インターテキスタイル深圳(Intertextile Shenzhen Apparel Fabrics)2026が閉幕:サステナブル素材と技術革新が華南テキスタイル市場の成長を牽引

インターテキスタイル深圳(Intertextile Shenzhen Apparel Fabrics)

ファッション産業における素材選びは、もはや色や質感だけで語られるものではない。どのように作られ、どこから来て、環境負荷をどう可視化できるのか。さらに、デジタル技術やAIをどのように生産・流通に取り込むのか。こうした問いが、テキスタイルビジネスの中心に移りつつある。

その変化を映し出す場となったのが、中国の深圳で開催された「インターテキスタイル深圳 アパレルファブリックス(Intertextile Shenzhen Apparel Fabrics)2026」である。同展は6月9日から11日まで、深圳会展中心(Shenzhen Convention & Exhibition Center)福田区で開催された。

ヤーンエキスポ深圳(Yarn Expo Shenzhen)、PHバリュー(PH Value)との同時開催により、会場には74の国・地域から延べ20,000件以上が来場。出展企業は11の国・地域から約620社に上り、華南地域におけるテキスタイルビジネスのハブとして、同展の国際性が改めて示された。

Summary

  • インターテキスタイル深圳アパレルファブリックス2026が、中国・深圳で6月9日から11日まで開催された。
  • ヤーンエキスポ深圳、PHバリューとの同時開催により、74の国・地域から延べ20,000件以上が来場した。
  • 約620社が出展し、サステナブル素材、AI活用、機能素材、トレーサビリティなど、次世代のテキスタイルビジネスを見据えた提案が集まった。

深圳が持つ、テクノロジー都市としての引力

今回の展示会で際立ったのは、深圳という都市の持つ産業的な強みである。深圳はテクノロジー産業の集積地として知られるだけでなく、広東・香港・マカオ大湾区(Greater Bay Area)の中核都市でもある。製造、物流、デザイン、デジタル技術が近い距離で結びつくこの地域は、ファッション産業にとっても次の成長拠点として注目されている。

メッセ・フランクフルト香港(Messe Frankfurt(HK)Ltd)のゼネラルマネージャー、ウィルメット・シア(Wilmet Shea)は、今回の成果について次のように述べている。

「深圳はグレーターベイエリア(GBA)の中心都市であり、Bloombergによれば、中国初の2兆ドル規模のメガリージョンとして位置付けられています。地域産業の強さ、アクセスの良さ、中国のビザ免除政策などを考え合わせれば、この展示会がビジネスに最適な場である理由は明らかです。」

同展は近年、イノベーション重視の市場に合わせてポジショニングを強化している。従来の素材見本市としての役割に加え、サステナブル素材、スマートマテリアル、デジタル製造、AI活用など、次世代の産業課題を扱う場へと進化しているのである。

「次のシーズン」ではなく「次の5〜10年」を見る展示会へ

2026年のインターテキスタイル深圳では、「テキスタイルイノベーション」をテーマに、フューチャー・ホライズンズ・フォーラム(Future Horizons Forum)が初開催された。

フォーラムでは、サステナビリティ、先端素材、AIの産業応用などをテーマにしたセッションが展開された。香港理工大学(The Hong Kong Polytechnic University)、香港高等教育科技学院(Technological and Higher Education Institute of Hong Kong)、五邑大学(Wuyi University)の研究者がモデレーターを務め、アジア国際ヘンプ連盟(Asia International Hemp Federation)、リヴィアム(LIVVIUM)、パンサー・テキスタイル・グループ(Panther Textile Group)、シフト・ファッション・グループ(Shift Fashion Group)、サンデー・スクエア(Sunday Square)なども参加した。

同時に初開催されたイノベーション・スタジオ(Innovation Studio)では、大学や業界団体と連携し、次世代素材や新しい技術活用に焦点を当てた展示が行われた。

香港高等教育科技学院でファッションデザインのプログラムリーダーを務めるイヴ・ヌワオグ・チャン(Eve Nwaogu Chan)は、同展について次のように語った。

「Intertextile Shenzhenは、スマートマテリアルや機能素材、サステナブルケミストリー、デジタル製造など、テキスタイルイノベーションを軸に独自性を強めています。」

「この展示会は来シーズンだけではなく、今後5〜10年先を見据えるバイヤーや出展者を惹きつけています。地域全体の競争力はコラボレーションによって生まれるものであり、この展示会はその重要な基盤となっています。」

この言葉が示すように、会場で語られていたのは、単なる次シーズンの素材トレンドではない。中長期的にファッション産業がどのように変化していくのか、その土台となる技術や素材、サプライチェーンのあり方であった。

