Deep Dive
ライセンシングの歴史と構造
ファッションにおけるライセンシングの歴史は、1960年代のPierre Cardinに遡る。Cardinは300を超えるライセンス契約を結び、家具から食品まであらゆるカテゴリーにブランドを展開した。この過度なライセンス拡大はブランド価値の大幅な毀損を招き、「やってはいけない例」として業界の教訓となった。現代のライセンス契約は、最低保証ロイヤルティ(通常売上の5〜15%)、品質基準の明確化、デザイン承認プロセス、テリトリー制限など、厳密な条件が設定される。Luxotticaグループ(現EssilorLuxottica)はGiorgio Armani、Prada、Versaceなどのアイウェアライセンスを一手に引き受け、ファッションライセンスビジネスの巨人として君臨している。
ライセンスからインハウスへの転換
2010年代以降、多くのラグジュアリーブランドがライセンスの回収とインハウス化を進めている。GucciはGucci Groupとして香水事業を自社化し、KeringグループはKering Beauté設立により傘下ブランドのビューティ事業を内製化した。Burberryもフレグランスのライセンス契約をCoty社と終了し、自社運営に切り替えた。その背景には、ライセンス製品の品質管理の困難さ、ロイヤルティ収入よりも直接販売の高い利益率、そしてブランド体験の一貫性維持への志向がある。しかし、すべてのカテゴリーを自社で展開することは、特に中小ブランドにとっては現実的ではなく、ライセンシングは依然としてブランド拡張の有効な手段である。
新たなライセンシングモデル
従来のライセンシングモデルに加え、新たな形態が登場している。コラボレーション型ライセンス(H&M×デザイナーコラボのように、短期間・限定数量で展開する形式)、IPライセンス(キャラクターやアート作品のファッションへの応用)、テクノロジーライセンス(特許技術の使用許諾)などが拡大している。デジタル領域では、メタバースやゲーム内でのブランドIP使用ライセンスも新たな収益源として注目されている。BalenciagaのフォートナイトとのコラボレーションやGucciのRobloxでの展開は、デジタルライセンシングの可能性を示した。日本市場では、キャラクターIPとファッションの融合(ポケモン×BAPE、ドラゴンボール×GUなど)が独自の発展を遂げている。
OSFパースペクティブ
OSFは、ブランドライセンシングをブランドの「拡張」と「希薄化」の境界線上にある戦略と見ている。優れたライセンシングは、ブランドの世界観を新たなカテゴリーに自然に拡張し、消費者のブランド体験を豊かにする。しかし一歩間違えれば、ブランドの魂を安売りする結果にもなりかねない。
関連用語
フランチャイズモデル, ブランドエクイティ, コラボレーション, ロイヤルティ, ブランドエクステンション
注目ブランド
EssilorLuxottica, Kering Beauté, Pierre Cardin, Coty, Inter Parfums