デンマーク発のウィッシュリストアプリ「ゴーウィッシュ(GoWish)」が、2025年のホリデーシーズンを前に米国App Storeで1位を獲得し、世界的な注目を集めている。11月16日(現地時間)には 米国だけで15万5403件の新規ダウンロードを記録し、翌朝には総合ランキング1位へ上り詰めた。
ゴーウィッシュは現在、米国で723万人以上、世界で1500万人以上の登録ユーザーを抱える。デンマークでは「願いの雲(Ønskeskyen)」の名前で展開され、350万人以上のユーザーを獲得しており、人口の半数を超える普及率を誇る。
国営郵便サービス発の“ウィッシュリスト”がスケールアップ企業へ
ゴーウィッシュは、一般的なスタートアップとは異なる意外な形から始まった。アプリが誕生したのは2015年のこと。デンマークとスウェーデンの国営郵便サービス「ポストノード(PostNord)」が、季節限定のウィッシュリスト企画として公開したのがきっかけだ。
2020年にはデンマークのVC「ドットコム・キャピタル(Dotcom Capital)」によってスピンアウトされ、独立したプロダクトとして再構築される。さらに2023年、国際版アプリ「ゴーウィッシュ」がローンチされると、同サービスは一気に世界規模の成長軌道へと乗った。
2025年初頭には、ロンドンの投資会社「キャピタルD(Capital D)」が株式の3分の1を取得し、同社の国際展開を後押しする体制が整えられた。現在ゴーウィッシュは、米国だけでなく、ノルウェーやスウェーデンなど複数の市場でApp Storeランキング上位に名を連ね、グローバルプラットフォームとしての存在感を一段と強めている。
共同創業者兼チーフグロースオフィサーである カスパー・ラヴン=ソーレンセン(Casper Ravn-Sørensen) は、今回の快挙を次のように語っている。
「今回の1位獲得はGoWishだけでなく、デンマークのテック業界全体にとって大きな意味を持つ出来事です。デンマーク発の“非ゲームアプリ”として米国App Storeの1位を獲得したのは、私たちが初めてなのですから。」
さらに彼は、次のようにも述べている。
「わずか5年前にこのプラットフォームをスピンアウトしたばかりですが、国営企業のちょっとした“ウィッシュリスト企画”が、今や米国でダウンロードランキング1位を獲得する世界的なソーシャルショッピングプラットフォームへと成長したことを思うと、その歩みはまさに驚くべきものです。しかし、これはまだ序章にすぎません。ここからさらに大きな展開が待っています。」

ウィッシュリスト×ソーシャルショッピングの新しい形
こうした国営発の小さなデジタル施策が、わずか数年で世界規模のプラットフォームに進化した背景には、戦略的パートナーシップとユーザー体験への徹底したこだわりがある。
ゴーウィッシュは、ユーザーがあらゆるオンラインストアの商品を自由にウィッシュリストへ追加し、家族や友人と共有できるプラットフォームだ。リンクのコピー&ペースト、商品検索、アプリ内のインスピレーションフィードからの追加など、多様な方法でリストを作成できる。
大きな特徴は、家族や友人が“ギフト予約”できる仕組みを導入している点にある。これにより重複したプレゼントを防ぎ、ギフト選びのストレスを軽減する。まさにホリデーシーズンとの相性が抜群の機能なのだ。
ラヴン=ソーレンセンは、次のようにも強調する。
「私たちがつくったのは、ギフト選びを“楽しく・個人的で・ストレスのないもの”にするプラットフォームです。特にホリデーシーズンには、その価値が最大限に発揮されます。」
加えて、彼らは「ギフトの課題を解決する」というミッションを掲げており、デジタル時代のギフト体験をアップデートする存在として存在感を増している。
スナップが“成功事例”として指名。広告戦略が世界的成長を後押し
ゴーウィッシュの急拡大を支えているのは、メタ、TikTok、グーグル、スナップといった主要広告プラットフォームとの連携である。特にスナップは、2024年第4四半期の決算説明会にてゴーウィッシュを名指しで取り上げ、「他の大手プラットフォームを上回るコスト効率とインストール数を実現している」と評価。CPI(インストール単価)と総インストール数の両面で優れた成果を示しているという。
データドリブンな広告運用との相性が良いことも、世界的なユーザー獲得の背景にある。現在ゴーウィッシュは、6万5000以上のアフィリエイトパートナー、700以上のブランドパートナーを支え、ホリデーシーズンを前にさらに拡大が続いている。
ソーシャルショッピングの広がり──キュレーション型コマース「ショップマイ」も躍進
また、ギフトやウィッシュリストを軸に、消費者とブランドを結ぶ新たな購買体験が広がる中で、同じ領域で存在感を強めているのが「ショップマイ(ShopMy)」だ。同社は“キュレーテッド・コマース”を掲げ、信頼できるテイストメーカーやクリエイターが商品を推薦・編集する仕組みを提供し、2025年には評価額15億ドルで7,000万ドルの資金調達を実施。クリエイターコマースのインフラとして急成長を遂げている。
ショップマイの年間取扱高はすでに10億ドルを突破し、世界中で18万5,000人以上のテイストメーカーが参加。ブランド側も1,200社以上が同プラットフォームと連携し、広告依存型のマーケティングから、キュレーターの“センス”を基盤とする新しい価値創造へと移行しつつある。

CEOの ハリー・レイン(Harry Rein) は次のように語っている。
「ショップマイは、本物の価値を信じるという信念のもとにあります。持続的なブランド価値は、広告やアルゴリズムによる推薦ではなく、キュレーションとセンスによって生まれる。消費者が世界最高の商品を発見し、購入できるようにすることが私たちの使命です。」
この思想は、ギフトやウィッシュリストを核とするゴーウィッシュの世界観とも密接に重なる。“アルゴリズムではなく、人の想い(センス)によってつくられる購買体験”という価値観が、欧米の消費者の間で急速に支持を集めているからだ。
ブランド側が「広告費」ではなく「文化的価値」で存在感を示す時代において、ショップマイのキュレーターエコシステムと、ゴーウィッシュが築く“ギフト体験の社会基盤”は、ソーシャルショッピングの構造そのものを更新しつつある。両者の伸長は、消費者行動の変化が一過性ではなく、明確な方向性を持った市場変革であることを示している。
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