NY最新店舗デザイントレンド2026春夏レポート⑴ |Gohar Worldのポップアップ事例に見る“内側の魅力”

Courtesy of Gohar World.
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共同編集:株式会社ビーツ/ワールド・モード・ホールディングス株式会社
Editor:Riri Kamata

Cult Status|内側の魅力

いまのニューヨークで支持を集めるブランドには、規模とは別の力がある。広く届くことよりも、濃く共有されること。その空気が先に生まれ、あとから広がっていく。流行として消費されるのではなく、文化として根付いていくのである。

冬が近づきホリデーシーズンになると自然と話題に上がるポップアップがある。ホームウェアを展開する「ゴハー・ワールド(Gohar World)」は、近年のその象徴的存在だ。毎年更新される空間と体験は期待を裏切らず、回を重ねるごとに完成度を増していく。ニッチであることは魅力として成立し、フォロワーは顧客として明確に存在し続けている。

いま支持される「ラグジュアリー」は、豪華さではなく参加の仕方に表れる。知っていること自体が価値になるのではなく、関わり続けられることが価値になる。ニッチが力を持つ時代において、魅力は広さではなく深さで測られている。

本連載では、2026年春夏シーズンのニューヨークを象徴する最新空間を通して、現在進行形で変化する都市の感覚と、新しいリテールカルチャーのあり方を毎週読み解いていく。

ゴハー・ワールド(Gohar World

ファッションとセットデザインを背景に持つカリー・リッチーは、「ゴハー・ワールド(Gohar World)」の2025年ポップアップのデザインにおいて、インテリアという枠組みを超えた空間表現に取り組んだ。彼の仕事には明確な個性と一貫性がある一方で、その姿勢を規定しているのは厳格なルールではなく、デザイン業界に蔓延する過度な形式主義への抵抗だという。

「デザインの世界は、もっと自由で、自然に変化していくべきだと思っています」とリッチー氏は語る。それぞれのプロジェクトは、閉じたシステムや固定化されたシグネチャーに従うのではなく、コラボレーションや直感、そして文脈のなかで進化していくべきだという考え方だ。

Lighting Design Natalia Priwin, Photography Pippa Drummond
Courtesy of Gohar World. Lighting Design: Natalia Priwin, Photography: Pippa Drummond

この感覚は、ゴハー・ワールドの空間にも色濃く反映されている。ギャラリーのような佇まいと強いリテール性を併せ持つこの空間は、没入感のある赤の使い方をはじめ、視覚的には大胆でありながらも、決して過剰には感じられない。強い色彩や明確なコンセプトは、使い方を誤れば平板で中身のない印象に陥りやすいが、ここでは洗練とラグジュアリーが保たれている。プロダクトは空間に埋もれることなく、むしろ空間によって引き立てられている。

リッチー氏が参照したのは、ヨーロッパの裏通りにひっそりと佇む小さなアトリエ。濃密で、ときに過剰とも言える色彩のインテリアが、日常的なアイテムに意外な重みと強度を与える、そんな空間だ。目指したのは、新しさと懐かしさが同居し、遊び心がありながらも意図の明確な、何十年も前からそこにあったかのような空間だった。

Lighting Design Natalia Priwin, Photography Pippa Drummond

Lighting Design Natalia Priwin, Photography Pippa Drummond
Courtesy of Gohar World. Lighting Design: Natalia Priwin, Photography: Pippa Drummond

プロジェクトは、極めてタイトなスケジュールのもとで進行した。スペースが確保されたのは、オープンのわずか一か月前。多くのデザイン判断は、その場で直感的に下されていった。

転機となったのは、大量にストックされていた赤いギフトラッピングペーパーの存在に気づいた瞬間だった。それを空間全体に貼り巡らせることで、内部はまるで「包まれた贈り物」のような表情を帯びることになる。そこから、クラウンモールディングやフレーミングといったディテールが、実務的な制約への応答として自然に生まれていった。綿密な事前計画に割く時間はほとんどなかったが、その分、直感と即興性に導かれた柔軟で反応的なプロセスが成立した。

