Hermès VS NFT Metabirkin | NFTメタバーキンの訴訟がブランドとクリエーターに与える大きな影響とは

NFT クリエイターとブランド間の法的境界線は?

これまでに2回に渡りOSFで取り上げてきた、エルメスの商標権とNFTアーティスト、メイソン・ロスチャイルド氏のNFTのメタバーキンを巡る争い。

このブランドとNFTアーティストの訴訟問題によって、これまで法的なルールを設けていなかったWeb3.0 時代に大きな影響を与えるかもしれない。

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連邦裁判所に提出された書類では、この件を通してNFTやその他のデジタルアセットに関するいつくもの大きな法的疑問が上がっている。

  • デジタル商品は本物の製品を侵害しているのか?
  • デジタルアートと模造品の違いは何か?
  • NFTがjpegファイルのアートを認証するためにブロックチェーン上に置かれているコードだとした場合、NFTと jpegは同じものとして考えられるのか?それとも別物か。

疑問視されているのは上記の項目だ。

エルメスは今年の初めに、デジタルクリエイターのメイソン・ロスチャイルド氏が、エルメスのバーキンと同じ形のバックを「メタバーキン」と名付け、NFTのマーケットプライスOpen Seaで売り出したことに対して、彼のメタバーキンがブランドの商標を侵害し、バーキンの持つ品位を弱めたと主張し、訴訟を起こした。

この訴訟を巡り、これは単なる商標権を巡る争いではなく、業界は今後NFTをどのように法的な観点から考えるべきかについて明確にされつつある。

法律事務所ノートン・ローズ・フルブライトの米国IPブランド責任者を務めるFelicia Boyd 氏によると、裁判官は「NFTは画像を示すコードであるが、芸術として表現する資格を得ることが出来る。しかし同じアートワークでも、大量生産された再版などの商品は同様の保護は受けられない。」という事を明らかにしたのだ。

これに対しロスチャイルド氏は、ツイッター上でその裁判の結果に対し、喜びの声明を出した。

 

 

解決すべき法的問題

しかし、今後もデジタル資産が法的にどのように扱われるべきかを明確にする為に、解決すべき難関がいくつかある。

現在、裁判所はメタバーキンを静止画像という方向にフォーカスして考えているが、権利を侵害しているとされる物が、オンラインゲームやその他仮想環境で使用するために作られたデジタルウェアラブルなものである場合はどうなるだろう。

法律事務所 Crowell & Moring のパートナーである Chakrabarti 氏は、単なるハンドバッグが描かれた絵と、路上で売られている模造品の違いを紐付けて、「メタバースの世界でも、私たちの現実世界での規制と同じように考えられるべきだ」と主張した。

最終的な判決で、この静止画とデジタルウェアラブルが法的に異なるケースとして扱われるべきかどうかはまだ不明だが、このメタバーキンを巡る訴訟では、裁判所はメタバーキンとデジタル ウェアラブルには違いがあることを認めた。

しかしRoblox (ロブロックス) やThe Sandbox (サンドボックス) 上のオンラインスペースで、使用するアイテムをデジタル クリエーターが作成および販売している場合には、こういった議論の余地はないとされる。と同時に、これからより多くのファッションブランドが Web3 市場に参入するにつれて、ブランド側は他のブランドやアーティストが自社のデザインや商標に基づいた製品を作成することを良く思わないだろう。

また、今回のこの訴訟でエルメスが大きく主張しているのは、ロスチャイルド氏がNFTコレクションを「メタバーキン」という名前で売り出したことだ。裁判所は、それがエルメスとの関連性を示唆する誤解を招くものではないかどうかを判断する必要がある。

それに対し、ロスチャイルド氏は「私はあくまでも自分自身をクリエイターとして知ってほしいという思いがあるだけで、エルメスとして売り出そうとはしていない。」と主張した。

しかし判事は、「メタバーキンのインスタグラムのページを見て、ユーザーがメタバーキンがエルメスと何らかの提携があると誤解し、ニューヨーク・ポストやエルなどのメディアがメタバーキンをエルメスとのパートナーシップとして誤ったレポートをした」ということを指摘した。

これに対してロスチャイルド氏は、芸術家のアンディ・ウォーホルの有名作品Campbell’s Soup Cans (キャンベルのスープ缶) を例に上げ、「なぜ彼はキャンベルのスープ缶を描いたのに、商標権を侵害したとされていないのか」と反論。

メタバーキンの訴訟は、ロスチャイルド氏とエルメスが和解しないと仮定し進められ、「自社の製品に基づいて NFT を作成するブランドとクリエイター間の法的境界線をどこに引くか」について、今後もいくつかの答えを出していくだろう。