ラグジュアリー業界にもサステイナブルの波
毎年2月に開催される同年の秋冬へ向けた世界4代ファッションコレクション。
通常ニューヨークファッションウィークから始まり、ロンドン、ミラノ、そして最後を締め括るのが通称パリコレと呼ばれる、パリファッションウィークだ。
2月中旬〜3月始めまで続くこのファッションウィークだが、冬で寒いということもありゲストで呼ばれるセレブリティやインフルエンサーのストリートスナップには、ファーコートやファーをアクセントにしたファッションに身を包む人が多く見られる。
かつてファーはラグジュリアスな素材として大変人気がありファーを纏うことは富裕層を示す一種のステータスであった。しかしこの数年でファッション業界にもサステイナブルの流れが訪れ、ファーに対する消費者の価値観や意識は大きく変化している。
その影響もあり、年々リアルファーを身につけている人の人口は減少しており、ファッションウィーク中にファーを身に纏うセレブリティやインフルエンサーも、ビーガンファーやエコファーブランドのものを身につける人たちが多くなった。
現在でこそサステイナブルな取り組みがファッション業界でも本格的に見られるようになったが、この動きが世界に広まる前にファーの使用をしないと宣言していたのが、アメリカのデザイナーズブランドCalvin Klein(カルバン・クライン)である。
カルバン・クラインは1994年の時点で既にファーからの解放を宣言していた。
2001年にはレザーや毛皮を使わないCruelty-free (クルエルティフリー)のファッションブランドとして、イギリスでStella McCartney (ステラ マッカートニー)がレーベルを立ち上げる。
それからアメリカのファッションブランドであるTommy Hilfiger (トミーヒルフィガー)とやRalph Lauren(ラルフローレン)なども、2000年代半ばにファーの使用を禁止した。
このように、2000年前後には既にいくつかのアメリカの大手ファッションブランドがリアルファーを使用しないという宣言をしていた事が分かるだろう。
ファッション業界で変化するリアルファーの存在
そして近年のサステイナブルという動きの波が本格的に世界のファッションブランドにインパクトを与え始めたのが、2016年頃からだ。
イタリアのファッションブランドGucci (グッチ) も2017年にファーの使用を禁止し、ファーという素材そのものが今はもう時代遅れだという宣言をした。
またグッチの親会社であるKering (ケリング)は、ケリング傘下にある全てのブランドにおいてもファーの使用をしない方針を発表した。
ちなみにヨーロッパのラグジュアリーファッションブランドにおいて、Gucci(グッチ)やYves Saint Laurent (サン・ローラン)、Bottega Veneta(ボッテガ・ヴェネタ)、Balenciaga (バレンシアガ)、Alexander McQueen (アレキサンダー・マックイーン)などを傘下に持つケリンググループと、Louis Vuitton (ルイ・ヴィトン)、Dior (ディオール), Fendi (フェンディ),Givenchy (ジバンシィ)などを傘下に持つLVMHグループは、長年のライバル関係にあるが、LVMHのブランドでサステイナブルな方針を導入しているのはステラ マッカートニーのみとなる。
またChanel(シャネル) はファーの使用を2018年に廃止する宣言をするとともに、クロコダイルやレオパードのようなレザーについても仕様を廃止するという宣言をしている。
このようにヨーロッパのラグジュアリーブランドにも急速にファーの使用を禁止するという動きがある中で、依然としてリアルファーを使用しており、正式にファーの廃止を宣言していないのが、CELINE (セリーヌ)、Dior (ディオール)、Louis Vuitton (ルイ・ヴィトン)、Fendi (フェンディ)、Hermès (エルメス)、Givenchy (ジバンシィ)、Salvatore Ferragamo S.p.A. (サルヴァトーレ・フェラガモ)だ。
しかしその他多くのラグジュアリーブランドはリアルファーの使用を撤廃し、同時に消費者の大半がその動きをサポートしているのが事実である。
CELINE (セリーヌ)、Dior (ディオール)を始めとするこれらのブランドが、リアルレザーやファーといった素材の使用撤廃を宣言するのも時間の問題ではないだろうか。