H&Mグループ、排出量削減の進捗率ランキングでトップに | 依然として残る課題も多々

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この記事のKey Points

    • H&Mが排出量削減の進捗率でトップに

– H&Mグループが環境保護団体Stand.earthの「化石燃料を使用しないファッション」ランキングでトップブランドに選ばれた。報告書では、排出量削減と再生可能エネルギーへの移行の進捗が評価されている。

  • 評価対象ブランドと結果

– 調査対象には、H&M、プーマ、ナイキ、リーバイ・ストラウス、アディダス、ギャップ、VFコープ、インディテックス、ルルレモン、ファーストリテイリング、シーインの11ブランドが含まれる。H&Mが59点でトップ、プーマが51点で2位、ナイキが46.5点で3位。一方、シーインは2.5点で最下位。

  • 業界全体の課題と批判

– Stand.earthは、ファッション業界全体の脱炭素化の進捗に対して批判的であり、多くのブランドが十分な財政的投資をしていないと指摘。特にシーインは労働環境や環境問題へのコミットメントの低さが問題視されている。

H&Mが排出量削減の進捗率でトップに

スウェーデンのH&Mグループは、環境保護団体のStand.earthが5月に発表した「化石燃料を使用しないファッション」ランキングでトップ・ブランドに選ばれたことを発表した。

この「脱化石燃料ファッション・スコアカード」2024年版報告書は、各ブランドが排出量削減と再生可能エネルギーへの移行を進めているかを評価するものである。

この調査では、最も影響力のある11のグローバル・ファッション・ブランドが対象に。H&Mのほか、プーマ(Puma)、ナイキ(Nike)、リーバイ・ストラウス&カンパニー(Levi Strauss & Co)、アディダス(Adidas)、ギャップ(Gap)、VFコープ(VF Corp)、インディテックス(Indites)、ルルレモン(Lululemon)、ファーストリテイリング(Fast Retailing)、シーイン(Shein)が含まれた。

報告書では、具体的な進捗状況、特に排出量削減、段階的な石炭使用廃止、再生可能エネルギーへの移行の進捗状況を詳細に分析している。各ブランドの実績は、2030年までに公平な化石燃料の段階的廃止を達成するための道筋に照らして測定され、各ブランドのサプライチェーンにあるメーカーが公表しているデータを活用し、数値化された。

以下の表が、Stand.earthが11社を対象に、コミットメント、透明性、2030年に向けた進捗状況、行動/提言などの要素についてを100点満点で採点したものだ。

Stand.earth
引用元:Stand.earth

このグループの中で、H&Mグループは合計59点を獲得し、トップにランクインした。2位のプーマは51点、ナイキは46.5点、リーバイ・ストラウスは37.5点、アディダスは33.5点という結果に。また、H&M、プーマ、リーバイ・ストラウスの3社は、2030年までに2018年比で少なくとも55%の製造業排出量削減を目標に掲げている。

この結果を受けて、H&Mグループは、「サプライチェーンにおける排出量と再生可能電力の目標をリードし、最も具体的な財政支援、サプライヤーの関与、効果的なサプライチェーンの提唱を提供しているため、最高得点を獲得した」とコメント。

同グループの気候・自然部門責任者であるデイヴィッド・ダール(David Dahl)は、「私たちは絶対排出量を削減し、2040年までにネットゼロを達成することを約束します。Stand.earthの報告書の結果は、私たちが正しい方向に向かっていることを示しています。しかし、企業として、また業界として、やるべきことはまだたくさんあります。力を合わせることで、私たちはより速いスピードで、より深いインパクトを与えることができるのです」と述べた。

ランキング下位の6社は

またこのランキング下位6~10は、ギャップ、VFコープ、インディテックス、ルルレモン、ファーストリテイリングという順でスコアは14〜20.5点だ。

なお、2.5点で最下位だったのは、中国の超格安リテーラーのシーインである。

同社は今年IPOを計画していると報じられているが、先日スイスの擁護団体、パブリック アイ(Public Eye)が実施した最新の調査で、同社が工場の従業員らへ過酷な長時間労働を強いられていることを指摘されたばかり。同社の劣悪な労働環境や、環境問題へのコミットメントの低さは、以前より業界内でも批判されているが、この調査でさらにそれがさらに浮き彫りになった。

なおStand.earthの報告書では、「シーインの絶対排出量は、20221年までのわずか1年間で50%近く増加し(604万トンから917万トンCO2eへ)、パラグアイ国の年間排出量を上回った」と記述された。

業界全体の課題と批判

またStand.earthは、「2023年版スコアカードでは、前進の兆しは見られたものの、再生可能エネルギーへの移行を進めるために企業が取っている段階的なステップの詳細については、全く、あるいはほとんど説明されておらず、大多数のブランドによる有意義な財政的投資は絶望的に不足していることがわかりました」と、業界全体について指摘した。

Stand.earthのシニア・コーポレート・クライメート・キャンペーナーであり、本報告書の主執筆者であるレイチェル・キッチン(Rachel Kitchin)は次のように述べる。

「良いニュースは、進歩が起きているということです。悪いニュースは、その進歩が超高速ファッションによる危険な汚染と、グリーンウォッシュの脅威の増大によって損なわれていることであります。簡単に言えば、ほとんどのブランドはまだ脱炭素化の軌道に乗っておらず、多くは間違った方向に向かっています。ファッション業界の大手企業は、化石燃料を速やかに廃止し、具体的で再生可能なエネルギーソリューションに投資することで、リーダーシップを発揮しなければなりません。」

「今現在、メーカーはファッションによる気候汚染の 「落とし前 」をつけ、ブランドは安全な場所から利益を得ています。ブランドは、自然エネルギーへの移行に資金を提供し、それを可能にすることで、自らの排出量に責任を負わない一方で、より多くのものを作り続けています。ブランドは、サプライチェーンにおける再生可能エネルギーへの移行に資金を提供することで、彼らが要求する変化の代償を支払う必要があるのです。」

また、H&Mは、屋上へのソーラーパネル設置など、脱炭素化への取り組みに対してサプライヤーに補助金を提供している唯一のブランドである。しかし、同社は化石燃料からの脱却の効果を十分に明らかにしていない。

同団体は、大手衣料品メーカー11社のうち、サプライチェーン全体の絶対排出量を削減するためのパズルの重要なピースである、衣料品と靴の生産量(トン)をすべて開示している企業はなかったと発表した。

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