ByteDance社の次世代アプリ Lemon8(レモンエイト) が米国進出へ注力を注ぐ理由!Tiktok炎上との関係性は?

「Lemon8(レモンエイト)」というアプリをご存知だろうか?

このアプリはTikTokを運営する中国企業 ByteDance社が運営している、ライフスタイル系の画像、動画共有アプリだ。爽やかなレモネードの由来から名付けられたイメージから名付けられたLemon8は、「Z世代を中心に新鮮でポジティブな価値観の共有を行うアプリ」と謳われている。

日本では2020年4月に導入され、若者を中心にジワジワとその人気が上昇中だ。ByteDance社によると、2021年にはタイ、2022年にはイギリス、シンガポール、マレーシア、ベトナム、インドネシアなど他国への展開も行い、昨年度の全世界の月間アクティブユーザー数が500万人を達成したという。

そして2023年にはアメリカ市場への進出を計画しているというのだ。そんな次世代アプリLemon8について、現在米国では「ByteDance社がLemon8の米国展開に向け、アメリカ在住クリエイターに対し、過剰な呼び込みを行なっている」として懸念が広がっている。

炎上が止まないTiktok

TikTokは以前より米国ユーザーの機密データを中国政府と共有している可能性があるとの懸念が出ており、現在アメリカの半数以上の州で、政府専用機でTiktokを使用することを禁止している。

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TikTokの最高経営責任者であるShou Chewは、2週間前にアプリの危険性に関する公聴会の単独証人として初めて議会に出廷したが、Tiktokと北京との関係について議員から質問攻めにあい、米国全体でのアプリのダウンロード禁止を求める声が上がっていた。

TikTok 最高経営責任者のShou Chew氏

そういったTiktokに関する懸念がありながらも、この数ヶ月間で米国におけるLemon8のダウンロード数は急増しており、Lemon8は現在、Pinterest(ピンタレスト)や、出会い系アプリのTinder(ティンダー)、不動産プラットフォームのZillow(ジロウ)を抜いて、iPhoneユーザーがダウンロードしたライフスタイルアプリのトップに躍り出ているというのだ。

ジャーマン マーシャル ファンドでテクノロジーと地政学の責任者を務め、バイデン政権の元技術顧問でもあるリンゼイ ゴーマン(Lindsay Gorman)氏は、「Lemon8はInstagramのようなソーシャルメディアプラットフォームで、ByteDance社が所有するアプリの一つでTiktokと同じ構造を持っている為、ユーザーの情報収集に関係してまた同じ問題が出てくると思います」と述べている。

Lemon8とはどのようなアプリなのか?

では、Lemon8とは具体的にどのようなソーシャルメディアなのだろうか?

Lemon8は、Instagram(インスタグラム)とPinterest(ピンタレスト)を合わせたようなプラットフォームで、メインターゲットは10代後半から20代半ばのZ世代。ファッションやフィットネス、旅行、料理など女性が好むトピックを中心に、写真や動画を交えてブログのように長く投稿することが出来るのが特徴だ。

フィードはコンテンツが2列で表示される為、一度に目にする情報量が多く、商品のおすすめやヒントを詰め込んだショッピング機能が充実しており、また自分のお気に入りやフォローしているクリエイターの投稿をもとに、カスタマイズしたフィードにアクセスすることも出来る。

米国クリエイターの獲得に奔走するLemon8

今年度に入ってからByteDance社は米国クリエイターの誘致にかなりの広告費をかけており、その様子はインフルエンサーマーケティング会社が実施するキャンペーンの動きからも見受けられる。

OSFは、「複数のインフルエンサーマーケティング会社を通して、Lemon8の案件を実際に受け取った」というアメリカ在住クリエイターのレイチェルさんへ独自取材を行った。

レイチェルさんが一番最初にLemon8の案件を受け取ったのは、2月28日の事だという。Aspireというインフルエンサーマーケティング会社から、「ムーブメントに乗ろう!」というメッセージとともにアプリへの登録を促すメールが届いた。

また同日に、今度はInfluencers.clubというインフルエンサーマーケティング会社から、メールが届いた。そこに書かれていたのは、「48時間以内に、Lemon8の最初のコンテンツクリエイターグループとして10名の応募を受け付けます。」という内容だった。このメールに返信をせずにいると、3月2日、4日と立て続けに登録を催促するメールが届いたという。

その後3月15日にインフルエンサーマーケティング会社 Fohrから受け取ったクリエイター向けのニュースレターには、次なるTiktokとしてLemon8の特集が組まれていた。

インフルエンサーマーケティング会社 Cohleyでは、3月25日から現在に至るまで、「Lemon8(レモンエイト)」に登録したクリエイターへのペイドキャンペーンを実施している。対象となるのは18歳から25歳までのアメリカ在住の女性クリエイターで、期間中にアプリへ3投稿をすると45ドルの報酬がもらえるというものだ。ブランド側が理想とするクリエイター像は、ファッション/ビューティー関連の高品質で魅力的な写真制作の実績があること、自分のスタイルに自信があり、Lemon8プラットフォームへの投稿を通じて他の人にインスピレーションを与えることが出来ることなどが挙げられているという。

しかしレイチェルさんは、どのマーケティング会社のキャンペーンや促進にも応答していないと話す。

「Lemon8はまだ新しいソーシャルメディアなので、そこでバズって人気になれる可能性が高いのだろうと思います。でも、Tiktokでの個人情報の取り扱いについて懸念があるので、まだ気軽に利用しようとは思っていません。」と、率直な心情を明かした。

Lemon8 米国での正式ローンチ

現在Lemon8は米国でダウンロード可能だが、正式に発売されたわけではない。しかしクリエイターへのメールによると、ByteDanceは5月に、より多くのユーザーを集めるための更なるグローバルマーケティングを計画しているという。

ByteDance社はTiktokの使用がいずれアメリカの国全体で禁止になる事態を想定し、Lemon8を新たなプラットフォームとしてバックアップ策を実行している可能性が高い。