2025年5月6日(現地時間)、ラグジュアリーグループのケリング(Kering)は、傘下ブランドであるジノリ1735(Ginori 1735)とブリオーニ(Brioni)において新たなCEOを任命した。
ジノリ1735にはメフディ・ベナバジ(Mehdi Benabadji)が、ブリオーニにはフェデリコ・アリゴーニ(Federico Arrigoni)がそれぞれ就任。両者ともにケリング内での豊富な実績を持ち、いずれの人事も同グループが掲げるブランドポートフォリオの再定義と強化を物語っている。
新たにジノリ1735のCEOに就任したベナバジは、2020年よりブリオーニのCEOを務め、戦略的改革と国際的な事業拡大で実績を上げてきた。彼の指揮のもと、ブリオーニは事業再編を成功させ、ラグジュアリーメンズウェア市場において確固たる存在感を築いた。今後はジノリ1735において、グローバルでのブランド強化と次なる成長ステージの舵を取る。直属の上司は、ケリング副CEO兼COOのジャン=マルク・デュプレ(Jean-Marc Duplaix)である。
ベナバジの就任に際し、マルク・デュプレは、次のように述べている。
「ジノリ1735は、磁器、テーブルウェア、装飾におけるイタリアのサヴォアフェールの宝石であり、メフディさんが伝統工芸への深い理解と国際ブランド開発における豊富な経験をこのメゾンにもたらしてくれることを嬉しく思います。彼がジノリ1735のグローバル成長の次の段階を導いてくれると確信しています。」
かつて“食卓の芸術”と称されたジノリ1735は、ブランドの象徴性こそ高いものの、デジタルシフトやグローバル戦略では後れを取ってきた。今回の人事は、同ブランドを「装飾芸術の遺産」から「国際的なラグジュアリーライフスタイルブランド」へと進化させる転換点になり得るだろう。
一方で、ブリオーニの新CEOに就任したフェデリコ・アリゴーニは、サンローラン(Saint Laurent)の副CEO兼アジア太平洋地域プレジデントを務めてきた。2006年にケリング傘下のグッチ(Gucci)に入社し、2015年にはサンローランのグローバル人事ディレクターに就任。その後、アジア太平洋地域プレジデント、チーフコマーシャルオフィサー、副CEOなど、要職を歴任している。
今後はブリオーニのCEOとして、ブランドのグローバルポジショニング強化とブランド魅力度のさらなる向上を担う。なお、彼はケリング副CEOでブランド開発を統括するフランチェスカ・ベレッティーニ(Francesca Bellettini)の直属となる。
ベレッティーニは、アリゴーニの起用について、「彼の業界に対する深い知識と豊富な国際経験は、ブランドの素晴らしい歴史と実績をもとに、ブリオーニを次なる発展へと導くのに最適な人材だと信じています」と語っている。
クラフツマンシップを核としつつも、時代に即したラグジュアリーの形を模索している現在のブリオーニにとって、アリゴーニの「人と組織を活かす力」は、ブランド再生の静かなエンジンとなるだろう。
今回のジノリ1735とブリオーニのCEO交代は、単なる人事異動ではなく、ケリングが次世代のラグジュアリービジネスをどう設計していくかを示す象徴的な一手だ。
2024年には世界で約4万7,000人を雇用し、売上高は172億ユーロに達したケリング。そのスケールの背後には、各ブランドの文化やクラフツマンシップを尊重しつつ、グローバルでの競争力を高めるという明確なビジョンがある。
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