4月8日(現地時間)、ヴィクトリアズ シークレット&カンパニー(Victoria’s Secret & Co.)は、著名デザイナーのアダム・セルマン(Adam Selman)をエグゼクティブ・クリエイティブディレクターに起用したことを発表した。ブランドの再構築を進める同社にとって、セルマンの抜擢はクリエイティブ戦略の中心となる重要な人事であり、新たな成長フェーズの象徴といえる。
セルマンは、リアーナのランジェリーブランド「サヴェージ・エックス・フェンティ(Savage X Fenty)」でチーフ・デザイン・オフィサーを務めた経歴を持ち、ビヨンセやケイティ・ペリーのツアー衣装も手がけてきた人物だ。
セルマンは今回の就任に際し、「このようなスリリングで変革の時期に、ヴィクトリアズ シークレット&カンパニーに加わることができ、心から光栄に思います。VS&Coのブランドは長年にわたり、私のプロフェッショナルとしての旅の中で大きなインスピレーションの源でした。このポジションに惹かれた理由の一つは、ファッションが自己表現であり、文化的対話であるという価値観を共有していることです」と語っている。
また、ヴィクトリアズ シークレットCEOであるヒラリー・スーパー(Hillary Super)は、セルマンについて次のように評価している。
「彼はファッションとカルチャーの交差点で活動する真のビジョナリーであり、常に今の消費者感覚に鋭敏です。創造力、文化的理解、そしてブランド構築の専門性は、我々のブランドがイノベーションと成長の次なる段階に進むうえで、まさに必要とされている資質です。」
ベテラン幹部によるブランドごとの再編成
今回の人事は、同社が掲げる中長期の成長戦略「Path to Potential(潜在力への道)」の一環であり、クリエイティブ部門にとどまらず、経営陣の再編も行われている。
ヴィクトリアズ シークレットのプレジデントにはアン・スティーブンソン(Anne Stephenson)、ピンク(PINK)にはアリ・ディロン(Ali Dillon)、そしてビューティー部門にはエイミー・ココウレク(Amy Kocourek)が就任。いずれもマーチャンダイジングやブランド構築に豊富な経験を持つベテランであり、ブランドごとの成長を牽引する人材として期待されている。
新任の3名のうち、スティーブンソンとディロンは2025年5月12日に着任予定。ココウレクはすでに3月に就任済みである。
ブランド再生に向けた継続的な取り組み
こうした新体制の発表は、ここ数年にわたるブランド刷新の流れを加速させるものだ。2018年に当時のCMOによるトランスジェンダーモデルに関する不適切な発言が物議を醸し、さらに元CEOレス・ウェクスナー(Les Wexner)とジェフリー・エプスタインの関係も報じられたことを受け、ヴィクトリアズ シークレットは大規模なブランド改革を実行してきた。
2021年にはLブランズから独立し、NYSEに上場。その後はVSコレクティブの立ち上げ、多様なアンバサダーの起用、2023年のオンラインランジェリーブランド「Adore Me」買収、そしてファッションショーの再始動と、変革を着実に進めている。
2024年度には年間売上が62億3,000万ドルと前年比1%の微増を記録したものの、2020年のピーク時(118億ドル)と比較すると、回復にはなお時間を要する状況だ。
今回の人事刷新は、ヴィクトリアズ シークレットがブランドの本質を再定義し、次世代の消費者との関係性をより深く築いていくための戦略的な一手と位置づけられる。
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