在庫過剰に注意喚起!アンチ ブラックフライデーを唱えるブランドたち

アメリカではブラックフライデーに対する消費者意識が変わりつつある。

アメリカのブラックフライデーといえば、サンクスギビングの翌日の金曜日のことを指し、1年で最も大きなセールシーズンだ。そもそも「ブラックフライデー」とは、消費者が日頃よりもお得な割引価格でウィッシュリストの商品を購入したり、クリスマスに向けて大量のギフトを買い込んだりすることで、赤字だった店の売り上げが一気に黒字に転換するのという由来から来ている。かつてのサンクスギビングデーは当日の深夜から店舗がオープンし、夜から朝にかけて大勢の人が押し寄せるという様子が一般的だった。

しかし、コロナ禍以降その流れは変化しており、多くの人々がオンラインショッピングに移行している理由から、ホリデー中店舗は休業し、オンライン販売でのセールのみを行うという店も多くなってきている。また、セールの開始時期も年々早まっており、今年度に関しては11月初旬からすでにブラックフライデーセールを開始していた店も多くあった。

しかしこのようにセール時期が延長されると、本来のブラックフライデーセールよりも割引価格であること自体が、消費者にとって特別なものではなくなっていく。

またエシカル消費に高い関心を寄せる消費者の増加に伴い、ホリデーシーズンのセールの概念自体が人々の価値観と相容れないものになってきているのだ。

今年のホリデーシーズンは、ブランドが過剰に製品の在庫を入荷しているという事実にもかかわらず、ほとんどのアパレルの割引率は33%を超えていない。さらに、DataFeedWatchとcart.comによる共同グローバルレポートによると、すべてのカテゴリにおける製品の30%が11月の第1週にはすでにセール価格で販売されていた。

ブラックフライデーのセールが10月から11月にかけて行われるようになった理由は「過剰在庫」にあると、ラグジュアリーブランド及び小売業界のコンサルタントであり、ファッション工科大学のファッションビジネスマネージメント科の准教授を務めるショーン グレイン カーター氏は述べている。これは、インフレ率の上昇と銀行の金利により、消費者がドルを引き伸ばさざるを得なくなったため、消費者の需要が後退したことが原因だ。国勢調査局のデータによると、2022年9月の衣料品店の在庫数は、前年と比べて24.1% 増加している。

そういった在庫過剰の動きに反発し、いくつかのブランドは、ブラックフライデーセールを行わないという姿勢を見せ始めた。

スイスの鞄ブランド フライターク (Freitag) やイギリスのファッションブランド レイバーン (Raeburn) を始めとするいくつかのライフスタイルブランドは提携を結び、サンクスギビングの週末にかけてアンチ消費イベントを開催している。また、フライタークでは「S.W.A.P.フライデー2022」という言葉を掲げ、「ブラックフライデーを「購入する日」から「交換する」日に」というスワップキャンペーンを実施中だ。

フライタークの代表であるエリザベス・イセネッガー (Elisabeth Isenegger) 氏は、「ブラックフライデーほど、循環型経済と相性の悪いものはないでしょう。数年前からフライタークはこの日に、良識のある消費に“Yes”を、買い物への熱狂に“No”を表明する積極的な活動を行っています。」と述べている。

また同社のウェブサイトでは「Don’t shop, just S.W.A.P.(買うより交換しよう)」をモットーに、「ブラックフライデーには、フライタークのオンラインストアはお休みし、オンラインユーザーの皆さんをグローバルなバッグ交換プラットフォーム S.W.A.P.へと誘います。今年は初めて顔と顔を合わせたバッグ交換会 S.W.A.P.を、世界の厳選されたフライタークストアにて金曜日開催します。」とこのキャンペーンについて表記している。また、「F-STOREへご招待S.W.A.P.フライデー2022」という実店舗でのキャンペーンも併せて実施しており、ブランドの顧客たちがその場で顔と顔を合わせ、直接バッグを手に取って製品を交換出来るというイベントへの招待も案内している。

同ブランドのブラックフライデーに反対するこうした活動は、2019年から継続的に行われているようだ。

フライタークのウェブサイトより

同様にイギリスのファッションブランド レイバーンはブラックフライデーセールの代わりに衣類修理ワークショップを開催した。

また、サーキュラーファッションプラットフォームであるレスポンシブル (Responsible) と提携をし、新しいシーズンの商品を顧客へ販売する代わりに、不要な商品を顧客から買い取るサービスを実施している。レスポンシブルチームは、顧客が持ち込んだアイテムをその場で即座に評価し、顧客は買取価格をレスポンシブルのストアクレジットまたは現金で受け取ることが出来る。実際に買い取られた商品は、レスポンシブルの店舗にて再販され、商品をより長く流通させるという流れだ。

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サスティナブルスニーカーブランドのカリウマ (Cariuma) のブラックフライデーの取り組みも斬新だ。彼らは価格を引き下げて消費を促進させる代わりに、靴が一足売れるごと植える木の数を1本から10本へ増やしている。

このようにブラックフライデーセールの慣習に反し、サステイナブルな消費行動を呼びかけるブランドがいくつも現れている一方で、在庫過剰はファストファッションブランドを中心に乱立している。

こうしたファストファッションの動きに対し、11月22日リセール ECプラットフォーム ヴェスティエール コレクティブ(Vestiaire Collective)は、アイテムに転売価値がないとの理由から、同社のプラットフォームからファストファッションを禁止すると発表したばかりだ。

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ヴェスティエール コレクティブのチーフインパクトオフィサーを務めるドゥニア・ウォン(Dounia Wone) 氏は、「ブラック フライデーは、活動家のメッセージをグローバル コミュニティやそれを超えて共有する絶好の機会です。ファストファッションは、私たちが信じているものとは正反対です」と述べる。 「ヴェスティエールでは、職人技と耐久性を大切にしており、業界はより高品質のアイテムを生産する必要があると考えています。例え再販であっても、ファストファッションには何の価値もありません。ファストファッションブランドをプラットフォームから禁止することで、量よりも質を購入するという考えを強化し、コミュニティへより良い価格で職人技に投資することを奨励しています。」とウォン氏は続けた。