韓国は美容産業において、世界の中でも最先端を行く国だが、韓国美容の人気はアジア諸国にとどまらず、北米市場でも大きなブームを起こしている。
『K-Pop』『K -Drama』というワードと同様に、英語圏では、韓国発のスキンケアやコスメを含む美容製品全般のことを『K-Beauty』と総称する。現在、この『K-Bueauty』は、特にZ世代やミレニアル世代を含む若い層を中心に、北米拠点のインフルエンサーやー般の人々を虜にし、近年では、より多くの人々が韓国流のスキンケアに高い関心を寄せている。
ストレーツ・リサーチ(Straits Research)の調査レポートによると、『K-Beauty』製品の世界市場規模は、2021年に83億ドルの売上を保持。また、2030年にはその市場規模が183億2,000万ドルに達し、2022-2030年の8年間で年間平均成長率が9.2%になるだろうと見込まれている。
そんな韓国スキンケアについて話すとき、外せないキーワードとなるのが「グラススキン(Glass Skin)」だ。「グラススキン」とは、K-Popアイドルのような、ガラスのように光輝く、傷一つないつや肌のことを指す。現在『K-Beauty』に夢中になっている北米消費者の多くは、この「グラススキン」を手に入れることに憧れを持っており、こうした肌の理想は、新しいスキンケア製品のトレンドを作っている。
創業5年で売上1億ドルを達成するピーチ& リリー
中でも、韓国のスキンケアに特化した「ピーチ& リリー(Peach & Lily)」は、北米での人気が高まり、過去5年間で急成長しているブランドだ。
同ブランドは、11月にロサンゼルスとニューヨークで、「パワー・オブ・&」キャンペーンを企画し、ピーチ・パーティー・バスと呼ばれるツアーバスによる体験型ツアーを実施した。来場者はルーレットを回し賞品を獲得したり、肌に関する個別の相談をピーチ&リリーのエデュケーターから受けるたりすることが出来るというものだった。
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こうしたソーシャルメディア、OOH、ポップアップストアなど様々なチャネルを通じてマーケティング戦略を仕掛けていることが功を期して、同ブランドの2023年のピーチ& リリーの年間純売上高は、1億ドル(約149億円)に達すると報告されている。
韓国美容ブームの背後には政府の支援も
一方で、韓国政府も精力的にこの流れをサポートしている。以前より、ドクタージャルト(Dr.Jart+)や、イニスフリー(Innisfree)のような韓国の美容ブランドが、セフォラ(Sephora)のような米国の大手スキンケア小売店に進出してきた。
これは、韓国の美容ブランドに対する米国での需要の高まりと、化粧品輸出を優先する韓国政府のイニシアチブによるものであり、輸出専用企業は税金を払う必要がなく、国際的な訴訟費用と戦う輸出業者を支援するための政府基金がいくつかあるという。ちなみに、2022年度、韓国から北米へ輸出された化粧品およびスキンケア製品の輸出額は約66.9億ドルに達している。
K-Beautyの魅力: 自然な成分と効果的なスキンケア
一方で、『K-Beauty』が世界中で支持される理由には、その成分や効果の高さにもある。長い歴史の中で受け継がれてきた韓国の美容製品は、自然で刺激の少ない成分を使用しており、その影響でかなりマイルドな組成になっている。スキンケアに重点を置きつつも、リーズナブルな価格設定がなされている為、多くの若者にとって手軽に手に入れられるというのも特徴だ。
韓国スキンケアを専門に取り扱うEコマースサイト「ソング・オブ・スキン(Song of Skin)」のオーナーであるケリー・リウ(Kelley Liu)は、「韓国の美容製品は、アメリカ製のものよりもはるかに肌に優しく作られています。」と語る。
「例えば、今最も注目されている製品のひとつに、アヌア(ANUA)というブランドの “70% ハートリーフ スムーシング トナー”があります。この化粧水は韓国、日本、アメリカでNo.1の人気を誇っており、製品の70%にハートリーフエキスが配合されています。このように多くの韓国スキンケア製品は、美肌効果の見込まれる高品質な成分に重点を置いています。」と説明した。
そもそもリウが韓国スキンケアを専門に取り扱う「ソング・オブ・スキン」を始めたのには、自身の実体験に基づいている。リウは、母と訪れた韓国旅行で、初めて韓国のスキンケア製品に出会う。当時、韓国で販売されていた製品は北米進出しておらず、入手困難なものばかりだった。ニキビ肌に悩んでいたリウは、あらゆるアメリカ製品を試したが、一向に良くならず肌が悪化し、炎症を起こしてしまったこともあったが、スキンケアを韓国製のものに全て切り替えて以来、彼女の肌は見違えるように良くなったのだとという。
こうした自身の経験を機に立ち上げた、韓国スキンケア専門のオンラインショップ「ソング・オブ・スキン」は、現在抱える顧客層の90%が、北米在住の18歳から45歳までの女性だ。顧客のほとんどがアジア人であると思われがちだが、実際には顧客の人種を問わず、様々な肌タイプの人々が利用しているという。
「美容業界を席巻する韓国美容では、より清潔で、肌に優しく、効果的な製品への需要がますます高まっています。最初は(北米の顧客へ向けて)K-Beautyとは何か、なぜスキンケアに各ステップが不可欠なのかを説明するのが難しかったのですが、TikTokを活用し各カテゴリーを動画で説明していくうちに、顧客のK-Beautyに対する知識が深まっていきました。また、TikTokの動画視聴者が増えたことで、動画内で紹介する製品の購入に繋がっています。」と、リウは述べる。
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また現在、同サイトで人気のある韓国スキンケアブランドは、「アヌア(ANUA)」、「ビューティー・オブ・ジョンソン(Beauty Of Joseon)」、「ティルティル(TIRTIR)」、「トリデン(Torriden)」、「マニョ(Manyo)」だという。なお、最も人気のあるカテゴリーは、「トナーパッド」と「美容液」だ。
韓国の化粧品業界は、健康、保湿、ブライトニング効果が重視されており、特に原材料において、常に新しい開発を取り入れて成長している。なお、製造に使われる珍しい成分には、カタツムリのスライム、ハチの毒、ヒトデのエキス、豚のコラーゲンなどがある。
「K-Beautyは単なるトレンドではなく、美容の未来になるでしょう。韓国の美容はパワーハウスであり、10ステップのルーティン、ハートリーフ、米エキス、カタツムリエキスから作られた製品など、その実力は折り紙付きなのです。」とリウは付け加えた。