このプロジェクトにおいて、コラボレーションは常に中心にあった。階層的で閉じた制作体制を避け、リッチー氏は意識的に開かれた対話的なプロセスを採用している。

「まず最初にお願いするのは、マスター・ウィッシュリストです。自分の最も大胆な夢の中で、欲しいものをすべて書き出してもらうんです」と彼は語る。

この方法によって、クライアントは自己検閲をせずに欲望を言語化することができる。実現不可能なアイデアもあれば、プロジェクトの軸となる発想もあるが、そのすべてが共有された当事者意識を育んでいく。彼の目的は、自身のビジョンを一方的に押し付けることではなく、関わるすべての人が「声を持ち、参加している」と感じられる状況をつくることにある。

その開かれた姿勢は、成功の測り方にも表れている。完成度や美しさだけでなく、リッチー氏は人々が空間にどう反応するかを注意深く観察していた。立ち止まり、中へ入り、写真を撮り、純粋な好奇心や喜びから関わっていく。その反応は、インスタレーションが完成する前からすでに現れていた。通行人が驚いた表情で足を止める光景は、このプロジェクトが目指したものを裏付けていた。喜びを招き、心理的なハードルを下げ、人と人とのつながりを生む空間をつくること。

「デザインは楽しいものであるべきです。僕たちは心臓外科医ではない。人が楽しむための美しいものをつくっているんだから、つくる側も楽しむべきなんです」と、リッチー氏は語った。

GoharWold Store Interior 177 crop
Courtesy of Gohar World. Lighting Design: Natalia Priwin, Photography: Pippa Drummond

カリー・リッチー

New York / Los Angeles

Spatial Design Studio

セットデザイン、展示空間、ファッションプレゼンテーション、体験型環境を横断する空間デザインスタジオ。コンセプトとマテリアルを統合し、物語性と空間体験を両立させた表現を得意とする。

主なクライアント:Miu Miu / MASA / TIWA Gallery / Jacqueline Sullivan Gallery / SIZED / 181 Mott / Rockefeller Center

Editor

Riri Kamata

東京生まれ。14歳で単身渡米し、ニューヨークを拠点に活動。Parsons School of Designにてプロダクトデザインを専攻し学士号を取得後、同校ファッションマーケティング学部を修了。ファッション領域では、スタイリストアシスタント、プリントデザイン、ビジュアルマーチャンダイジング、プロダクションなど多角的な経験を積む。現在はニューヨークを拠点にジュエリーレーベル「abroad」を主宰し、すべてのジュエリーを自身の手で制作している。私生活では、韓国のカルチャーやトレンド、生花(小原流)、哲学書──とりわけプラトンに親しむ。 


公式サイト

https://www.abroad.nyc/

Company Profile

株式会社ビーツ

ビーツは、スペースデザインと店舗デジタルソリューションを最適化するマーケティング企業。

クリエイティビティにデータやテクノロジーを組み合わせることで、リテールという最強の顧客接点で体験できるブランドエクスペリエンスを進化させ、生活者のリアルな感動・喜び・信頼を生み出す心地よい「共感」を創出している。

公式サイト
https://www.beeats.co.jp/

 

ワールド・モード・ホールディングス株式会社

ファッション・ビューティー業界を専門に、人材、デジタルマーケティング、店舗代行など多様なソリューションを提供するグループ。

iDA、BRUSH、AIAD、AIAD LAB、フォーアンビション、VISUAL MERCHANDISING STUDIO、双葉通信社の7社の国内事業会社を擁し、シンガポール、オーストラリア、台湾、ベトナム、マレーシアに海外拠点を展開。各社の専門性を掛け合わせたシナジーにより、顧客の課題に応じた実効性の高いソリューションを提供している。

公式サイト
https://worldmode.com/jp/

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