アーリーマジョリティ(Early Majority)のメンバーシップ制度はファッション業界をサステイナブルに変えられるか

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Early Majority(アーリーマジョリティ)が挑戦する未来とは

高機能アウターを販売するファッションブランド、Early Majority(アーリーマジョリティ)の取り組みが斬新だ。

アーリーマジョリティはメンバーシップ制度を導入し、これまでに一つも商品を販売することなくただただ自身のコミュニティを育ててきた。

これまでブランドの取り組みは早期メンバーである会員のみがアクセス出来ていたが、ついに今週からそれが一般向けに公開となったのだ。

早期メンバーではなかった新規顧客も、今後は358ドルのメンバーシップ料金を支払うと、生涯メンバーシップとして以下の特典が受けられる。

  • メンバー限定の特別ギフト
  • 商品の早期アクセス
  • 全ての商品がメンバー割引価格で購入可能
  • メンバー限定コンテンツとイベントの実施
  • 商品開発への参加権限

また、商品価格はメンバーシップ価格と一般価格の2つに分かれており、メンバーシップに加入せずとも商品を購入することも出来る。

その場合は、メンバー価格よりもおよそ60%割高の価格で各アイテムの購入が可能だ。

Early Majority

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Early Majority公式サイトより

このメンバーシップ制度の導入はアーリーマジョリティのようなローンチしたばかりのブランドにとってかなり大きな賭けだと言えるだろう。

しかし長期的な視点で見るとメンバーシップ制度は顧客データベースの収集やブランドへの顧客からのエンゲージメントという商業的優位性を促進するだけでなく、これまでのブランド戦略とはかけ離れた大きな利点があると考えられている。

その一つがサステイナビリティについての問題解決だ。

このメンバーシップ制度を取り入れることで、ブランドは販売数の見込みデータを作成でき、過剰生産を減らすことが出来るだろう。

その後も消費者に一度購入し使い古した商品を返送するよう促すことで、商品をリサイクルし、より長いサーキュレーションを作り上げられる。

また、メンバーシップコミュニティを持つことは、長期的に見るとブランドと顧客の関係を単なる商品の売買関係から、忠誠心を持つ信頼関係へ発展させ、利益の成長を生産から切り離す1つの方法になると考えられている。

これについてアディダスの元最高マーケティング責任者であるエリック・リートケ氏は「未来は目的志向の企業にある」と主張する。

 「人々は商品に対して対価を払うだけのやり方にはもううんざりしているが、その代わりにコミュニティやその他の特典、報酬へのアクセスが提供されることに価値を感じている。」とリートケ氏は述べている。

変わりゆくビジネスモデル

アーリーマジョリティはどのようにして生まれたのだろうか。

アーリーマジョリティの最高経営責任者であるジョイ・ハワード氏がそのビジネスモデルを考え始めたのは、彼女がパタゴニアのマーケティング部門副社長を務めていた2010年代初期に遡る。

当時ハワード氏は世界のトップアスリートたちとブランド製品のあるプロジェクトに同行したことがある。そこでブランドのマーケティングチームからハワード氏へ各スポーツの競技ごとに新しいワードローブを提供された時、彼女は「サステイナビリティを最も重視している企業の1つでさえ、より多くの製品を販売するという意欲があると同時に、環境への影響を抑える努力における緊張関係が生じている。」ということを実感した。

そして「もしもブランドが無限のコレクションで過剰消費を奨励するのではなく、タイムレスに使用できるシグネチャー製品のみの販売に集中できるビジネスモデルがあったとしたらどうだろうか。

ほとんどの高機能アパレルブランドは、アクティビティごとに何かを作ることが成長ロジックとされているが、こういったアクティビティごとの製品は人や地球に役立っていないのだ。」という想いからメンバーシップのビジネスモデルを考え始めた。

 ハワード氏は、「アーリーマジョリティが有料メンバーシップコミュニティの基盤を作ることで、製品の大量生産をせず本当に見込みが取れる分だけを生産出来るし、ブランドの理念を既によく知ってくれているコミュニティの顧客が求めているニーズのある商品を作ることで、ブランドローンチ時から経済的な安定性を作るという目標が実現できる。」と話す。

また長期的には、メンバーからの中古製品を下取りして再販、およびリサイクル出来るようにする年間サブスクリプションを導入を目指しているとのこと。

どの市場のビジネスモデルも確実に大きく変化している。10年前には、消費者にファッションブランドのサブスクリプションサービスを提供することは唐突すぎる提案のように思えたかもしれない。

しかし今では小売市場、Spotifyなどのメディアエンターテインメント、さらにはUberやLyftなど自動車業界でも広く受け入れられ、顧客へ浸透しているのが分かるだろう。

また、サブスクリプションベースのビジネスは投資家からも関心も惹く。アーリーマジョリティは、セコイアキャピタルのパートナーでありベンチャーファンドHarrison Metal Michael Dearingの創設者ジム・ゲッツ氏、、Lululemonの取締役で元TeslaとLyftのエグゼクティブであるジョン・マクニール氏など、著名なエンジェル投資家から430万ドルのシードマネーを調達した。

投資家はメンバーシップ制度の導入によって、ブランドへロイヤリティや信頼を持つ顧客が増えていき、消費者とブランドのエンゲージメントを高めてくれることで、企業に安定性のある収益ストリームを長期的にもたらしてくれるだろうと予想している。

ハワード氏は、「メンバーシップのビジネスモデルに焦点を当てていなければ、DTCスペースでの広範な不況に悩まされていた投資家の心を動かすことはできなかっただろう。」と述べる。

現在、こうした新しいサブスクリプション制度やメンバーシップモデルはアーリーマジョリティを始めとするサステイナビリティに焦点を当てたごく一部のブランドによって試験的に導入されている。

今後の数か月の間でそれらがどのように機能していくすかを示すデータやエクスペリエンスは、ビジネスモデルを模索する他社にとって貴重なケーススタディになりうるだろう。