世界最大のファッション・サステナビリティ・イベントであるグローバル・ファッション・サミット(Global Fashion Summit)が6月27日〜28日までコペンハーゲンで開催された。当イベントには、LVMHやPVHを含む大手コングロマリットからHilosやCirculoseのような革新的な新興企業、ガーナの反ファッション廃棄物擁護団体「オル財団」、ヨーロッパやアメリカの著名な政策立案者などが参加した。
今年度のパネルでフォーカスされたのは、「ファッション業界が未来に向けて備えるべきサステナビリティに関する規制について」だ。
現在、衣料品業界の排出量は、世界の総排出量のおよそ2%を占めており、今もなお増加の一途をたどっている。多くのブランドがサステナビリティへの取り組みに声を上げているにもかかわらず、毎年大量の新しい衣料品が生産され、森林伐採や自然破壊、水質汚染の原因が繰り返される。また、売れ残った商品のデッドストックは、最終的に発展途上国の埋立地へ送られているのが実情だ。しかし、ファッション業界の低コストでインパクトの大きいビジネスモデルによる人的被害は、目に見える形できちんと数値化されていない。
ガーナを拠点とする反ファッション廃棄物擁護団体「オル財団」のシニア・コミュニティ・エンゲージメント・マネージャーのサミー・オテング(Sammy Oteng)は、「ガーナでは、埋立地に捨てられた廃棄物が海岸に散乱している」と、聴衆に向けて訴えかけた。こうして埋立地に運ばれた廃棄物は、開放型の下水にまであふれ、洪水の原因となり、公衆衛生上の危機を引き起こす可能性がある。また埋立地は、マラリアを媒介する蚊の温床や、古着の山に雨水が浸み込むと、コレラが蔓延する原因にもなり、常に市民の公衆衛生を脅かしているのだ。
こうした現状は「絶対に容認できない」と、欧州のヴィルジニウス・シンケヴィチウス環境委員はグローバル・ファッション・サミットで述べ、「欧州の規制当局が行動を起こす」と付け加えた。
LVMHのイメージ・環境責任者であるアントワーヌ・アルノー(Antoine Arnault)は、業界のリーダーであるラグジュアリーブランドが協力して取り組んでいくことが重要だと述べ、ラグジュアリーに焦点を当てた新たなサステナビリティ協定の締結を呼びかけた。
またアルノーは、LVMHが競合他社に手を差し伸べているのは、正しい基準、正しいビジネスのやり方を見つけるためであることを語った。ラグジュアリーブランドは、ファストファッション大手のように毎年大量の衣料品を生産しているわけではないが、それでも広大なサプライチェーンと膨大なカーボンフットプリントを抱えている可能性は大いにあるだろう。
ラグジュアリーブランドは過去にも、「サステナビリティの実践が不十分で、サプライチェーン全体の透明性が欠如している」という批判に直面してきた。アルノーは、同社が4年前に発足した業界全体の環境変化を促進することを目的としたイニシアチブであるファッションパクトに「参加しない」という意思決定をしたことについても、反論を述べた。
「数年前、私たちが有名なファッション協定に署名しなかったことで、非常に批判されたことは知っています」「私たちの意見では、ファストファッションの担い手と関わることは、当時は正しいことではありませんでした。」
同社は今年、2022年10月から2023年10月の間にエネルギー消費量を10%削減し、エネルギー消費による温室効果ガス排出量を11%削減し、スコープ3排出量を15%削減するという目標を設定。また、2025年までにすべての原材料の「完全なトレーサビリティ」を約束している。
その他、LVMHが所有しているブランド、ステラ・マッカートニーついても言及し、「(同ブランドの)新素材への超イノベーティブなアプローチで、このペースを後押ししている」と述べた。「彼女はすべての解決策を持っています。私たちはただ、それをスケールアップさせ、小さなブランドだけでなく大きなメゾンでも使えるようにする必要があるのです。」