フレイザーズ・グループ、米高級リテーラー「ザ ウェブスター(The Webster)」の過半数株式を取得

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イギリスの大手小売企業「フレイザーズ・グループ(Frasers Group)」が、マイアミ発の高級セレクトショップ「ザ ウェブスター(The Webster)」の過半数株式を取得したことが明らかになった。2008年に創業したザ ウェブスターは、アメリカを代表するラグジュアリー・マルチブランド・リテーラーのひとつであり、この買収によりフレーザーズ グループはグローバルな高級事業の拡大を加速させる構えだ。

独立性を維持しながら次の成長フェーズへ

創業者でありCEOのロール・エリアール・デュブリュイ(Laure Hériard Dubreuil)は、引き続き重要な株式を保有し、経営の指揮を継続する。「ザ ウェブスター」は今後も独立した事業体として運営され、ブランドの世界観や美学を維持したまま、フレイザーズ・グループのスケールとデジタル面の知見を活用してさらなる成長を目指す。

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「ザ ウェブスター」は創業以来17年間、非公開企業として独立性を保ちながら成長を遂げてきた。市場が大きく変化する中でも、ブランドとしての一貫した姿勢を貫いてきたが、次の成長段階に進むためには信頼できるパートナーの存在が不可欠だと判断したという。

今回の買収について、フレイザーズ・グループCEOのマイケル・マレー(Michael Murray)は、「ロールが築き上げたザ・ウェブスターには以前から敬意を抱いていた」とし、「完璧な実行力と卓越したブランドパートナーシップを備えたユニークな存在です。フレイザーズの資金力、運営力、そしてデジタル戦略を組み合わせることで、ザ ウェブスターを次のレベルへ導く理想的なパートナーシップになるでしょう」と語っている。

フレイザーズは近年、ラグジュアリー事業を急速に拡大しており、2024年にはイギリスの高級小売「マッチズ(Matches)」を買収したことでも注目を集めた。しかし同社は、買収から約2ヶ月余りで、「マッチズ」が「一貫して事業計画の目標を達成できず、グループからの支援にもかかわらず、重大な損失を出し続けていること」を指摘。マッチズの経営陣は事業を安定させる方法を見つけようとしてきたが、結局、「マッチズ」は、同年6月いっぱいでサイトを永久閉鎖した。

そういった背景がありながらも、フレイザーズはラグジュアリー戦略を止めることなく、次なる成長の舞台を北米へと移した。今回の買収は、同社が掲げる「エレベーション戦略」の一環であり、世界で最も称賛されるブランド・エコシステムの構築を目指すものだ。フレイザーズは、すでにイギリス国内で展開する高級リテール「フランネルズ(Flannels)」を軸にラグジュアリー領域を拡大しており、今回の買収で北米市場への本格的な足がかりを得たことになる。

ザ ウェブスターが築いたブランド価値

「ザ ウェブスター」は、マイアミのサウスビーチに旗艦店を構え、これまでにアトランタ、オースティン、ラスベガスなどへ店舗を拡大してきた。現在は北米で13店舗を展開し、シャネル(Chanel)、グッチ(Gucci)、ディオール(Dior)、サンローラン(Saint Laurent)など、100を超えるブランドを取り扱う。 “没入型ラグジュアリー体験”をコンセプトに、洗練された空間設計と厳選されたセレクションで、アメリカの高級セレクト業界において独自の地位を築いてきた。

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また今回の買収は、アメリカ市場で苦境が続くマルチブランド業態における新たな可能性を示す動きでもある。両社の協業により、「ザ ウェブスター」がこれまで培ってきた美的世界観と顧客との関係性を維持しながら、グローバル市場でのプレゼンスを拡大していく見通しだ。

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