英国版 Vogueは、Vogue誌の「ヨーロッパ エディトリアル ディレクター」と英国版Vogueの「編集長」を兼任しているエドワード・エニンフル(Edward Enninful)が、来年度に現役職を離れることを発表。エニンフル氏は、来年度よりコンデナスト(Condé Nast)本社の、『Vogue』の「グローバル・クリエイティブ&カルチャー・アドバイザー」に就任する。それに伴い、英国版 Vogueでは、新しい「編集コンテンツ責任者(Head of Editorial Content)」を採用する予定だという。
来年度から開始する新しいポジションに関してエニンフルは、「コンデナスト社に貢献しながらも、より自由に社外のプロジェクトに取り組むことができるようになること」を、スタッフへのメモで伝えた。
エニンフルは、1972年ガーナ生まれ。1991年にイギリスのスタイルバイブル「i-D」でファッション誌の世界に入り、わずか18歳という業界最年少でファッションディレクターに任命され、話題となった。その後は、W誌 のスタイル・ディレクターに就任。
挑発的でエレガントなイメージで知られるエニンフルは、ナオミ・キャンベルの親友でもあり、これまでにキャンベルを始めとするトップファッションモデルたちと強い信頼関係を築いてきた。2008年7月号の『Vogue Italia』では、芸術、政治、エンターテインメント界で世界的に活躍し、国際的に高い評価を得ている黒人モデルや黒人女性を紹介、賞賛する特集を実施。より多様なファッションメディアのあり方を求めて戦った。この号は「ブラック・イシュー(The Black Issue)」と呼ばれ、米国と英国で72時間以内に完売。アメリカでは3万部、ヨーロッパでは3万部の増刷が行われた程の話題ぶりだった。
そういったエニンフルの取り組みが評価され、2014年には英国ファッション協会(BFC)から「ファッションクリエーター・オブ・ザ・イヤー」に選ばれる。また、2016年にはエリザベス女王(Queen Elizabeth II)から勲章を授与した。
エニンフルはその後、2017年8月に英国版 Vogueの編集長に就任。Vogue史上初の黒人編集長として採用されたことで、ファッション界の歴史にその名を刻んだ。
近年、コンデナスト社は合理化とコスト削減のためにヴォーグのインターナショナル版で各国の編集長職の廃止を実施していたが、エニンフルは編集長職を維持していた唯一の存在だった。(Vogueのグローバル編集ディレクターを務めるアナ・ウィンターは例外)
しかし、この数年間でこれまで働いていた一流のスタイリストやファッションエディターが退社し、代わりにウェブに精通した若いエディター達がエニンフルの部下となった。エニンフルは、編集業務の合理化と各エディションのコンテンツ戦略の調和を図る為に、編集長というポジションを離れ、新しい役職でコンデナストに貢献するという決断に至ったようだ。