AIと心理テストから顧客に似合う服を提案するファッションアグリゲーターサイト
コロナウイルスの流行によって世界的なパンデミックはファッション業界全体を荒廃させたが、ファッションEコマースの存在は唯一の明るい光だったかもしれない。
EコマースグロースエージェンシーであるCommon Thread Collectiveの2021年のファッション業界レポートによると、2020年のファッションEコマースは26.5%増加し、アパレルはその成長の29.6%で最大のシェアを獲得した。オンラインファッションの予想される年平均成長率は7.18%で、2025年までに業界は1.0兆ドルを超えるだろうと予測されている。
このトレンドに傾倒して、Psykhe(サイキ)は1980年代に脚光を浴びた性格診断テスト「ビッグ・ファイブ」の結果に基づいて、キュレーターされた商品をユーザーに提案、提供することが出来るファッションアグリゲーターサイトとして作成された。
これまでの多くのファッションEコマースサイトでは、顧客がサイト上で閲覧した商品や実際の購入履歴からAIが学習して、類似したデザインやテイストの商品がおすすめに出てくると言うのが一般的なものだったが、このサイキではそういったレコメンデーション機能の常識から外れ、消費者の心理とAIの両側面から、その人が求めるファッションを提案してくれると言うコンセプトになっているのだ。
サイトを訪れた顧客は、まず最初に25問の性格にまつわる質問に答えていく。
その性格診断テスト結果で消費者の性格の傾向を見つけ出し、その心理的データに基づいたファッションアイテムが画面上にオススメとして現れるというものだ。
この革新的なプラットフォームサイキは2019年9月にAnabel Maldonado(アナベル・マルドナド) 氏によって設立された。
同氏はファッション業界でキャリアを積む以前、臨床心理士になることを目指し心理学と神経科学を学んでいたのだが、そこで興味があったファッションを心理学に結びつけて考えたのだった。
マルドナド氏は、「心理学のバックグラウンドとファッション業界での経験の両方を持っていることの利点は、美的好みを分析的に見ることができることです。これは、これまで実際には行われていなかったことです。したがって、芸術を科学に変えることで、実際にデータを理解し、意味のある技術を作成できるようになるんです。」と述べる。
性格診断テスト「BIG 5」の結果に基づいたレコメンデーション
筆者もこのサイキのBig5のテストを実際に体験してみた。
25個の質問に回答し終わると、自分のパーソナリティコードというのが発行され、さらに自分のパーソナリティーを「オープンマインド/寛容性」「誠実性」「社交性」 「協調性」「神経質」という5つの項目で計測された結果が出された。
筆者の結果は以下の通り。
- 「オープンマインド/寛容性」66% 平均より高い
- 「誠実性」82% 高い
- 「社交性」62%平均より高い
- 「協調性」66% 平均より高い
- 「神経質」54%平均的
と言う診断結果で、「誠実性」が1番高い数字となった。
そして実際にこのパーソナリティーコードに基づいた筆者の好むテイストにマッチしたブランドやファッションアイテムが画面上にずらっと並んだ。
また、リスト化されたおすすめ商品の中で、これは「自分の好みと違う」と言うものはリストから削除することが可能。
そこからまたAIが顧客が好まないテイストやデザインをアップデートしていき、さらに正確なパーソナライゼーションがサイト上で行われると言うシステムになっている。
実際にサイキでの顧客体験を通して、こういったサイコロジーに基づく分析でファッションアイテムを選んでいくと言うのは、なかなか面白い体験だった。
人は嬉しい、楽しいという心のムードや、デートやパーティーというオケージョン毎に来たい服のニーズが変化するものだ。
ファッションは自分を魅せる1つのアイデンティティとして、人々の心理に密接にリンクしているものだろう。
マルドナド氏によると、このサイキでは3つの顧客層が現れていると言う。
一つ目がボッテガ・ヴェネタ(Bottega Veneta)やロエベ(Loewe)などのブランドに引き寄せられるファッショニスタ、そしてロロ・ピアーナ(Loro Piana)などを買うコンサバ系、ストリートウェアを求めるZ世代の顧客だ。
また、同社は最小限のマーケティングで顧客からの良いエンゲージメント率を得ており、約83%の人が性格診断テストを見て、テストを受け、約90%の顧客がテストを完了していることを指摘する。
Psykhe(サイキ)が目指す今後の展望
今後の展望についてマルドナドは氏は、このサイキのアプローチを使用して感情的な購入決定に関する大きな質問に取り組みたいと語っている。
「顧客に対し、なぜ特定のブランドが好きなのですか?なぜ特定の色が好きなのですか? と言う問いをすることで、ファッションだけではなく、インテリアデザインのアイテム、旅行先、美的感覚のあるもの何でもこのシステムを行うことが出来ます。」とマルドナド氏は主張する。
同社はまた、BtoBアプリケーションとしての拡張も視野に入れる。
「私たちが本当にやりたいのは、サイキがテクノロジーカンパニーであり、心理学と機械学習を使用する最初のレコメンデーションエンジンであることを示す事です。そのため、ほぼ全ての製品やサービスに当社のテクノロジーを使用していきたい。」とマルドナド氏は結論付けた。