ペイデフェ(pays des fées)2024年秋冬コレクション

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3月11日(現地時間)に、渋谷ヒカリエの会場でショーを行った「ペイデフェ(pays des fées)」は、他のブランドとは一味違った風変わりな世界観を披露した。

ランウェイに現れたモデルたちは、木製のあやつり人形になりきり、手を広げ、辿々しく歩いたり、風船を片手に道化師のような奇妙な雰囲気を醸し出したりして闊歩する。

2014年にデザイナーの朝藤りむによって始動したペイデフェは、「奇妙でかわいい」をコンセプトに、毎シーズン、ディープなテーマを表現しつ続けているブランドだ。

そんなペイデフェが2024年秋冬コレクションで体現したのは、私たちが「思春期に肉体的な変化を遂げる過程で感じる戸惑いや葛藤」だった。

「Circle in Square」と題されたコレクションのショーノートには、「私たちは、思春期の肉体的な変化に伴う不快な成長期に、プラスチックのような無機物になりたい衝動を経験します。いつまでも記憶に残るこの短い一過性の時間(その経験を乗り越えられない気持ち)を、具体的なものに表現したい。」というメッセージが添えられ、「しかし同時に、その痛みを手当てるように装い寄り添うのが、今期のペイデフェでもあるのです」と、記されていた。

また上記に加え、インスピレーション源には、モダニズム運動が生んだ著名な詩人、北園克衛の「具体詩」も関係している。朝藤は、不安定な思春期特有の気分と、大正時代くらいの日本のダダイズムにある直線的なデザインに親和性を見出した。北園克衛の詩や写真がまさに無機質で直線的なディテールを持つ作品であり、それをオマージュするかたちで今回のコレクションを制作したという。

そうした着想源は、ケープ付きのAラインのコートや大きな襟のドレスに分かりやすく投影される。直線的なシルエットに、曲線を描く丸いプリントが採用され、対照的な形が一つに調和すると、朝藤が表現したかった繊細な心情が衣類に落とし込まれた。

また、丸や四角模様の中に描かれた「人の手」のグラフィックは、コラージュアーティストのQ-TAによるもの。今シーズンは、ブランドが通常見せる色鮮やかなカラーパレットと比べると、ネイビー、グレー、ホワイトなどベーシックな色合いが基盤となっているのも特徴的だった。

Courtesy of pays des fées

これまでにもペイデフェは、シュールレアリズムを鮮やかに描き出してきたが、今シーズンのコレクションはまるで、無機質なものに生命が宿ったかのような、より機械的で幻想的なものに昇華していた。その光景はまるで朝露を帯びた花々のように、肉感と温もりをじんわりと感じさせ、朝藤自身や匿名の無機的な存在を求める人々への慰めともなるかのようだった。

ペイデフェ(pays des fées)2024年秋冬コレクションの全てのルックは、以下のギャラリーから。