中国の巨大ファストファッション、シーイン(Shein)が米国IPOを申請|2024年に上場の見通し

11月27日(現地時間)、中国の巨大ファストファッション小売業者であるシーイン(Shein)が、内密に米国での新規株式公開(IPO)を申請したことが複数メディアによって伝えられた。

同社は、2024年に上場する見通しで、ゴールドマン・サックス、JPモルガン・チェース、モルガン・スタンレーが主幹事を務める。ロイターは今年7月に、シーインはIPOの可能性について、「少なくとも3つの投資銀行と協議し、ニューヨーク証券取引所とナスダックとも交渉を行っている」と報じていた。

シーインは、超低価格でトレンドを押さえたアパレルやアクセサリーを幅広く取り揃え、米国の消費者、特に10代から20代の間で人気を博しているファストファッション・ブランドだ。同社の直近の評価額は660億ドル(約6.6兆円)にまで昇っている。

シーインに集まる批判

しかし、シーインには世間から多くの厳しい意見もある。

その一つが模倣品の販売問題だ。同社が生産してきた服のデザインには、ラグジュアリーブランドやデザイナーズブランドを完全に模倣したものが多く含まれると言われており、これまでに商標権や著作権、知的財産権を巡り、アーティストやブランド、デザイナーから複数の訴訟を起こされている。

過去には、「ステューシー(STUSSY)」や「ドクターマーチン(DR. MARTENS)」などのブランドから商標権侵害を巡った訴訟を起こされており、ロサンゼルスを拠点に活動するアーティストのジェニファー スターク(Jennifer Stark)やアーティストのマギー スティーブンソン(Maggie Stephenson)からも彼らの「作品の著作権を侵害した」とクレームが挙げられた。イタリアブランド「GCDS」のデザイナーであるジュリアーノ カルザ(Giuliano Calza)も、GCDSの靴のデザインをコピーされたと主張し、同社を批判した。

これに対しシーインでは、現在、個人のデザイナーとのコラボレーション・プログラムを導入し、持続可能な目標に取り組みを開始。また最近では、ファストファッションのフォーエバー21とも提携し、実店舗での販売に踏み出すのではとも言われている。

また、今年6月にはインフルエンサーを中国の倉庫に招いたツアーを実施したが、そこでも炎上が起きた。インフルエンサーらが同社の取り組みについての透明性をソーシャルメディア上で拡散したが、フォロワーたちが「発信内容が事実と違うのでは」と強く非難したからだ。

というのも、シーインの製品が超低価格である理由には、劣悪な労働環境があるとされており、以前より従業員らが長時間にわたり低賃金での労働を強いられていることへの問題視がされている。

また昨年には、ブルームバーグが委託して行った検査の結果で、シーインが米国に輸出した衣料品に「新疆綿」(中国政府がウイグル族の労働力を搾取してきた地域で生産されている綿)が使われていることが判明し、厳しい監視の目が向けられた。今年4月には、シーインが株式公開を予定している条件として、同社が「ウイグル人強制労働者を使用していない」ことを第三者機関を通じて証明するよう求められていた。これに対し同社は、 「強制労働に対してゼロ・トレランス 」であると主張している。

このように、最近になってシーインは、消費者や政治家からの様々な批判に対処し始め、事業や慣行に対する認識を改めようとしている。こうした動きから、投資家たちの間では「早ければ年内にIPOする可能性があるのでは」と、以前より囁かれていた。

なお、米中関係が緊迫する中で、米国での株式公開は「規制当局の強い監視を招く可能性が高まる」との懸念もされている。