欧州リセール「ヴィンテッド(Vinted)」は、なぜIPOを急がないのか?セカンダリー戦略で評価額が80億ユーロに到達

Vinted

4月27日(現地時間)、欧州リセール市場を牽引する「ヴィンテッド(Vinted)」が、企業価値80億ユーロに到達したことが伝えられた。背景にあるのは、EQT主導による約8億8,000万ユーロ規模の株式取引である。

ただし今回の取引は、一般的な資金調達とは異なっている。新たな資金を集めるのではなく、既存株主や従業員が株式を売却し、現金化する「セカンダリー取引」なのだ。資金を必要とせずに評価額を引き上げたことに、ヴィンテッドの現在地が表れている。

Summary

  • ヴィンテッドがセカンダリー株式売却により評価額80億ユーロに到達
  • 取引規模は約8.8億ユーロで、新規資金調達ではなく既存株主の流動性確保が目的
  • 評価額は2024年の50億ユーロから約60%上昇
  • 欧州25カ国以上・ユーザー数1億人超の規模に成長
  • IPOは「準備済み」としながらも時期は未定、セカンダリー戦略を継続

 

セカンダリー取引が示す資本戦略の転換

今回の取引はEQTが主導し、新規投資家としてシュローダーズ・キャピタル(Schroders Capital)およびティーチャーズ・ベンチャー・グロース(Teachers’ Venture Growth)が参画した。既存投資家にはアクセル(Accel)、インサイト・パートナーズ(Insight Partners)、EQT、ライトスピード(Lightspeed Venture Partners)、スプリンツ(Sprints)などが含まれる。

注目すべきは、2024年10月に50億ユーロとされた評価額から、今回約60%上昇している点である。IPOを伴わず、セカンダリー取引のみで評価額をここまで引き上げたことは、同社の成長性と市場からの信頼の高さを示している。

プラットフォームとしての完成度と成長性

ヴィンテッドは2008年、ミルダ・ミトクテ(Milda Mitkutė)とユスタス・ヤナウスカス(Justas Janauskas)によって創業された。当初は衣類の売買を目的としたサービスであったが、現在では電子機器、書籍、玩具、ゲームへとカテゴリーを拡張。2025年時点で、欧州25以上の市場で展開され、ユーザー数は1億人を突破した。特にフランス市場においては、販売量ベースで「アマゾン(Amazon)」や「シーイン(Shein)」を上回る規模に達している。

その成長を支えるのが、独自のインフラ設計である。決済機能「Vinted Pay」と物流ネットワーク「Vinted Go」を統合し、C2C取引における摩擦を最小化。さらにレコメンデーションアルゴリズムにより、大規模なマッチングを効率的に実現している。

この構造は、「ディポップ(Depop)」、「ポッシュマーク(Poshmark)」、「スレッドアップ(ThredUp)」といった競合が複数市場で同時に再現することが難しい領域である。

また、2024年には投資部門ヴィンテッド・ベンチャーズ(Vinted Ventures)を設立し、シリーズA〜Cのリコマース関連スタートアップに対して50万〜1,000万ユーロ規模の投資を実施。単一プラットフォームからエコシステムプレイヤーへと進化しつつある。

IPOを急がない理由

セカンダリー市場の拡大は、近年のテック企業における新たな資本戦略を象徴している。企業がIPOを急がずとも、既存株主や従業員が株式を売却して現金化できる仕組みとして機能しているためである。

また、ヴィンテッドの株式は市場に出回る機会が限られており、その希少性からも投資家の関心は高い。限られた機会に対して需要が集中することで、投資対象としての魅力が一段と強まっている。

CEOのトーマス・プランテンガ(Thomas Plantenga)は、2025年決算発表で次のように説明している。

「セカンドハンドを第一の選択肢にするために、私たちは何をすべきかを理解しています。最もコスト効率が高く、最も信頼でき、使いやすい存在になる必要があるのです。」

同社はIPO準備が整っているとしながらも、上場時期は未定。セカンダリー取引を活用しながら、成長と流動性の両立を図っている。

主流化するリセールで、ヴィンテッドが示す資本戦略の新常識

これまで、サステナビリティの文脈で語られることが多かったリセールだが、現在では巨大な流通市場へと変化を遂げている。その中で、ヴィンテッドは単なるマーケットプレイスを超え、決済・物流・投資を内包した統合型プラットフォームとしてポジションを確立した。

さらに重要なのは、IPOをゴールとしない成長モデルだ。セカンダリー市場を活用することで、評価額のコントロールとステークホルダーへの還元を両立させるアプローチは、今後の欧州発スタートアップにおける新たなスタンダードとなる可能性があるだろう。

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