「バーニーズ ニューヨーク(Barneys New York)」が、再びニューヨークに戻ってくるかもしれない。
「オーセンティック ブランズ グループ(Authentic Brands Group、以下、ABG)」のCEOであるジェイミー・サルター(Jamie Salter)は、かつての旗艦店があったマディソン・アベニュー 660番地での再出店に向けて交渉を進めている。
In Short
- ABGのCEO、ジェイミー・サルターが、物件所有者アシュケナジー社と売上連動型リースを交渉中。
- 店舗運営者として、エルメネジルド・ゼニア前CEOのリチャード・コーエンに打診。
- フロリダ州ナポリでの小型店舗も計画しており、2027年オープン予定。
オーセンティック・ブランズ・グループが、バーニーズ ニューヨークのマディソン・アベニュー660番地での再出店に向けて交渉を進めていることが、明らかになった。同地は1993年から2019年の経営破綻まで、バーニーズの旗艦店があった場所だ。
ABGのCEOであるジェイミー・サルターは、物件を管理するアシュケナジー・アクイジション社(Ashkenazy Acquisition Corporation)に対し、固定賃料ではなく売上に連動するリース契約を提案している。同社はこの条件に慎重な姿勢を示しているとされるが、交渉は現在も継続中である。
再出店が現実味を帯びた背景には、2026年1月のサックス グローバル(Saks Global)の経営破綻がある。サックスは2019年のバーニーズ買収時に、米国でのバーニーズ小売に関する独占権を取得しており、この契約が6年間にわたってバーニーズの単独出店を事実上阻んでいた。しかし今回のサックスの破綻で、その制約がなくなったというわけだ。
運営者の確保が焦点
複数報道によると、ABGは「エルメネジルド ゼニア(Ermenegildo Zegna)」の前CEOであるリチャード・コーエン(Richard Cohen)に、旗艦店の運営を打診している。
ABGは「ブルックス ブラザーズ(Brooks Brothers)」や「ジューシー クチュール(Juicy Couture)」、「ノーティカ(Nautica)」など数十のブランドを保有しているが、その多くは自社運営ではなくライセンス供与を基本とするモデルである。店舗の実際のオペレーションは同社の専門領域ではなく、今回のプロジェクトにおいては、経験豊富な外部人材の確保が不可欠となる。
約22万平方フィートの高級百貨店を運営するには、仕入れ判断、ブランドとの取引関係、キュレーション力が不可欠だ。売上連動型リースでは店舗の売上実績がそのまま家主の収入に直結するため、運営者の力量が成否を分ける。
フロリダでの小型展開も
さらにABGは、マディソン・アベニューの旗艦店に加え、フロリダ州ナポリでの小型バーニーズ出店を計画している。2027年のオープンを予定しており、旗艦店の約10分の1の規模。富裕層が集まるリゾート地で、ブランドの訴求力を小規模に検証する狙いがある。
バーニーズ ニューヨークは1923年、セブンス・アベニューのメンズ・ディスカウントショップとして創業。アメリカを代表するラグジュアリー小売店に成長したが、賃料上昇やEC台頭の影響で2019年8月にチャプター11を申請した。ABGは同年、ブランドの商標権を取得している。
なお、2024年8月には、ビューティブランド「アワーグラス(Hourglass)」とのコラボレーションとして、ソーホー地区プリンスストリート14番地に、ポップアップ形式でバーニーズ ニューヨークを復活させた。
店内は元クリエイティブディレクターのサイモン・ドゥーナン(Simon Doonan)がデザインを手がけ、元ファッションディレクターのジュリー・ギルハート(Julie Gilhart)がキュレーションを担当。バーニーズの象徴であった“発見の場”としての価値を再提示した。

問われる百貨店の未来
百貨店という業態そのものが揺らぐなかで、バーニーズの復活が成功するかは依然として未知数だ。近年のラグジュアリーリテール市場では、消費者の関心は商品そのものから体験価値へと移行しており、従来型の百貨店モデルは、その存在意義自体が問われている状況にある。
バーニーズが2019年に破綻した背景にも、巨大店舗の非効率性、ECシフトへの対応遅れ、そして高騰する賃料といった構造的課題があった。これらは現在も完全に解決されたわけではない。
つまり、今回の再出店構想は、過去の成功モデルの再現ではなく、現代に適応した新たなリテールの形を構築できるかどうかにかかっている。
その一方で、復活の現実性がこれまで以上に高まっていることも事実である。サックスの破綻によって法的障壁は取り払われ、ABGは実際に交渉と人材確保を進められており、バーニーズのマディソン・アベニュー復帰は、2019年以降で最も現実に近づいている。
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