シャネル(Chanel)、NYソーホーの「アトリエ・ボーテ・シャネル」を閉店─ 体験型ビューティースペースに幕

Atelier Beauté Chanel

仏ラグジュアリーブランドのシャネル(Chanel)が、ニューヨーク、ソーホーのウースター・ストリートに構えていたビューティーコンセプトストア「アトリエ・ボーテ・シャネル(Atelier Beauté Chanel)」を閉店した。2019年に開業して以来、およそ6年間にわたり運営されてきた同店は、2025年1月18日をもってその役割を終えたとされる。

「アトリエ・ボーテ」は、販売よりも体験に重点を置いた新しい小売モデルとして登場。スキンケアやメイクアップ、フレグランス製品を自由に試すことができる没入型スペースとして、美容関係者やファンの間で注目を集めていた。

Chanel Atelier Beauté in New York City

Chanel Atelier Beauté in New York City
Courtesy of Atelier Beauté Chanel

シャネルは声明の中で、「2019年の開業以来、アトリエ・ボーテ・シャネルは、革新的かつデジタルに強化された環境で、お客様の体験を高めることを目的としてきました」と述べている。そのうえで「現在はこのイノベーションの実践を既存のフレグランス&ビューティーの業務モデルに統合する決定を下しました」としており、ブランドとしての体験価値は今後も継続的に展開していく姿勢を示している。

閉店の背景には、世界的なラグジュアリーマーケットの減速があると見られており、シャネルはアメリカ国内で約70名の人員削減を実施。「米国は依然として重要な市場であるが、いかなる市場でも需要には浮き沈みがあります」とコメントしている。

なお、現在も営業を続けている店舗としては、ウィリアムズバーグ(Williamsburg)にあるフレグランス&ビューティーストアのほか、2023年にパリのパッシー地区に開設された3フロア構成の「メゾン・ド・ボーテ(Maison de Beauté)」がある。後者はシャネルが本拠地フランスに展開する初のビューティーハウスであり、香水、スキンケア、メイクアップのフルラインナップが揃う象徴的な空間となっている。

「体験型リテール」の普及と戦略の形骸化

近年、体験型を重視したリテール空間を打ち出すブランドは増加の一途をたどっているが、その一方でブランド戦略の型化・マンネリ化も否めない。特にニューヨークにおいては、常設店舗ではなく期間限定のポップアップ形式で顧客との接点を創出するスタイルが急速に浸透し、「体験を提供する」こと自体が、すでに一般的なアプローチとして定着しているのが現状である。

こうした潮流の中、2023年にはノーホー地区に拠点を構えていた体験型リテールショールーム「ショーフィールズ(Showfields)」も、閉店を余儀なくされた。同社は「ユニークかつD2Cブランドを実店舗で展開する」という革新的な構想のもと注目を集めたが、パンデミック前に締結した店舗契約における過大な賃料が、事業継続を困難にした要因の一つとなった。

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