日本を代表する化粧品メーカー・資生堂が、米国子会社である資生堂アメリカ(Shiseido Americas)において大規模な人員削減を実施することが明らかになった。これは、2024年を通じて米国事業の業績が大きく悪化し、2025年も回復の見通しが立たない中で、経営構造の見直しを迫られた結果である。
今回の動きは、インスタグラムの匿名アカウント@esteelaundryにより社内メモがリークされたことで表面化した。そのメモの中で、資生堂アメリカの暫定最高経営責任者(CEO)アルベルト・ノエ(Alberto Noé)は、現状について次のように述べている。
「資生堂アメリカは現在、複数の面で深刻な課題に直面しています。2024年を通じて業績は大幅に悪化しており、2025年の見通しも依然として厳しい状況です。」
さらに資生堂は、『Business of Fashion(BoF)』の取材に対して、今回の人員削減に関して以下のように公式コメントを出している。
「資生堂アメリカでは、成長と収益性の回復を目指し、事業の再構築を進めております。その一環として、社内の一部ポジションを削減するという非常に難しい判断を下すこととなりました。なお、今回の措置により影響を受けられた従業員の皆さまには、移行期間中の支援を提供させていただく予定です。」
削減される具体的な人数については明かされていないものの、資生堂アメリカは米国内で約2,000人の従業員を抱え、ニューヨークの本社のほか、オハイオ、テキサス、フロリダ、カナダにも拠点を構えている。
業績悪化の背景には、看板スキンケアブランド「ドランクエレファント(Drunk Elephant)」の不振がある。同ブランドは2025年第1四半期に60%以上の売上減を記録し、アメリカ地域全体の売上も前年同期比で19%減少した。また、アメリカ国内での消費需要の鈍化だけでなく、中国におけるトラベルリテールの低迷、さらにはインフレや経済の先行き不透明感も、資生堂アメリカの業績を圧迫しているとみられる。
今回の人員削減は、資生堂に限らず、ビューティ業界全体に広がる構造改革の流れの中にある。2024年には、エスティ ローダー カンパニーズ(Estée Lauder Companies)が約7,000人の人員削減を発表し、2025年4月にはコティ(Coty Inc.)が700人規模のリストラを実施。また、すでに約6,000人の削減を完了したことを明らかにしている。
さらに最近では、ロレアル(L’Oréal)が香港と中国本土のオフィス統合を検討しているとの報道があり、約200人の従業員に影響が及ぶ可能性があると噂されるなど、業界全体で再編の動きが加速している。
こうした業界の潮流の中で実施される資生堂アメリカの大規模な人員削減は、同社が直面する経営環境の厳しさと、グローバルなビューティ市場が大きな転換点にあることを示している。
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