12月22日(現地時間、)米ビューティ大手のコティ社(Coty Inc.)は、2026年1月1日付で、マーカス・ストローベル(Markus Strobel)を取締役会エグゼクティブ・チェアマンおよび暫定最高経営責任者に任命することを発表した。コンシューマー・ビューティ事業の戦略的見直しが進む中、同社は新たな経営体制のもとで次の成長局面に入る構えだ。
ストローベルは、プロクター・アンド・ギャンブル(Procter & Gamble, 以下P&G)で33年にわたりキャリアを築いてきたビューティ業界の重鎮である。直近では、12以上のグローバルブランドを擁するP&Gのグローバル・スキン&パーソナルケア事業のプレジデントを務め、数十億ドル規模のポートフォリオを統括した。P&Gビューティ部門における組織・カテゴリー変革を牽引し、とりわけSK-IIをアジア有数のプレステージ・スキンケアブランドへと再成長させた実績で知られている。
また、ファインフレグランス、ヘアケア、グルーミングにまたがるビューティ&グルーミング領域で要職を歴任。フレグランス分野では、グッチ(Gucci)、ドルチェ&ガッバーナ(Dolce & Gabbana)、ヴァレンティノ(Valentino)、ヒューゴ ボス(Hugo Boss)といったプレステージブランドを率いた。こうしたブランド統括にとどまらず、北米、中国大中華圏、日本、韓国、欧州といった主要市場において、イノベーション、製品供給、マーケティング、GTM戦略、オペレーション体制の近代化を横断的に主導してきた。
今回の就任について、ストローベルは次のようにコメントしている。
「この重要な節目にCotyに加われることを大変うれしく思います。Cotyが築いてきた強固な基盤を土台に、プレステージおよびマス・ビューティ双方での成長を加速させ、世界中の株主、パートナー、そして消費者の皆さまに持続的な価値を提供できる大きな可能性を感じています」。
なお、今回の人事発表に先立つ12月中旬には、前CEOのスー・ナビ(Sue Nabi)を巡る退任観測が一部で報じられていた。ナビは2020年7月にコティ社初の女性かつトランスジェンダーのCEOとして就任し、ブランドポートフォリオの再構築やヒットフレグランスの創出、財務体質の改善に取り組んできた人物だ。
その一方で、2026年度のスタートにおける業績鈍化や、将来的なグッチのビューティライセンス喪失といった構造的課題が重なり、経営刷新の可能性が取り沙汰されていた。同社は当時、こうした報道について「噂や憶測にはコメントしない」との姿勢を示していたが、12月22日の正式発表により、ナビがCEO職を退き、新体制へ移行することが明らかになった。
また、今回の人事に伴い、30年以上にわたり取締役会を率いてきたピーター・ハーフ(Peter Harf)も取締役を退任する。ハーフはコティをグローバルなビューティ企業へと成長させる基盤を築き、ナビは「バーバリー ゴッデス(Burberry Goddess)」をはじめとするヒットフレグランスの立ち上げを主導すると同時に、同社の財務体質改善にも大きく寄与してきた。
プレステージとマスの両軸を持つコティにとって、今回の経営体制刷新は事業ポートフォリオの再定義と、持続的かつ収益性の高い成長モデルへの転換を見据えた重要な局面であり、ストローベルの手腕が今後の方向性を大きく左右することになりそうだ。
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