ケリング(Kering)、ニューヨーク五番街の旗艦不動産を共同運営へ

Kering

12月16日(現地時間)、フランスのラグジュアリーグループ「ケリング(Kering)」は、ニューヨーク五番街に位置する保有不動産の60%を売却し、投資会社「アルディアン(Ardian)」とのジョイントベンチャー体制へ移行したことを発表した。対象となるのは、ニューヨーク市五番街715–717番地に位置する、同社にとって象徴的なリテール不動産である。

この取引は即時発効のジョイントベンチャー契約として締結され、アルディアンが60%、ケリングが40%の持分を保有する構成となった。取引総額は9億ドルで、ケリングにとっての純手取額は6億9,000万ドルにのぼる。

同物件は、世界でも屈指の商業アドレスである五番街に立地し、延床面積約11万5,000平方フィート(約10,700平方メートル)に及ぶ複数階層のラグジュアリー・リテールスペースを擁する。ブランド価値と視認性の双方において、極めて戦略的な資産であることは言うまでもない。

不動産の「所有」から「戦略的運用」へ

なお、今回の取引は、ケリングが近年進めている不動産ポートフォリオ戦略の延長線上に位置づけられる。すでにパリにおいても同様のスキームを採用しており、超一等地のリテール拠点を長期的に確保しながら、バランスシートの柔軟性を高める狙いがある。

ケリングの最高執行責任者(COO)であるジャン=マルク・デュプレ(Jean-Marc Duplaix)は、次のように述べている。

「当社は不動産ポートフォリオの運営に関する戦略を着実に実行する中で、主要投資会社であるアルディアンとの成功したパートナーシップを引き続き推進しています。すでにパリで締結した投資契約と同様に、本取引は、当社のメゾンにとって長期的に極めて重要なリテール拠点を確保すると同時に、財務の柔軟性を高めるものです。」

ラグジュアリーブランドにとって、旗艦立地のコントロールはブランド体験そのものに直結する一方で、資本効率の最適化も同時に求められる時代において、今回のスキームは象徴的な判断である。

アルディアンにとっては米国初の不動産投資

一方、アルディアンにとって同件は、米国における初の不動産投資案件となる。五番街という超一等地への参入は、同社のグローバル不動産戦略における重要なマイルストーンである。

アルディアンのエグゼクティブ・コミッティ・メンバーであり、不動産部門責任者を務めるステファニー・ベンシモン(Stéphanie Bensimon)は、次のようにコメントしている。

「ケリングとのパートナーシップを継続できることを大変嬉しく思います。715–717フィフス・アベニューは、卓越した視認性と長期的な価値を兼ね備えた物件です。本件は、アルディアンにとって米国での初の不動産投資であり、極めて魅力的な市場への戦略的な進出を意味します。」

また、アルディアンのフランス不動産部門責任者兼マネージング・ディレクターであるオマール・フィエル(Omar Fjer)は同取引を「革新的なパートナーシップを構築し、卓越したファンダメンタルズを備えた資産を確保するというアルディアンの専門性を体現するもの」とし、「当社は、最も需要の高いロケーションにおけるウルトラ・プライム資産の取得および運営に強くコミットしており、ステークホルダーに持続的な価値を提供していきます」と続けた。

ラグジュアリー業界における不動産戦略の現在地

ブランド価値、顧客体験、財務戦略。これら三要素の交差点に位置するのが、ラグジュアリー企業の不動産戦略である。ケリングによる今回の五番街不動産の持分売却は、「所有」と「運用」のバランスを再設計する動きといえる。

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