ジェーン・バーキンが所有した『オリジナル・バーキン(The Original Birkin)』がサザビーズのオークションに登場

The Original Birkin Crafted For Jane Birkin, 1985

エルメス(Hermès)のバーキンは、今や世界で最も知られたラグジュアリーバッグの一つだ。その名の由来となったのは、フランスを代表する女優であり歌手のジェーン・バーキン(Jane Birkin)。

彼女のために特別に誕生したその初代プロトタイプが、2025年6月26日から7月10日にかけてパリで開催されるサザビーズ(Sotheby’s)の『Fashion Icons』オークションに出品される。まさにファッション史に名を刻んだ伝説的アイテムが、再び世に姿を現すこととなる。

この“オリジナル・バーキン”は、1981年のエールフランス機内での偶然の出会いから生まれた。ジェーン・バーキンが隣に座ったエルメスの当時のアーティスティック・ディレクター、ジャン=ルイ・デュマ(Jean-Louis Dumas)に、日常使いできる大きなバッグが欲しいとこぼしたことがきっかけだった。彼女の実用性とスタイルに触発されたデュマは、機内でその場にスケッチを描き、後に“バーキン”と名付けられるバッグが誕生したのである。

市販モデルの登場は1984年。しかし、今回オークションに出品されるバッグは、そのプロトタイプであり、実際にジェーン・バーキンが日常で愛用していた“本物”のオリジナル・バーキンだ。彼女はこのバッグを10年近く使い続け、ユニセフ(UNICEF)やメドゥサン・デュ・モンド(Médecins du Monde)のステッカーを貼るなど、バッグそのものを自らの思想とメッセージを込めた“キャンバス”としても活用していた。

The Original Birkin Crafted For Jane Birkin, 1985

注目すべきは、このバッグにしか存在しない7つのディテールだ。固定された肩掛けストラップ、市販モデルとは異なるサイズ感、ギルディッドブラスのハードウェア、小さな底鋲、エクレール社製のジッパー、閉じた金具リング、そしてフラップ部分に刻まれた“J.B.”のイニシャル。そのすべてが、バーキンの進化の原点を物語っている。

ジェーンがこのバッグを手放したのは1994年。エイズ支援団体のチャリティオークションに寄付されたのが最初で、2000年に再び競売にかけられて以降はプライベートコレクターが所有していた。今回のサザビーズでの出品は、実に約四半世紀ぶりの市場登場となる。

The Original Birkin Crafted For Jane Birkin, 1985

また、ジェーンが生きた証ともいえるこのバッグは、最後に彼女が使用したままの状態で展示・出品される予定で、刻印された“J.B.”、肩ストラップにぶら下がった爪切りまでそのままの状態で残されているという。

本オークションに先立ち、6月6日〜12日の期間にニューヨークのサザビーズ本社ではプレ展示が開催中だ。

唯一無二の存在であるこの“オリジナル・バーキン”は、クラフツマンシップ、セレブリティ、そして個人の物語が交錯した文化的アーカイブであり、それを手にすることは、ファッションの歴史に直接触れることに他ならない。

Copyright © 2025 Oui Speak Fashion. All rights reserved.