マッチズ（Matches）、新ラグジュアリーグループ「Hulcan」のもとで再始動へ

12月17日（現地時間）、経営破綻により事業を終了していたラグジュアリーEコマース「マッチズ（Matches）」が、新たなオーナーのもとで復活することが明らかになった。会員制ラグジュアリーショッピングアプリ「マイル（Mile）」を手がけるジョー・ウィルキンソン（Joe Wilkinson）とマリオ・メイハー（Mario Maher）が、マッチズおよび同社のインハウスブランド「レイ（Raey）」のブランド資産を取得した。

両名は、新たに設立したラグジュアリーグループ「ハルカン（Hulcan）」を通じて、マッチズとレイを2026年に再ローンチする計画だ。具体的な事業モデルや運営体制については、2026年を見据え、新年にかけて段階的に発表される予定である。

「キュレーションとエクスクルーシビティ」というDNAを継承

マリオ・メイハーは、今回の買収の背景について、『ヴォーグ・ビジネス（Vogue Business）』の取材に対し、マッチズが長年築いてきた編集力と独自性に魅力を感じたと語っている。

「私たちは、マッチズのヘリテージ、そして人々がマッチズと聞いて思い浮かべる“キュレーション”“エクスクルーシブ性”“強いプロダクト”を守りたいと考えています。その核は維持します。ただし、以前とまったく同じではありません。確実に新しい視点が加わります。」

一方、ジョー・ウィルキンソンは、ハルカンを単なる小売グループではなく、ブランド・メディア・テクノロジーを横断するプラットフォームとして構想している。

「これは私たちにとって非常に大きな節目です。ブランド、メディア、テクノロジーを一つのエコシステムとして統合し、ラグジュアリーの未来に向けた基盤を築いていきます。私たちは単に買い物をする場所を作っているのではありません。人々がブランドを発見し、体験し、つながる方法そのものを形づくりたいのです。過去6年間、すべてをゼロから構築し、イノベーションを起こしながら、責任ある形でスケールし、ブランドと顧客の双方にとって真の価値を創出できることを証明してきました。投資家やパートナーの支援を受け、私たちは確かな勢いとともに次の章へと踏み出します。」

フレイザーズ傘下での混乱を経て、新章へ

マッチズは1987年、トム・チャップマン（Tom Chapman）とルース・チャップマン（Ruth Chapman）夫妻により、ロンドン郊外ウィンブルドンの独立系セレクトショップとして創業。その後、グローバルなラグジュアリーEコマースへと成長したが、2023年12月にフレイザーズ・グループ（Frasers Group）に買収される。

しかし、フレイザーズ・グループは買収から3カ月足らずの2024年3月、マッチズを管理下に置き、事業の整理を決断した。この過程で270人以上の従業員が解雇され、ブランド取引先に対しては約5,000万ポンド規模の未払い債務が残されたとされる。その後、フレイザーズはマッチズの知的財産権を再取得し、今回それをハルカンへと売却した。

投資家が示す「次世代ラグジュアリー」への期待

ハルカンは、フレイザーズ・グループをはじめ、パグス・グループ（PagsGroup）、パーム エンジェルス（Palm Angels）創業者のフランチェスコ・ラガッツィ（Francesco Ragazzi）、さらにLVMHラグジュアリー・ベンチャーズ（LVMH Luxury Ventures）、エルメス家、ステファノ・ロッソ（Stefano Rosso）、カルメン・ブスケッツ（Carmen Busquets）といった有力投資家の支援を受けている。報道によれば、調達額は約1億5,000万ドル規模にのぼる。

フレイザーズ・グループのCEO、マイケル・マレー（Michael Murray）は、新体制への期待を次のように語っている。

「フレイザーズ・グループでは、ラグジュアリーの未来への投資を、エレベーション戦略の中核に据えています。ジョーとマリオのリーダーシップのもとで成功を収めてきたマイルは、現代のラグジュアリー消費者に対する彼らの繊細な理解を示すものです。ハルカンはこの勢いをさらに発展させ、次世代のデジタルネイティブを惹きつけていくでしょう」

なお、ウィルキンソンは、マイルがオフプライスモデルである一方、マッチズは同様の方向性を取らないことも明言しており、新生マッチズは従来の枠にとらわれない形で再定義される見通しだ。

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