エスティ ローダー カンパニーズの名誉会長、レナード・ローダー(Leonard Lauder)が92歳で死去

Leonard Lauder. Courtesy of The Estée Lauder Companies Inc.

6月14日(現地時間)、エスティ ローダー カンパニーズ(The Estée Lauder Companies Inc.)の名誉会長レナード・A・ローダー(Leonard A. Lauder)が、家族に囲まれながらニューヨークで逝去した。享年92歳。

ローダーは1933年、ニューヨーク市にて誕生。エスティ・ローダー(Estée Lauder)とジョセフ・H・ローダー(Joseph H. Lauder)夫妻の長男として、両親が築いた化粧品ブランドを世界有数の企業へと育て上げた人物である。ペンシルベニア大学ウォートンスクールを卒業後は、米海軍士官候補生学校を経て、海軍中尉としても勤務した経歴を持つ。

1958年に正式に家業に参画し、1972年から1995年まで社長、1982年から1999年までCEO、そして1995年から2009年まで会長職を務めた。名誉会長となった後も、同社の経営と戦略に深く関与し続け、最晩年までニューヨーク本社に足を運んでいたという。

在任中、ローダーは「アラミス(Aramis)」「クリニーク(Clinique)」「ラボシリーズ(Lab Series)」といったブランドを新たに立ち上げ、「アヴェダ(Aveda)」「ボビイ ブラウン(Bobbi Brown)」「M・A・C」「ジョー マローン ロンドン(Jo Malone London)」「ラメール(La Mer)」などを買収し、エスティ ローダー カンパニーズを多ブランド戦略による世界的企業へと押し上げた。

また、製品開発、販売戦略、R&D、国際展開などあらゆる領域において業界を先導し、従来の化粧品ビジネスの常識を塗り替えてきた。

息子であり、同社取締役会会長を務めるウィリアム・P・ローダー(William P. Lauder)は次のようにコメントしている。

「父は、化粧品業界を築き、変革するためにその生涯を捧げました。今日、業界の基盤となっている多くのイノベーションやベストプラクティスは、父の功績によるものです。彼は、誰よりも寛大な人であり、芸術と教育はすべての人に与えられるべきだと信じていました。アルツハイマー病や乳がんとの闘いにも生涯をかけて支援を続けました。」

「何よりも、父は出会ったすべての人に親切でした。従業員を“企業の心と魂”と考え、彼らもまた父との時間を心から大切にしていました。」

また、ローダーは芸術支援の分野においても著名なコレクターであり、2013年にはメトロポリタン美術館に78点のキュビスム作品を寄贈。パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)やジョルジュ・ブラック(Georges Braque)らの作品を含むそのコレクションは、同館史上最大規模の寄付として話題を呼んだ。また、それに合わせてレナード・A・ローダー近代美術研究センター(Leonard A. Lauder Research Center for Modern Art)も創設している。

医療分野への貢献も著しく、故エヴリン・H・ローダー(Evelyn H. Lauder)と共に乳がん研究基金(Breast Cancer Research Foundation)を創設。さらに弟であるロナルド・S・ローダー(Ronald S. Lauder)とともに、アルツハイマー新薬研究基金(Alzheimer’s Drug Discovery Foundation)を立ち上げた。

同社CEOであるステファン・ド・ラ・ファヴェリエ(Stéphane de La Faverie)は、次のように追悼の意を表している。

「レナード・ローダーは多くの人々に愛され、その不在が大きく感じられるでしょう。彼は私たちのインスピレーションであり、真のチャンピオンでした。彼のエネルギーとビジョンは、これからも当社に影響を与え続けるでしょう。」

さらに、教育への情熱も深く、2020年にはペンシルベニア大学に1億2500万ドルを寄付。看護師不足に対応するため、授業料無償の「レナード・A・ローダー コミュニティケア ナースプラクティショナー プログラム(Leonard A. Lauder Community Care Nurse Practitioner Program)」を創設した。

晩年には、著書『The Company I Keep: My Life in Beauty』(2020年)を出版。人生と経営哲学を広く共有した。2021年にはニューヨーク・ランドマークス保存協会より“リビング・ランドマーク”にも選出されている。

「会社の財産は“人”である」という信念のもと、ローダーは従業員との関係を何よりも大切にしてきた。“最高教育責任者(Chief Teaching Officer)”として社内での教育を重視し、パンデミック時には社員の心身を支えるELC Cares基金の創設にも尽力した。

ローダーの死去は、エスティ ローダー社のみならず、世界のビューティ業界にとって計り知れない損失である。その業績と精神は、今後も世代を超えて語り継がれることだろう。

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