10月15日(現地時間)、約6年ぶりにヴィクトリアズ シークレット ファッションショー(Victoria’s Secret Fashion Show)がニューヨークで華々しく開催された。
ヴィクトリアズ シークレット ファッションショーといえば、Z世代やミレニアル世代にとって、青春時代を思い起こさせる象徴的なイベントであることは間違いないだろう。特に、2013年にテイラー・スウィフト(Taylor Swift)がヴィクトリアズ シークレットのモデルたちと共にステージに立ち、その美しさと圧倒的な存在感で世界中を魅了した瞬間は、いまだ鮮明な記憶として残っている。
スキャンダルとキャンセル文化がもたらしたショー中止の背景
しかし同ブランドは、2018年のショーで視聴率が大幅に低迷し、その後、ショーの開催を休止する決断を下した。その背景には、元CMOのエド・ラゼック(Ed Razek)がヴォーグ誌で「トランスジェンダーモデルはキャスティングしない」と発言したことが大きな波紋を呼び、さらに元LブランズCEOのレスリー・ウェクスナー(Les Wexner)と人身売買犯であるジェフリー・エプスタイン(Jeffrey Epstein)との関係が発覚したことによるスキャンダルも追い打ちをかけた。これらの出来事が引き金となり、ヴィクトリアズ シークレットは一種の「キャンセル文化」に巻き込まれ、ショーの中止に至った。
再起をかけたリブランディング
こうした困難な状況とパンデミックの影響を受け、同ブランドは過去5年間で約350店舗を閉鎖し、かつての栄光に陰りが見え始めていた。しかし、ヴィクトリアズ シークレットは再起を目指し、リブランディングを実施。これまで高身長で細身のモデルだけを起用したエンジェルズから、より包括的なコミュニティを目指し、様々な体型や年齢、人種のモデルをフィーチャーするようになった。その甲斐あって、2023年には、62億ドルの売上を記録した。
BLACKPINKのリサから幕を開けたショー
そんな新生ヴィクトリアズ シークレットが、一体どんなファッションショーを見せてくれるのだろうと、多くのファンがその日を心待ちにしていた。
ショーは、バイクに乗り登場したBLACKPINKのリサ(LISA)が披露する「ロックスター」のパフォーマンスから始まった。リサが露出度の高いダンサーとともに、迫力のある歌とダンスを見せると、会場は熱狂に包まれた。
またリサはショーの中盤に再登場し、レーシーなランジェリー姿で、最新曲の「Moonlit Floor」を歌い上げた。また、新歌姫として注目されている南アフリカ出身のタイラ(Tyla)は、「PUSH 2 START」と 「Water」の2曲を披露。二人とも息を呑むほどの美貌と完璧なパフォーマンスで会場を盛り上げた。
オープニングを飾ったのはジジ・ハディッド
オープニングには、ジジ・ハディッド(Gigi Hadid)が巨大なピンクのウィングを背負って登場。倒れそうな程大きなウィングを纏い、堂々と闊歩する姿に大きな歓声が上がった。
さらに、ランウェイには往年のヴィクトリアズ シークレットのエンジェルたちが華やかにカムバック。アドリアナ・リマ(Adriana Lima)、グレース・エリザベス(Grace Elizabeth)、テイラー・ヒル(Taylor Hill)、キャンディス・スワンポール(Candice Swanepoel)、タイラ・バンクス(Tyra Banks)、イマン・ハマム(Imaan Hammam)、ジョアン・スモールズ(Joan Smalls)といった名だたるモデルたちが揃い、圧倒的な存在感を放った。
出産を経験し、母親となったモデルも多いが、彼女たちが披露した美しく引き締まった完璧なボディは、同世代の女性たちに大きなインスピレーションを与え、憧れの眼差しが注がれたに違いない。
特筆すべきは、ヴィクトリアズ シークレットのファッションショーに初参加したケイト・モス(Kate Moss)だ。彼女は黒いレースのランジェリーに身を包み、ベテランスーパーモデルとしてのオーラを存分に発揮し、観客を魅了した。
さらに、56歳にしてランウェイを華麗に歩いた元フランス第一夫人のカーラ・ブルーニ(Carla Bruni)も注目だ。年齢を感じさせないエレガンスと気品を備えた彼女は、女性らしさが時を超えて輝くことを見事に証明した。
フィナーレを締めくった伝説の歌手シェール
この夜、ランウェイには25か国以上の異なる背景を持つ、総勢52名のモデルたちが集結。
フィナーレを飾ったのは、まさに伝説的な存在、シェール(Cher)だった。シェールは、スパンコールが施された華やかなボンテージ風コルセットとブラックスーツを見事に着こなし、78歳とは思えない圧倒的なステージを披露。「Strong Enough」と「Believe」を力強く歌い上げ、フィナーレにふさわしい、堂々たるクライマックスを作り上げた。
エンジェルたちが体現する多様性と新たな女性像
5年間の休止を経て復活したこのヴィクトリアズ シークレット ファッションショーは、単なる美しさや豪華さを超え、力強さと自信に満ちた新しい女性像を体現していた。もちろん、ショーに対する感想は人それぞれであり、かつてのショーと比較して批判的な声も聞かれるかもしれない。
しかし、この夜のエンジェルたちは、ダイバーシティと強さを象徴する存在として、間違いなく、新たな時代の女性像へと私たちを導いてくれていた気がする。
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