Fashion x NFT
ここ数ヶ月でNFTが更にファッション業界を沸かせている。2021年に数多くのファッションブランドがNFT市場に参入したのは、いうまでもないだろう。 NFTのことをまだよく理解していない人のために簡単に説明すると、NFTとは「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」の略で、データ管理にブロックチェーン技術を活用することで改ざんすることができない仕組みのことを指す。 そしてデジタルアートとこの「NFT」を掛け合わせた作品がNFTアートである。アメリカ女性ファッションデザイナーで初NFT市場に参入したレベッカミンコフ
筆者も今年の9月に行われたニューヨークで行われたファッションウィークに訪れた。
その後もドルチェ&ガッバーナ、グッチ、ジバンシィ、バーバリーなどのヨーロッパブランドが次々にNFT市場へ参入し、短編映画からビデオゲームの中のアクセサリーまで、さまざまな形でNFTをリリースしている。
そんな中、今日はこのNFTアート関連で最近話題になったメタバーキンのお話をしよう。突如現れた100個限定のバーキン
数週間前にNFTのマーケットプレイスOpenSeaで、エルメスの100個限定の新しいデザインのバーキンがNFTアートで発売された。
しかし、これらはエルメスのブランドから公式にNFTとして発売されたものではなく、デジタルアーティストのMason Rothschild氏が作ったもの。市場ではメタバーキンと呼ばれて話題になり、0.1イーサリアムで約450ドルで当初は市場に出された。
その後、物によっては450ドルからメタバーキンの価値が約100倍以上の値段で取引された作品もあり、最安値でも4-5倍の価格に上がっていた。
エルメスのバーキン vs メタバーキン
しかし今回のケースはデジタルアーティストがブランドの許可を得ずに勝手に制作し販売して利益を得ているので、エルメスの知的財産権と商標権を侵害している可能性があるという批判の声もあがっている。
アーティスト側は、これは芸術的なアイコンと私のアートのリミックスだと主張しているが、これに対しても様々な意見が対立する。
実際に本物のバーキンはどんどん市場価値が上がっていおり、現在は「金よりも良い投資だ」という風に言われている。しかし、NFTアートは価格変動が予想できないので、長期的に見るとメタバーキンの価値が上がる保証はないという危惧がある。
遂にメタバーキンが大炎上
そしてついに2021年12月22日、メタバーキンを作ったデジタルアーティストのMason Rothschild氏がメタバーキンについて、エルメスから正式な知的財産侵害行為として販売中止の通告を受けた。これに対してRothschild氏はSNS上でメッセージを公表する。まず、エルメス宛には「私の作品で嫌な思いをしたなら申し訳ないが、アーティストとして私は謝る気はない。これは私自身のアートであり、私はいつもファッションやカルチャーにポジティブな貢献をしたいと思っている。」と主張。
また、NFTマーケットプレイスのOpenSeaではすでにメタバーキンの作品が排除されてしまった模様。OpenSeaに対してRothschild氏は、「法的な処置を撮る前に勝手にメタバーキンを取り下げたことで大変失望させられた。OpenSeaはアーティストやNFTコレクターを繋ぐイノベーティブな場所として、アーティスト側に立つべきなんじゃないか?」と異議を唱えている。
そして最後にRothchild氏は、NFTをやっている全ての人に向けて「Dear community」と宛てたメッセージを発表し、「エルメスの権力によって、自分のアートワークが終わらせられた。こんなことがあっていいのか?これは私だけの問題ではなく、NFTに関わる全ての人たちに投げかけ、考えたい問題だ!みんなで一丸となってこの問題に立ち向かっていこう!」というニュアンスの文章をSNS上で投稿した。
今後のファッション業界におけるNFTは?
私もこのメタバーキンの存在を知った時は、何か起こるのではと思っていたが、案の定このようにエルメスからのクレームが入り、炎上が起きた。ブランドの知的財産権や商標権をめぐるアーティストとの揉め事は、NFTではなくてもこれ迄に多々起きている。
Rothschild氏は「Art is Art」と述べているが、今回のNFTアートはメタバーキンという誰もが知っている「バーキン」というバッグの名前を使ってバーキンのデザインを使用して売り出し、多くの人の注目を浴びたので、流石にこの状況を見て、エルメスも何か措置を取るのではと思っていた矢先の出来事だ。
ファッション業界もどんどんNFTに注目し、多くのブランドが参入していく中で、メタバーキンのようにデジタルアーティストが作った公式ではないブランドのNFTも今後増えるだろうと言われている。
OSFではファッションビジネスという観点から、さらにNFT市場に注目していきたい。