NY最新店舗デザイントレンド2026春夏レポート⑷|Funny Barが体現する「Lived-In Spaces」という空間思想

Funny Bar
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共同編集:株式会社ビーツ/ワールド・モード・ホールディングス株式会社
Editor: Riri Kamata

2026年春夏シーズンのニューヨークを象徴する最新空間を通して、変化し続ける都市感覚と、新しいリテールカルチャーのあり方を読み解いていく本連載。

第1回では、「ゴハー・ワールド(Gohar World)」のポップアップ事例を通して、“内側の魅力”を持つ空間について取り上げ、第2回では、「マイモウン(Maimoun)」を通して、感性とコミュニティが交差するリテール空間の現在地を追った。第3回では、「アザーシップ(Othership)」を通じて、ウェルネス空間がサービス提供の場を超え、ライフスタイルやコミュニティの拠点へと変化している姿を考察した。

そして第4回となる今回は、「ファニー・バー(Funny Bar)」が体現する“Lived-In Spaces(更新される空間)”に焦点を当てる。

Lived-In Spaces|更新される空間

ニューヨークには、完成を目的としない空間が存在する。整え切らないことで時間が入り込み、使われることで輪郭が決まっていく場所だ。訪れるたびに印象がわずかに変わり、その積み重なりが個性として認識される。

その中でも、ファニー・バーは、開業間もないながら過度な新しさを主張しない。意図と偶然が混ざり合い、痕跡が自然に重なっていく。設計された空間というより、場が育っていく過程が見える。コミュニティの延長として成立している雰囲気がある。

新しさと古さのどちらにも寄らず、続いていくこと自体が価値になる。個性は作られるものではなく現れるものとして扱われている。コミュニティが場所を育て、場所がコミュニティを保っている。

Funny Bar

ファニー・バーを手掛けた サフワット・リアド の実践は、最初からスタジオとして構想されたものではなかった。プロダクトデザイナーとしてのバックグラウンドを持ちながら、ブルックリンでDJとして活動する一方、木工や溶接といった制作を純粋な興味として続けていた。自らのDJブースやテーブル、通い慣れたヴェニューのための小さな空間要素を手がけるうちに、その行動は自然と仕事へと発展していった。こうした個人的な制作の積み重ねが、十年の歳月を経て、実験的なインテリアや長期的な空間アクティベーションを手がけるデザインビルド・スタジオへと結実した。彼が主宰する サフワット・バイ・サフワット(Safwat by Safwat)は、インテリアやインスタレーション、空間を通じたストーリーテリングを軸に、クラフトと素材実験、文化的文脈を横断する実践を行うデザインスタジオだ。

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Courtesy of Funny Bar/ Photography: Matthew Gordon, Styling: Pascal Mihr

エジプトで生まれ育ったリアド氏の視覚言語は、古代エジプト建築、イスラム建築、ソビエト期のモダニズムといった多層的な文化の重なりによって形づくられている。音楽から直接影響を受けるというよりも、美術史やモダニズム以降の空間思考を現代にどう継承するかが、彼の関心の核にある。その感覚は ファニー・バーにも明確に表れており、空間は意図的に「テーマ化」されることを避け、より直感的なあり方を選んでいる。

「テーマバーにしたかったわけでも、特定の美学に寄せたかったわけでもない。時間とともに積み重なっていくような、自然な空間にしたかった」とリアド氏は語る。

彼にとってコラボレーションとは、ニューヨークの音楽やクリエイティブコミュニティのなかで長年かけて培われてきた信頼関係の延長線上にある。ファニー・バー もまた、そうした共有された時間から生まれ、過去のプロジェクトで実現しきれなかったアイデアが、無理なく再解釈された空間だ。完成を目的とせず、使われながら更新されていくその姿勢について、リアド氏は次のように表現する。

「空間には、自分で育っていく余地を持たせたい。例えば、レザージャケットのように、着続けることで経年変化が生まれ、パッチやピンを足していく。最初から完成された、作り込まれたジャケットよりも、最終的にはずっと魅力的になる。」 − サフワット・リアド

スピードと消費が加速する都市において、彼のインテリアは、時間とともに定着し、育っていく空間の価値を静かに示している。

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Photography: Matthew Gordon, Styling: Pascal Mihr

Safwat by Safwat

Brooklyn, New York, USA

Multidisciplinary Design Studio

2019年創立。ニューヨーク・ブルックリンを拠点に、プロダクトデザイン、家具デザイン、インテリアデザインを横断的に手がけるマルチディシプリナリー・デザインスタジオ。3DレンダリングやCNC加工、ロボティクス技術など先端的なデジタルファブリケーションを制作プロセスに取り入れ、コンセプト設計から施工までを一貫して行う。創業者サフワット・リアドの工業デザインおよび空間設計のバックグラウンドを基盤に、構造・素材・機能性を統合した実践的かつ革新的な空間づくりを展開している。

主なクライアント: Dover Street Market、Adidas、Alexis Bittar、Elsewhere Club 他  

Editor

Riri Kamata

東京生まれ。14歳で単身渡米し、ニューヨークを拠点に活動。Parsons School of Designにてプロダクトデザインを専攻し学士号を取得後、同校ファッションマーケティング学部を修了。ファッション領域では、スタイリストアシスタント、プリントデザイン、ビジュアルマーチャンダイジング、プロダクションなど多角的な経験を積む。現在はニューヨークを拠点にジュエリーレーベル「abroad」を主宰し、すべてのジュエリーを自身の手で制作している。私生活では、韓国のカルチャーやトレンド、生花(小原流)、哲学書──とりわけプラトンに親しむ。


公式サイト

https://www.abroad.nyc/

Company Profile

株式会社ビーツ

ビーツは、スペースデザインと店舗デジタルソリューションを最適化するマーケティング企業。

クリエイティビティにデータやテクノロジーを組み合わせることで、リテールという最強の顧客接点で体験できるブランドエクスペリエンスを進化させ、生活者のリアルな感動・喜び・信頼を生み出す心地よい「共感」を創出している。

公式サイト
https://www.beeats.co.jp/

 

ワールド・モード・ホールディングス株式会社

ファッション・ビューティー業界を専門に、人材、デジタルマーケティング、店舗代行など多様なソリューションを提供するグループ。

iDA、BRUSH、AIAD、AIAD LAB、フォーアンビション、VISUAL MERCHANDISING STUDIO、双葉通信社の7社の国内事業会社を擁し、シンガポール、オーストラリア、台湾、ベトナム、マレーシアに海外拠点を展開。各社の専門性を掛け合わせたシナジーにより、顧客の課題に応じた実効性の高いソリューションを提供している。

公式サイト
https://worldmode.com/jp/

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