。