9月より米国での運用を開始したTiktok Shop|現在の動向と影響は如何に

中国のIT企業バイトダンス社(ByteDance)は2023年9月より、正式にアメリカ国内でのTikTok Shopの運用を開始した。このショッピングマーケットプレイスは、2022年11月からテストモードで導入されており、限られたブランドを対象にローンチに先駆けて検証が行われていた。米国でのTiktokユーザーは推定で1億5千万人を超えているだけに、参入当初は大きな注目が集まったが、果たして現在の動向は如何なものだろうか。

Tiktok Shopはリテールの売上に貢献

Tiktok ショップは2021年にインドネシアで始動を開始し、東南アジアを中心に急成長したライブストリーミングを利用したオンラインマーケットだ。ストリーマーを中心とした動画投稿者の動画から商品を発見し、その商品を販売元の企業やブランドからアプリ内で購入できる手軽さが特徴的な販売形態である。また、同様のモデルケースとして挙がるのがメタが運営するインスタグラムだが、Tiktokの投稿動画はインスタグラムと比べると、素人感や即興感のある動画が多い傾向だ。そうした親しみやすさこそが、ユーザーの人気や共感を呼ぶ理由となっている。

昨年3,000万ドルの売上を記録した米国のラグジュアリーグッズの再販マーケットプレイス、マイジェマ(MyGemma)の報告によると、同社の売り上げはTiktokが自社ウェブサイトに次ぐ第二の収入源となっているという。現在、マイジェマは、コンテンツクリエイターと協力して、週に20本のライブ配信を実施。ライブストリームの平均時間は60~90分で、アフィリエイトマーケティングを導入し、コンテンツクリエイターに対し、アイテムが売れるごとに5~10%の手数料を支払っているという。同社は、「今年の総収入の15%がTiktokやインスタグラム、Whatnotなどのライブストリーミングアプリから得られるだろう」と予想した。

またTiktok Shopの今年末までの流通取引総額は200億ドルに達すると見込まれており、昨年の4倍程になるとの予想もある。このまま快進撃を続けることが出来れば、フェイスブック、 インスタグラム等のメタ・プラットフォームや、グーグル社などの大手からの顧客や広告主の獲得も現実的となってくる。

今後特にミレニアム世代やZ世代の消費者をターゲットとする大手のブランドや小売企業がブランド認知や、エンゲージメントを向上させ売上を伸ばすために、なんらかの形でTiktokを利用しなければいけなくなることは間違いなさそうだ。

実際のTiktok Shop の導入画面。Credit : Tiktok

Tiktok Shopに浮上する課題と問題点

このように期待が集まる一方で、課題点も指摘されている。

一例として小売企業を中心とした新規参画者のためのケーススタディコンテンツの更新の遅れが指摘されており、使い勝手の悪さや分かりにくいといった印象を持たれているようだ。

また米国ではソーシャルメディアアプリからの商品を直接購入するやり方が思った以上に定着しておらず、 インスタグラムではホームページから購入タブをなくし、広告やリールのようなコンテンツ共有に重きを置く流れもある。

そして2023年になって度々話題にも上がっている米国の安全保障上の懸念から事業継続の是非の問題。10代の3人に2人がユーザーと言われいてる中、米国人の個人データが中国政府に流出するではないか、という懸念から、Tiktokの利用禁止案が全米で広がっている。(一般の利用者に罰則は適用されていないが、運営会社やグーグル、アップルなどが提供することに対しては罰金が科させられる。)

このように米国内においてTiktok shopを新たなマーケットプレイスとして採用せざるを得ない時勢にある中、その行く末は企業や市場経済を超えた国家間の政治的な関係性を考慮し見定める必要があるだろう。