グローバルブランドと地域企業が交差するビジネスの場

会場には、アディダス(Adidas)、アメリカン・イーグル(American Eagle)、ルルレモン(Lululemon)、サイドフェイム(SIDEFAME)などの国際企業がVIPバイヤーとして来場した。さらに、中国国内からもアナキキ(Annakiki)、クロシオ(CHLOSIO)、エラッセイ(Ellassay)などが参加した。

海外バイヤーデリゲーションとしては65名が来場し、そのうち3団体は東南アジアからの参加である。マレーシア・ニッティング・マニュファクチャラーズ・アソシエーション(Malaysian Knitting Manufacturers Association)やタイランド・テキスタイル・インスティテュート(Thailand Textile Institute)も含まれた。

出展企業は、中国、フランス、イタリア、韓国、ペルー、アメリカ、ベトナムなどから集まり、日本ゾーンには16社が出展した。先端素材やサステナブルソリューションと、長年の技術に支えられたサプライヤーの提案が同じ会場に並んだことは、同展の大きな特徴である。

オランダのザ・ナイトショップ/コンクリート・ブロッサム(The Niteshop / Concrete Blossom)のCEO、マリケ・モハムド(Malique Mohamud)は、来場目的について次のように述べている。

「ロッテルダム市と協力し、地域の仕立て職人による循環型ファッションエコシステムの構築を進めています。そのため、再生可能・サステナブル素材を探す目的で来場しました。」

「ビジネスマッチングプログラムは非常に価値が高く、わずか2時間で3件の有望な商談につながりました。最終的には10社ほどと有意義な関係を築けそうです。」

サステナブル素材を探す動きは、もはやブランドイメージのためだけではない。地域生産、循環型経済、少量生産、職人技との接続など、より具体的なビジネスモデルの中で求められていることがうかがえる。

天然素材、トレーサビリティ、即納対応への現実的なニーズ

展示会場では、素材の機能性や環境配慮に加え、実際のビジネスに直結する供給体制にも関心が集まった。

上海カヴァッロ1886(Shanghai Cavallo 1886 Ltd.)のセールスディレクターで、インカルパカTPX(Incalpaca TPX SA)のエージェントを務める彭暁(Peng Xiao)は、深圳の顧客は天然繊維への関心が高く、華東地域とは異なる素材ニーズを持っていると指摘した。

また、グローバル・スタンダード(Global Standard gemeinnutzige GmbH)のAPAC代表、フェリシア・シ(Felicia Shi)は、トレーサビリティツール、繊維データトラッカー、環境負荷データツールなどのデジタル化ソリューションを紹介した。会場では、カポック繊維への関心も高かったという。

日本ゾーンから出展したキラリ・テキスタイル上海(Kirari Textile(Shanghai)Co Ltd)のマネージャー、サイモン・シュウ(Simon Xu)は、中国国内でフルラインナップを在庫する体制を強みとして打ち出した。MOQなしで即納できるモデルは、少量テストや追加発注を求める現地バイヤーのニーズと合致する。

サステナブルであること、品質が高いこと、そして必要なタイミングで供給できること。華南市場では、この3つを同時に満たす提案がより重要になっている。

ヘンプが映し出す、伝統素材の新しい可能性

今回の展示会で象徴的だった素材の一つがヘンプである。ヘンプは伝統的な天然素材でありながら、衣料用途にとどまらず、自動車部品やバイオプラスチックなど、幅広い産業領域での活用が期待されている。

アジア国際ヘンプ連盟の事務局長、シャロン・ディードレ・レイソン(Sharon Diedre Leyson)は、同展について次のようにコメントしている。

「Intertextile Shenzhenは国際的につながる非常に優れたプラットフォームです。ヘンプは衣料用途だけでなく、自動車部品やバイオプラスチックなど幅広い産業で活用されます。」

ヘンプの事例は、今回の展示会全体を象徴している。長い歴史を持つ素材が、技術革新や産業用途との接続によって、新たな価値を持ち始めているからだ。伝統とイノベーションは対立するものではなく、むしろ次世代の素材開発において互いを補完する要素になりつつある。

深圳から見える、テキスタイル産業の次の方向性

インターテキスタイル深圳2026が示したのは、華南地域の市場拡大だけではない。ファッション産業全体が、より透明で、より機能的で、より柔軟なサプライチェーンへと向かっているという現実である。

サステナブル素材、AI、デジタル製造、トレーサビリティ、地域生産、即納対応。これらはそれぞれ別々のトレンドではなく、今後のアパレルビジネスを支える一つの流れとしてつながっている。

深圳という都市のスピード感と、グレーターベイエリアの産業基盤。その中で開催された今回の展示会は、アジアのテキスタイル産業がどのように進化していくのかを示す、重要な観測点となった。

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