ロエベ(LOEWE)主催の国際クラフト賞「LOEWE FOUNDATION Craft Prize 2026」、韓国人陶芸家ジョンジン・パクが大賞受賞

LOEWE FOUNDATION CRAFT PRIZE 2026 FINALISTS 2

現地時間5月12日、スペイン発のラグジュアリーブランド、ロエベ(LOEWE)が主催する国際的なクラフト賞「LOEWE FOUNDATION Craft Prize 2026」の受賞者が発表された。今年で第9回目を迎える同アワードは、現代クラフトにおける芸術性、革新性、そして卓越した技術を称えるものとして、世界的な注目を集めている。

2026年の大賞に選ばれたのは、韓国人陶芸家ジョンジン・パク(Jongjin Park)による《Strata of Illusion》(2025)。色付きの磁土を塗布した数千枚の紙を積層し、焼成によって紙を消失させることで形成された作品であり、「制御」と「崩壊」のあいだに生まれる緊張感を、彫刻的なフォルムとして可視化した点が高く評価された。

Summary

  • ロエベが「LOEWE FOUNDATION Craft Prize 2026」の大賞および特別賞受賞者を発表
  • 韓国の陶芸家ジョンジン・パクが《Strata of Illusion》で大賞を受賞
  • 特別賞には、ガーナとスペインの共同制作による《Frafra Tapestry》、イタリアのジュエリー作家グラツィアーノ・ビジンティン(Graziano Visintin)が選出
  • 今年は133の国と地域から5,100点超の応募が集まり、30名のファイナリスト作品がシンガポールで展示
  • セレモニーには田中泯をはじめ、アジア圏のセレブリティも来場した

 

審査員団は、本作について、陶芸という既存のジャンルの枠組みを超えながら、素材の偶発性や制作過程そのものを作品の本質へと昇華させた点を高く評価した。焼成中に紙が燃え尽き、熱や重力によって構造が沈み込みながら変形していくプロセスは、完成された造形美のみならず、“変化すること”そのものを作品に内包させている。

また、作品は磁器をベースとしながらも、吹きガラスや製本技術を想起させる多層的なクラフト言語を含んでおり、単一の素材や分野に還元されない独自の存在感を放っていた。審査員は、こうした不完全性やリスクを受け入れる「制作の誠実さ」が、LOEWE FOUNDATION Craft Prizeの理念を象徴しているとコメントしている。大賞受賞者には50,000ユーロが授与された。

特別賞にはガーナとスペインの共同制作作品も

さらに今年は、2組の作家に特別賞が贈られた。ひとつは、ガーナの職人コミュニティ「ババ・ツリー・マスター・ウィーバーズ」と、スペイン人デザイナーのアルバロ・カタラン・デ・オコン(Álvaro Catalán de Ocón)による《Frafra Tapestry》(2024)。ガーナ・グルンシ地方の伝統集落をモチーフにした大規模なタペストリー作品であり、空撮写真をもとに設計された図案を、伝統的な籠編み技法によって織り上げた。

もうひとつの特別賞には、イタリア人ジュエリーアーティスト、グラツィアーノ・ビジンティン(Graziano Visintin)の《Collier》(2025)が選出された。古代金工技法「ニエロ」を用いて制作されたネックレス作品であり、極小の金属立方体を連結することで、まるで無数の小さな絵画が連なっているかのような視覚効果を生み出している。

今年のファイナリスト作品には、「均衡」「不安定さ」「緊張」といったテーマが色濃く反映されていた。整然とした構造がわずかに崩れ、幾何学的なフォルムが歪み、素材が時間とともに変容していく様子を通じて、クラフトを“完成された静的なもの”ではなく、“生きたプロセス”として捉える視点が共有されていたのである。

シンガポールで展示開催、田中泯も来場

30名のファイナリスト作品は、2026年5月13日から6月14日まで、National Gallery Singapore にて展示される。応募総数は133の国と地域から5,100点超に及び、ファイナリストたちは20の国と地域を代表している。

会場では、陶芸、木工、ガラス、ジュエリー、テキスタイル、漆など、多様なクラフトメディウムによる作品が公開されている。

5月12日に開催された授賞セレモニーには、日本からダンサーのMin Tanaka が来場したほか、韓国グループ「aespa」のGiselle をはじめとしたアジア圏のセレブリティも姿を見せた。

LOEWE FOUNDATION プレジデントのシーラ・ロエベ(Sheila Loewe)は、次のようにコメントしている。

「第9回となるLOEWE FOUNDATION Craft Prizeを迎え、私はこれまで以上に大きな誇りを感じています。今年のファイナリスト作品は、審査が歴代で最も困難だったもののひとつであると同時に、クラフトが現在どこまで広がり得るのか、そして未来においてどのような可能性を持ち得るのかを、審査員たちが深く議論する機会となりました。クラフトにおける発見や高揚、卓越した技術のただなかに身を置き、これほど特別なアーティストたちによる創造的探求を間近で見届けられることを、私はいつも光栄に感じています。」

また、ロエベ クリエイティブ ディレクターのジャック・マッコロー(Jack McCollough)とラザロ・ヘルナンデス(Lazaro Hernandez)は、以下のように述べた。

「LOEWE FOUNDATION Craft Prize の審査員団に参加できたことを光栄に感じます。クラフトは、180年前の創立当時から、常にロエベの中心にあり続けてきました。ファイナリスト作品にはいずれも、並外れた献身、創造性、革新への意志が息づいていました。どの作品も、作ることの無限の可能性を力強く物語っています。」

クラフトとラグジュアリーの関係を問い直す存在へ

1846年にクラフト工房として創業したロエベにとって、Craft Prizeは単なるアートアワードではない。現代における“手仕事”の価値や、クラフトとラグジュアリーの関係性を問い直す文化的プロジェクトとして機能している。

近年のラグジュアリー業界では、効率化やデジタル化が進む一方で、“人の手による痕跡”や“制作過程そのもの”への関心が再び高まりつつある。今回の受賞作群は、完成された美しさよりも、素材の変化や不完全性、時間の蓄積に価値を見出す姿勢を共有していた。

それは、クラフトを過去の伝統技術として保存するのではなく、現在進行形の表現として更新し続けるという、ロエベ財団の思想そのものを映し出しているのかもしれない。

Copyright © 2026 Oui Speak Fashion. All rights reserved.

Oui Speak Fashion Japan (OSF)® [ウィ スピーク ファッション ジャパン]をもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む