米高級百貨店のサックス(Saks)、サンフランシスコ店への来店を予約オンリーに移行

Saks Fifth Avenue

米高級百貨店のサックス・フィフス・アベニュー(Saks Fifth Avenue)は、富裕層の顧客の期待に合わせて、サンフランシスコのユニオンスクエア店を大胆に改革する。

これまで百貨店と言えば、顧客が好きな営業時間に来店し、自由に店内を見て回れたが、8月28日からはその風潮を廃止し、事前予約の顧客のみが店内にアクセス出来る様になる。この新たな試みによって、同社はスタッフが顧客の好みに応え、より洗練されたサービスの提供を目指す。

実はこの制度は、真新しいものではない。サックス・フィフス・アベニューのナパ・バレー(Napa Valley)店やパロアルト(Palo Alto)店を含む一部店舗は、「ザ・フィフス・アベニュー・クラブ(THE FIFTH AVENUE CLUB)と称され、すでに事前の予約来店制度が採用されている。

一方で、これまで同店での自由な買い物に慣れ親しんできた顧客にとっては、事前予約がないと来店不可というのは、すぐに受け入れられるものではないだろう。

しかし同社は、攻めの姿勢を見せ続ける。今月初めには、サックス(Saks)の親会社HBCが、競合他社のニーマン・マーカス・グループ(Neiman Marcus Group)を、26億5000万ドル(約4200億円)で買収することを発表した。

この買収により、同社は複数の事業を連携させ、オンライン・マーケットプレイスでのラグジュアリー品販売から、ファッションやアクセサリーブランドの直営店オープンまで多角的な戦略を展開することで、ラグジュアリー界の新たなパワーハウスを目指す。

パンデミックが明けた後、実店舗への来客数は回復し、それに伴いラグジュアリー品の売り上げも好調な回復を見せていた。しかし最近では、そうした動向が落ち着きを見せ、多くの顧客がオンライン・ショッピングへと移行している現状がある。

このような購買の変化から各百貨店グループは、リアルとオンラインをよりシームレスに融合させたマーケティングや顧客体験に重きを置くようになった。例えば、ノードストロームは、今年4月末に独自のオンライン・マーケットプレイスを開設し、さらに魅力的なブランドのキュレーションや、Eコーマスと実店舗の連帯を実施。またブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)を所有するメイシーズ(Macy’s)は、現在大幅に実店舗を閉鎖し、本来の親しみやすい百貨店のイメージから、より高級志向へ移行しようとしている。

こうした動向を踏まえると、サックス・フィフス・アベニューが徐々に導入を増やしている、より富裕層にフォーカスしたサービスへの移行は、今のタイミングが最も理にかなっているのかもしれない。