4月29日(現地時間)、オンラインファッションプラットフォームの「リスト(Lyst)」が、四半期ごとに発表する指標「リスト インデックス(Lyst Index)」の2026年第1四半期版を公表した。
約10年にわたり発行されてきた同指標は、今期から評価方法を大きく刷新。「Desire(欲望)」「Demand(需要)」「Discovery(発見)」という三軸構造へと再構築された。新メソドロジー初回となる今回は、TOP 20の顔ぶれにも大きな変動が生じている。
その中で首位に立ったのは、マチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)体制下で初の四半期を迎えたシャネル(Chanel)。初登場での1位獲得という結果となった。
Summary
- シャネルが初登場で1位を獲得
- リスト インデックスは「Desire・Demand・Discovery」の3軸へ刷新
- グッチはデムナ体制でトップ5に復帰
- 購買は「商品」ではなく「文脈」から始まる構造へ
- 価格とステータスの分離が進行
新メソドロジーが示す「売っていなくてもホット」という概念
今回導入された三軸構造は、現代の消費者がどのようにファッションと出会い、関心を深め、購買に至るかを反映したものだ。
Desireでは、InstagramやTikTok、Pinterest、Substack、Redditなどにおける会話量や評価、UGC(ユーザー投稿)、メディア露出が対象となる。Demandでは、検索の伸び、ウィッシュリスト追加、カート投入、フルプライスでの売れ行きといった購買意図が分析される。そしてDiscoveryでは、AI検索上での露出や新規ユーザーへの広がり、さらに音楽・映画・スポーツなど他領域への波及が評価対象に加わった。
特に重要なのは、ブランドがリスト上で販売されているかどうかが、ランキングの条件ではなくなった点だ。あくまで測定されるのは、欲望・需要意図・発見されやすさ。つまり、「売れているか」ではなく「どれだけ欲しいと思われているか」が、ブランド評価の軸へと移行している。
シャネルを筆頭に、TOP 20は大きく再編
新指標のもとで首位に立ったシャネルは、3月に発表されたブレイジーの初コレクション関連プロダクトが話題を牽引。インサイダー層からSNSを通じて一般層へと拡散し、強い購買意図と高い文化的可視性を獲得した。
Hottest Productsでは「パンプス」(2位)と「マキシ フラップ バッグ」(6位)がランクインしている。
ディオール(DIOR)は3位で初登場、セリーヌ(CELINE)も20位にランクイン。フェンディ(FENDI)も19位で再登場した。グッチ(GUCCI)は4ランク上昇し5位に復帰。デムナ(Demna)の新方向性は議論を呼びながらも、ショー直後には需要が前日比+12%増加するなど、確実に消費行動へとつながっている。
ヴェルサーチェ(VERSACE)は+17%の需要増を背景に12位に上昇。一方で、コス(COS)やマッシモ ドゥッティ(MASSIMO DUTTI)は順位を落とし、ベーシック需要だけではヒート維持が難しい状況も見えてきた。
サン ローランがプロダクト部門を席巻
プロダクトランキングでは、サン ローラン(SAINT LAURENT)の「スタンドカラー ジャケット」が1位を獲得。前月比+5,550%という異例の需要増を記録した。同ブランドの「バタフライ サングラス」も7位に入り、+217%の伸びを見せている。
また、アディダス(ADIDAS)のトラックトップ(3位)、セリーヌのレースアップシューズ(4位)なども大きく需要を伸ばした。ヴィヴィアン ウエストウッド(VIVIENNE WESTWOOD)のドレスは、マーゴット・ロビー(Margot Robbie)とチャーリー XCX(Charli XCX)の着用により検索数+890%を記録。
さらに、トレーダー ジョーズ(Trader Joe’s)の2.99ドルのトートバッグが8位にランクイン。スーパーマーケットの商品がSNSを通じてファッションアイテム化した象徴的な事例となった。
10位はカンゴール(KANGOL)の「トロピック 504 フラット キャップ」で、ディズニーのドラマ『Love Story』の影響により、放映期間中に週次比+14%の検索増を記録した。

ザラの躍進とカルチャー横断的な広がり
今四半期のブレイクアウトブランドには、ザラ(ZARA)がランクイン。バッド・バニー(Bad Bunny)のスーパーボウル出演や、ジョン・ガリアーノ(John Galliano)とのバイラル化したパートナーシップ発表、さらにアーロン・レヴィン(Aaron Levine)、ウィリー・チャバリア(Willy Chavarria)、ソウシオオツキ(SOSHIOTSUKI)とのコラボレーションが、ブランドの可視性を押し上げた。
カルバン クライン(CALVIN KLEIN)も、ディズニー作品『Love Story』をきっかけに検索数が+43%増加し、再び文化的存在感を高めている。
「ホット」の分散化——価格と価値の関係が変化
今回のランキングで象徴的なのは、シャネルのバッグと、2.99ドルのトートバッグが同列で評価されている点だ。
価格やブランド格ではなく、
- どの瞬間に登場したか
- どのコミュニティで支持されたか
- どのようなストーリーを持つか
こうした要素が、価値を決定する軸となりつつある。
現在の消費者は、商品名ではなく「キャロリン ベセット ケネディ(Carolyn Bessette-Kennedy)スタイル」のような文脈から検索を始め、ムードを形成した後に商品へと辿り着く。商品起点ではなく、文脈起点の購買行動へのシフトである。
特に重要なのは、「売れているか」ではなく「欲しいと思われているか」、そして「どのように発見されるか」が評価されるようになった点だ。これは、AI時代においてブランドが戦うべき領域が、プロダクトではなく“文脈設計”へと移行していることを意味する。
つまり、ブランドの競争力は今後、商品開発だけでなく、文化的ストーリーと拡散経路をどれだけ設計できるかにかかっていくだろう。
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