2月6日(現地時間)、ラグジュアリーブランドのシャネル(Chanel)と、ファッション・ブティックおよびオンライン小売業者であるWhat Goes Around Comes Around社(以下、略:WGACA)との間の法的紛争がついに終結し、シャネルが勝訴した。
裁判所は、商標権侵害訴訟の4つの訴因であった、「虚偽の連想に基づく商標権侵害と不正競争」、「 侵害するシャネルブランド製品の販売と様々なハッシュタグの使用に基づく商標権侵害」、「偽造シャネルブランド製品の販売」、「虚偽広告」というあらゆる面で、シャネルに有利な判決を下し、WGACA社へ、400万ドルの法定賠償金を支払う義務を命じた。また、追加の損害賠償については、裁判後の双方の準備書面で検討される。
判決を受け、シャネルの広報担当者はVogue Businessに声明を発表。 「シャネルはこの判決を歓迎します。この判決は、あらゆる虚偽の連想、商標権侵害、偽造、虚偽広告から消費者とシャネルのブランドを保護するというシャネルの揺るぎないコミットメントを示すものです。このような侵害行為は、消費者が購入するシャネルブランドのアイテムがどのようなものであるかについて、一般の人々を混乱させる可能性が高く、消費者を傷つけ、シャネルの善意とブランドを傷つけるものです。」と述べた。
WGACAは、ラグジュアリーブランドのヴィンテージ品やPre-Owned品を転売し、販売する再販プラットーフォームである。1993年にシラキュース大学を卒業したセス・ワイザーとジェラルド・マイオーンによって設立され、以来、独自の審美眼を通してキュレーションした商品でヴィンテージ市場におけるパイオニア的存在を築いてきた。現在は、ニューヨークのソーホーに旗艦店を含めた2店舗を構える他、ビバリーヒルズや世界中の一流小売店とEコマースサイトにて、その存在感を強めてきた。
そんなヴィンテージ品を扱うWGACAと、シャネルの間で起きた商標権侵害をめぐる対立は、遡るところ2018年に始ったものだ。WGACAで転売されているシャネルの商品に対して、かねてよりシャネルは「シャネル以外の者が販売した商品を、本物のシャネル製品であると保証できない」と異議を唱えてきた。
これに対してWGACAのセス・ワイザー(Seth Weisser)CEOは、WGACAで販売されているシャネル製品の中には、購入したものではなく、ブランドからオーナーに贈られたものと思われ、出所が確認されていないものがいくつかあったことも明らかにした。ヴァイザーは、この取り決めに問題はないと否定した。
ワイザーは、「消費者が何かを買いたいという願望があり、合法的な買収によってそれを買うことができるのであれば、私たちにはそれを販売する権利があると信じています」と法廷で証言。「WGACAは常に厳格な認証プロセスを持っており、会社の歴史上、非正規品や偽造品を販売したことはありません。今日の判決は、偽造品を販売しなかったということではなく、WGACAがシャネルのデータベースで無効とされた商品を販売したということです。このデータベースにアクセスできなければ、転売業界はこれらのシリアルナンバーの状況を知ることができません。私たちは100%本物であることを保証し続けます」と続けて主張した。
また、WGACAがソーシャルメディア上でシャネルの創業者ココ・シャネルの言葉を引用したり、10%オフのCOCO10などの割引コードを使用したりすることも、長期にわたる対立に発展した要因だったようだ。シャネルは、こうした事例が消費者へ「WGACAとシャネルが正式に提携している」という誤った認識を与えていると主張していた。
近年、ラグジュアリーブランドの価格が値上がりしていく中で、ヴィンテージ品やPre-Owned品を扱う再販プラットフォームで高級品を購入することは、消費者にとって抵抗が薄れ、馴染みのあるものになってきた。現にWGACAの他にも、「ザ・リアルリアル(The RealReal)」、「ヴェスティエール・コレクティブ(Vestiaire Collective)」、「リ・バッグ(Rebag)」、「ファッションファイル (FASHIONPHILE)」など、ヨーロッパや北米のラグジュアリーブランド、デザイナーズブランドを取り扱う再販プラットフォームはいくつも存在する。
問題は、こうした再販プラットフォームが、「自分たちが販売する商品の権威として機能できる」という誤った考えを持ってマーケティングやプロモーションを行ってしまうことにあるだろう。また、巧妙に作られた模造品が市場に多く出回っているご時世で、「製品の真正性を確実に保証できるのか」という点は、第三者のプラットフォームが抱える最大の課題である。
ちなみに、シャネルは、2018年に始まった同じく再販プラットフォームのザ・リアルリアルに対しても、WGACAとほぼ同様の商標権侵害をめぐって2018年に訴訟を起こしており、現在も進行中だ。
このような商標権侵害を防ぐ為にも、オスカー・デ・ラ・レンタ(Oscar de la Renta)始めとするいくつかのラグジュアリーブランドでは、独自の再販プラットフォームを立ち上げ、そこで自社製品を販売する、という動きが見られ始めている。