9月23日(現地時間)、ストリートウェアとスニーカーを軸にグローバルな影響力を築いてきたハイスノバイエティ(Highsnobiety)が、年内をもってEコマース部門を閉鎖することがBusiness of Fashion(Bof)の報道によって明らかになった。同社は今後、出版・編集コンテンツならびにブランド向けのクリエイティブ/コンサルティング事業に経営資源を集中させる方針を示している。
ハイスノバイエティがEコマースに参入したのは2019年。カルチャー領域で培った編集力や影響力を商品販売へと拡張する試みだった。しかし近年は競争の激化や収益性の課題が浮き彫りになり、今回の撤退に至ったようだ。
同社は「今回の決断は終わりではなく、新たな章の始まり」と強調。今後はオーディエンスとの文化的接点をより深めることに注力する方針だ。
また、この構造改革の一環として、約275人の従業員のうち50人が削減対象となる。小売事業に関連する財務やテクノロジー部門などが中心とみられる。同社は移行期におけるスタッフ支援を約束しており、組織の再編を通じて「共通の目標に集中できる環境を築く」としている。
ハイスノバイエティは、編集事業とブランドとのコラボレーションを軸に、ファッション業界におけるサステナビリティや社会的責任にも一層注力する考えを示している。今後はライブイベントやバーチャルワークショップの開催、サステナブルな小規模デザイナーの支援などを通じて、新しい形でコミュニティとの関係を構築していくようだ。
ラグジュアリーEC市場の苦境
近年、ラグジュアリー・デザイナーズブランドを取り扱うEコマースは相次ぎ困難に直面している。
2023年には経営難のファーフェッチ(Farfetch)が韓国のクーパン(Coupang)によって買収され、その後ファーフェッチ創業者のジョゼ・ネヴェス(José Neves)が退任を発表。また、英国発ラグジュアリー・Eコマースサイトのマッチズ・ファッション(Matches Fashion)も経営破綻の末、2024年6月にサイトを永久に閉鎖した。
さらに、リシュモン(Richemont)傘下にあったユークス ネッタポルテ(Yoox Net-A-Porter)も長らく経営不振に苦しみ、今年4月にドイツのミュンヘン発のラグジュアリーEコマース企業である「マイテレサ(Mytheresa)」に買収されている。
加えて今年8月には、カナダ発のラグジュアリーEコマースサイト「エッセンス(Ssense)」が、債権者による売却圧力を回避するため、破産保護の一形態である「CCAA(Companies’ Creditors Arrangement Act)」の申請を行うことも明らかになった。
しかしハイスノバイエティ場合、Eコマース撤退は一見後退に見えるが、メディア事業としての独自性を磨くための前進ともいえる。ブランドのストーリーテリングや文化的文脈をどう強化していくかが、同社の次の競争力を決定づけるだろう。
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