7月9日(現地時間)、イタリア発のラグジュアリーメゾン「フェンディ(FENDI)」は、ローマ国立近代美術館(Galleria Nazionale d’Arte Moderna e Contemporanea)で、2026-27年秋冬オートクチュールコレクションを発表した。
今季は、チーフ クリエイティブ オフィサー、マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)が手掛ける、フェンディでの初のクチュールコレクションとなる。
その創作の起点となったのは、人間の身体に内在する「欲望」である。衣服そのものの造形や装飾を語るのではなく、感情や意思、身振り、佇まいといった、身体を通して表出する多様な要素に目を向け、そこに新たな意味と価値を見いだしていく。そうした視点が、今季のコレクションを形づくるデザインアプローチとなった。


Courtesy of Fendi
Summary
- マリア・グラツィア・キウリによる、フェンディ初のオートクチュールコレクションをローマ国立近代美術館で発表
- 人間の身体に宿る「欲望」を出発点に、官能性、エロティシズム、自由、歓びを重ね合わせる
- 着想源は、1977年にカール・ラガーフェルドのフェンディ初プレタポルテのために制作されたジャック・ドゥ・バシェールの映像作品「イストワール・ドオー」
- コルセットを使わず、ドレープだけで身体を彫刻。着物のようなシルエットをベルベットやグラン・ド・プードルで表現
- 引き算の美学。ファーは羽根のように軽やかに、黒と白のストライプはチュールに支えられ、アラベスク模様は葉や羽根、花へと姿を変える
出発点としての「欲望」、そして「イストワール・ドオー」
ファッションは、私たちが尽きることなく欲望し続ける存在であることを教えてくれる——マリア・グラツィア・キウリはそう語る。欲望が失われることはなく、常に新しい可能性が生まれ、それは見つけ出すことも、自ら創造することもできる。彼女は「欲望」という言葉に、官能性、エロティシズム、自由、そして歓びを重ね合わせる。
そのインスピレーションの源となったのが、1977年にカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)がフェンディで初めて発表したプレタポルテコレクションのために制作を依頼した、ジャック・ドゥ・バシェール(Jacques De Bascher)による映像作品「イストワール・ドオー(Histoire d’Eau)」だった。ポーリーヌ・レアージュ(Pauline Réage)の「O嬢の物語(Histoire d’O)」をアイロニカルに引用した本作は、1970年代後半のローマを舞台に、無垢でありながらセンシュアルな自由を描き出した。


身体を締めつけず、その動きに寄り添う
コレクションでは、身体を締めつけることなく、その動きに自然に寄り添うルックの数々が登場。服は身体を拘束するのではなく、時に大胆に、時に控えめに、動きに合わせてしなやかに揺れ、身体の上を滑るように流れ、やさしく包み込む。中でも、黒と白のストライプのインレイを施したシフォンは、その軽やかさを象徴していた。
また、ジャケットや、ウィメンズ・メンズのオーバーコートに見られる着物のようなシルエットの輪郭は、ベルベットやグラン・ド・プードルといった素材によって、流れるような新たな装いへと翻訳される。コルセットを使わず、ドレープだけを用いて身体を彫刻するドレスのように——構築の論理そのものが、締めつけから解放へと書き換えられていく。



クラフツマンシップの対話と、引き算の美学
マリア・グラツィア・キウリは、それぞれのアトリエが持つ知識と卓越した技術を融合させながら、クチュールの新たな可能性を追求している。異なるクラフツマンシップが対話を重ねることで、クチュールという表現は絶えず進化を続ける。いくつかのピースは、引き算の美学によって構築されていた。
ファーは羽根のような軽やかさをまとい、黒と白のストライプはチュールによって支えられている。そこに現れるのは、官能的かつ遊び心たっぷりに前進する、ファーをまとったヴィーナス像だ。チュールはマントやケープの構造にも用いられ、アラベスク模様はレザーやファー、ファブリックによる葉や羽根、花へと姿を変えていく。メンズルックでは、それらはブランケットやシェルター、あるいは小屋のような存在として肩を包み込む。ファーの豊かな表情は、ときに蝶を思わせる軽やかさを帯び、ダブルフェイスのカシミアコートに描かれたレザーのラインは、白い地の上に迷宮のような模様を描き出した。




実験場としてのクチュール
マリア・グラツィア・キウリにとって、クチュールとは、着る人の心と身体に寄り添いながら、新しい仕立ての可能性を探る、最先端の実験場のようだ。異なる技術と知が交わり、素材が軽さへと解き放たれ、身体が拘束から自由になるこの場所で、彼女は「欲望」という無限に広がるビジョンを描き出した。
フェンディにおける初のクチュールで、キウリは声高な変革ではなく、身体そのものへの静かな注視を選んだ。感情、意思、姿勢——衣服の下にある人間の要素に価値を見出すこと。それは、メゾンの歴史と現在を、欲望という一本の糸で結び直す試みでもあった。




フェンディ2026-27年秋冬オートクチュールコレクションの全ルックは、以下のギャラリーから。
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