米高級百貨店サックス(Saks)の親会社が、ニーマン・マーカスを26億5000万ドルで買収

Saks Fifth Avenue

7月3日(現地時間)、米国の高級百貨店、サックス(Saks)の親会社HBCが、競合他社のニーマン・マーカス・グループ(Neiman Marcus Group)を、26億5000万ドル(約4200億円)で買収することが発表された。

サックスとハドソンズ・ベイ(Hudson’s Bay)を所有する親会社のHBCは、同じくニューヨークの老舗高級百貨店、バーグドルフ・グッドマン(Bergdorf Goodman)の親会社であるニーマン・マーカス(Neiman Marcus)を買収することで合意。また、アマゾン(Amazon)が統合後の新会社に資本参加し、テクノロジーとロジスティクスを提供する予定だ。技術パートナーであるセールスフォースも、新会社の少数株主となる。

現在サックス・フィフス・アベニュー(Saks Fifth Avenue)は北米に39店舗を構え、さらにサックス・オフ5TH(Saks OFF 5TH)と呼ばれるオフプライスの店舗も多数ある。一方で、ニーマン・マーカスは36店舗とバーグドルフ・グッドマン2店舗を展開している。新組織はサックス・グローバル(Saks Global)と名付けられ、現在サックスのEコマース部門責任者であるマーク・メトリック(Marc Metrick)が、経営の指揮を執っていく。

サックス・グローバルは、サックス・フィフス・アベニュー、サックス・オフ5TH・ブランド、ニーマン・マーカスとバーグドルフ・グッドマン、HBCの不動産資産で構成される。これらを一つにまとまることで、オンライン・マーケットプレイスでのラグジュアリー品販売から、ファッションやアクセサリーブランドの直営店オープンまで多角的な戦略を展開し、ラグジュアリー界の新たなパワーハウスを目指していくというものだ。

HBCのCEOであるリチャード・ベイカー(Richard Baker)は声明の中で、「この取引は業界内で長年待ち望まれてきたものです。現在は、ラグジュアリーリテールにとって非常にエキサイティングな時期であり、技術の進歩が顧客体験を再定義する新たな機会を創出しています」とコメント。また、オンラインおよび店舗でのパーソナライズされたショッピング体験を創出するために、人工知能を活用する計画を強調した。

高級百貨店業界の変遷と新たな潮流

この数年で、高級百貨店は、大きな過渡期を迎えている。パンデミック明けは、多くの買い物客が再び実店舗に足を運ぶようになり、ラグジュアリー品の売り上げも好調な回復を見せていた。しかし最近では、そうした動向が落ち着きを見せ、多くの顧客がオンラインへと移行している。

それに伴い各百貨店グループは、リアルとオンラインをよりシームレスに融合させたマーケティングや顧客体験に重きを置くようになった。例えば、ノードストロームは、今年4月末に独自のオンライン・マーケットプレイスを開設し、さらに魅力的なブランドのキュレーションや、Eコーマスと実店舗の連帯を実施。またブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)を所有するメイシーズ(Macy’s)は、現在大幅に実店舗を閉鎖し、本来の親しみやすい百貨店のイメージから、より高級志向へ移行しようとしている。

また、近年ラグジュアリー業界では、大手コングロマリットによる企業買収が加速。昨年は、コーチ(Coach)やケイト・スペード・ニューヨーク(kate Spade New York)を傘下にもつタペストリー社(Tapestry, Inc)が、マイケル・コース(Michael Kors)、ヴェルサーチェ(Versace)、ジミー・チュウ(Jimmy Choo)などのファッション・ブランドを所有するカプリ・ホールディングス(Capri Holdings)を買収した。

一方で連邦規制当局は、こうした業界のトップランナー同士の大型取引を阻止するために法的措置をとっており、今回のHBCとニーマン・マーカスの合併も厳しい監視にさらされる可能性がある。