そんな同ブランドの最新コレクションで、デザイナーの村田晴信は、20世紀ドイツの写真家であるアウグスト・ザンダー(August Sander)の「舞踏会に向かう三人の農夫(THREE FARMERS ON THEIR WAY TO A DANCE)」から着想を得た。ザンダーが1914年に撮影したこの象徴的な写真には、ヨーロッパ中が長引く第一次世界大戦の不安と恐怖に駆られる中で、着慣れないスーツに身を包みながら堂々とカメラを見つめる、三人の若い農夫の姿が映し出されている。不慣れな盛装をして舞踏会に向かう三人の眼差しからは、先行きの分からない不安定な時代にも、生きる喜びを見出そうとする前向きな心情が伝わってくる作品だ。