ニューヨーク州がFashion Act (ファッション法)でファッション業界のサステナビリティのあり方を見直す

サステイナブルという言葉の乱用が起きている

今やどの業界でもSDGsやサステイナブルな取り組みというのがキーワードとして挙げられている。

以前より発展途上国の工場での労働環境や廃棄問題などが大きく問題視されているファッション業界、そしてファッションブランドにとって、「サステイナブルな取り組みをしている」という事は、避けては通れない要素になった。

ニューヨークでは、他の国よりも比較的早い段階で、このサスティナビリティへの活動に注力を注いでいるブランドが多く見受けられていたが、それにも関わらず、これまで具体的な規制というのはほとんど存在しない状況だ。

極端な話だが、ファッションブランドも企業イメージを守るために、「サスティナビリティ」という要素をマーケティングとして使用するところも多く存在し、実際にどこまで透明性がある取り組みをしているのかという判断が難しいというのが現状だろう。

そしてこれはファッションに限らず言えることだが、何かが「バズワード」になると、そこに多くの人が注目したり、人が集まり、実際にそれが良いと思って取り組んでいたり、進めている人がいる反面、「そのキーワードを売りにしたら売れる」「みんなが注目してくれる」という結果を求めて、それをマーケティングに乱用する人が増加してくる。

こうなるとどのブランドが本気で取り組みをしていて、どのブランドが上辺だけなのか、という判断をするのが困難になり、特に消費者側からは真意が見えない。

そして「サステイナビリティ」や「SDGs」という言葉がトレンドワードのようになり、「見栄えがいい」とか「宣伝力になる」という理由で更に多くの人々や企業が「サステナブル」の言葉そのものを乱用するようになってしまうのだ。

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ニューヨーク州議会へファッション法が提出される

そこでニューヨーク州は2021年1月初めにFashion Act(ファッション法)と呼ばれる法案を発表した。これを後押ししたのが、ファッション業界のサステナビリティを推進する団体「アクト・オン・ファッション」とデザイナーのステラ・マッカートニーである。

ステラ・マッカートニーは設立時からサステイナブルについて真摯な取り組みを行っているブランドとして知られている。同社の商品には毛皮やレザーなど使っておらず、繊維に関しても再生繊維と言われる「ビスコース」や再生カシミア、またレザーには「ベジタリアンレザー」と呼ばれる素材を使用したりと、長年サステナブルへの取り組みを徹底している。

そんなサステナブランドの代名詞でもあるステラ・マッカートニーが後押しするFashion Act(ファッション法)の内容は、「年間1億ドル(約114億円)以上の売り上げがあり、ニューヨークでアパレル、フットウェアの事業を行っている企業が対象。使っている素材の原材料がどこから来ているかなどを計画するだけではなく、実際の排出量や生産量のデータの開示を義務付ける」というもの。 これらに準じない企業は売上高の2%を罰金として課され、ニューヨーク州では「環境問題で犠牲になっているニューヨークのコミュニティー向けのプロジェクト」へこの罰金を充てるとされている。

これは今までに例を見ない大きな改革案だが、Fashion Act(ファッション法)が制定され、一番対応に追われるのは大企業だろう。企業スケールが大きいほど世界中に広がるサプライチェーンに対し、フレキシブルな対応や新しいプロセスへ順応するのが時間を要するからだ。大規模なブランドや企業であるほど、今まで長年のやり方というのをこの法律に沿った形に根本から変えていく必要が出てくると思われる。

一方でファッションデザイナーのステラ・マッカートニー氏は、「ファッション業界は最も環境に負荷をかけている業界の一つであるにもかかわらず、今日まで取り締まりの欠如が目立つ。自主的なルールや規制を設けるだけでは限界があり、こうやって政府による規制や基準の設置をするなどして、ファッション業界へのサポートが必要だ」と述べる。

今後このFashion Act(ファッション法)が導入されると、今よりも厳しい基準に基づきファッションブランドが運営されていくので、消費者もより企業のサステイナブルな取り組みに対して信頼性を持つことができるだろう。

これが実行されるとニューヨーク州のファッション業界にとって、非常に大きな改革になる。