ディオール(Dior)は3月30日(現地時間)、インドのムンバイにある歴史的建造物、インド門で2023年プレフォールコレクションを発表する。
欧州のラグジュアリーブランドがインドで大規模な単独ショーを開催するのは、これが初めての事となる。
今回のディオールのプレフォールコレクションでは、インドの伝統的なシルエットを参考にした作品や、ムンバイのアトリエであるチャーナキヤ工芸学校(The Chanakya School of Craft)による刺繍の装飾が施される予定だ。
チャーナキヤ工芸学校は、2017年にモニカ シャーとカリシュマ スワリによって設立された非営利団体である。インドの女性達の手に職を与え、国の文化遺産の一部である工芸品を継承する為の取り組みを行っている場として知られている。
ブランドのクリエイティブディレクターであるマリア グラツィア キウリは、長年に渡りインドの人々と交友的な関係を保ち、チャーナキヤ工芸学校と密接に協力しながら、工芸品を中心としたコレクションの刺繍や、ショーの舞台美術を手掛けてきた。今回のコレクションでは、インドのエスニックなシルエットを参考にしたイブニングコート、シルクのドレス、サリー風のスカートが登場し、4月下旬から店頭で販売が開始される予定だ。
キウリは Business of Fashionへの取材に対して、「ファッションとは、10分間のランウェイをはるかに超えるものです。そしてそれは、この素晴らしいプロジェクトで一緒に働くすべての人たちのことです。私はこの国を愛していて、この国の人々が私のクリエイティビティを多大に支えてくれているので、このショーを行っているのです。こういった私の個人的な理由から行っているんです。」と述べた。
また、ショーの開催地をインドで行うことについては、「インドでショーをするということは、インドの刺繍の遺産を称えることでもあり、ファッション界において刺繍がいかに重要であるかを示すことでもあります。」と続けた。
近年ラグジュアリーブランドの市場は、欧州、北米以外に目を向けられている。特にインドは世界の億万長者の36%が住んでいると言われていており、今後10年で高い成長が期待できる国として注目が集まっている。Luxury Tribuneによると、「現在インドの小売のインフレ率は6.77%であるにもかかわらず、2022年のラグジュアリー市場は約75億ドルの売上を計上した」という。また、「2030年までにインドのラグジュアリー市場は現在の3.5倍に発展するだろう」と予想されている。
またシャネル(CHANEL)は昨年、2022-23年メティエダール・コレクションのショーを西アフリカにあるセネガルの首都ダカールで発表した。欧州、北米のラグジュアリーブランドがサハラ以南のアフリカでファッションショーを行ったのは、これが初めてのことであり、シャネルもまた、セネガルの現地の人々と長期的で良好な関係を築くことで、その土地に根付く文化とブランドのサヴォアフェール(受け継がれる職人技術)を融合し、発展させてきた。
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こういった動きからも、主要なラグジュアリーブランドは、これまで未開拓だった新たな地で現地の人々と一丸となってコレクション制作、発表を行い、今後移り変わっていくラグジュアリー市場に備えているように見える。