ニューヨーク発のスキンケアコスメブランドであるグロシエ(Glossier)が新たなチャプターに向け改革を行っている。
24名の従業員を解雇したグロシエ
グロシエは、8月2日(現地時間)に、24名の従業員に解雇通知を出した。また、米国とカナダの店舗で大手小売業者とのオムニチャネルモデルへの移行に向けて、今年の下半期にはリーダーシップ レベルを含め、約20人の新しい従業員を追加予定だ。
グロシエといえばD2C 美容ブランド成功事例として知られおり、その人気は1万人の人々がブランドのアイブローを順番待ちするほど。ニューヨークのソーホーにあるフラッグシップ店にはいつも数時間待ちの長蛇の列があった。
元々は「VOGUE」誌のアシスタントとして働いていたグロシエ創業者兼CEOはエミリー・ウェス。エミリーは2010年に、個人美容ブログの「Into The Gloss」を開設する。
そのブログの中でファッションや美容業界の著名人に愛用コスメやメイクのコツを訊ねるインタビューコーナーなどが読者から人気を集め、あっという間に有名サイトとして成長を遂げたのだ。
そんな中で彼女は「リアルガールのリアルライフのためのコスメを作りたい」と思い始めたことから、2014年にグロシエを立ち上げ、グロシエが作り出す世界観はミレニアル世代を中心に支持され、ピンクのナチュラルで艶やかなメイクはバズを産んだ。また昨年2021年7月にはリテールネットワークを構築する為、8,000万ドルのシリーズEを含む2 億6,600万ドルの資金を調達し、会社の評価を18億ドルにした。
そんな大ブームを巻き起こし、目覚ましい成長を遂げたスタートアップブランドグロシエだったが、ここ最近ではその人気に陰りが見え始めている。
D2Cビジネスに潜むグロシエの人気衰退の要因は
グロシエの人気衰退の理由はいくつもの要因があげられる。
一つは、前従業員によるブランドの労働環境の問題の告発だ。
2020年8月にグロシエの前従業員らがクリエイターが文章を投稿できるメディアプラットフォームMediumとインスタグラムにて、グロシエの社内で起きている人種差別や悪質な労働環境について告発した。これによって翌年2021年のグロシエの米国での売上は前年比で26%減少する結果を招いた。
続く1月26日には、「ブランドを未来へ続けるために」とグロシエは80人以上の従業員を一時解雇。
また、グロシエが直面した問題は、設立当初の2014年にはまだ目新しかったD2Cビジネスモデルによるものだった。
前述した通り、創業者兼CEOはエミリー・ウェスは、2010年に始めた個人ブログ「Into The Gloss」上で集めた人気によって、ファンベースコミュニティで売り上げを上げてきた。
しかしグロシエのメインターゲットであったミレニアル世代の消費者は歳を重ねるにつれ、もっと高級なブランドへシフトしていく。そんな中で多くのクリーンビューティーブランドが現れ始め、グロシエが当初掲げていた「ありのままの自分を受け入れ、潤いのある肌を促進する」というコアメッセージは当たり前のコンセプトとなっていったのだ。
ブランディングを変化させることなく、一つのジェネレーションだけをメインターゲットにし続けてきたグロシエは、こうした理由から徐々に勢いを無くしていった。
大手ビューティーストア セフォラと提携し、オムニチャンネル戦略へ
現在のグロシエがZ世代に受け入れられるのは難しい。
なぜなら彼らはグロシエが打ち出す新しい製品よりも、Ceraveなどの昔から馴染みのあるドラッグストアのスキンケアを好んで使用する傾向があると言われている。またThe Ordinary、Youth to the People、Kinship などの他の競合ブランドがすでにZ世代へ人気を博しているからだ。
こうした流れを受けて、同社はついに卸売り販売を決意。
セフォラとの契約は今年初めにエグゼクティブ チェアウーマンに就任した創設者のエミリー ワイスによって考案され、ブランドが2014年にD2Cとして開始して以来、初めての卸売販売のパートナーシップを組む。
また、セフォラとのパートナーシップに加え、製品のロードマップの向上、グロシエのウェブサイトの再プラットフォーム化などオムニチャネル戦略に対して急速に進めているようだ。グロシエのソーホー旗艦店も2023 年初めに再オープンを予定している。
ブランドは「私たちのブランドは成長しました。市場は進化し、私たちの消費者は、店内、オンライン、小売パートナー、そして世界中のお客様がいる場所でグロシエの商品を手に取れることを望んでいます。」と話した。
今後のグロシエの復活戦略に注目したい。