楽天ファッション・ウィーク東京 2024年秋冬 ハイライト③ マリメッコによる初のショー開催から「AI Fashion Week」まで

3月11日(月)〜3月16日(土)の6日間に渡り、「楽天ファッション・ウィーク東京」2024年秋冬コレクションが開催された。ショーのメイン会場には、例年同様、渋谷ヒカリエと表参道ヒルズが選ばれ、計43ブランドがフィジカルとデジタルそれぞれの形式の最新コレクションの発表を行った。

本記事では、楽天ファッション・ウィーク東京 2024年秋冬 ハイライト① 、楽天ファッション・ウィーク東京 2024年秋冬 ハイライト② に続き、「楽天ファッション・ウィーク東京 2024年秋冬コレクション」の様子をハイライトで紹介する。

日本で初のショーを開催したマリメッコ(Marimekko)

マリメッコ(Marimekko)は、3月15日(現地時間)に、東京国立博物館の表慶館にての2024年秋冬コレクションを発表した。今回マリメッコは、楽天「by R」の支援ブランドとして初めて「楽天ファッション・ウィーク東京」に参加。ブランドのアイコンである「ウニッコ柄」が生誕60周年を迎えたことを祝福し、日常着を鮮やかなテキスタイルで彩った2024年秋冬コレクションが披露された。

今シーズンのコレクションのテーマは「ドレスアップとドレスダウン」だ。ショーのファーストルックは、ブランドのシグネチャーである「ウニッコ柄」のグレーのニットと、ブラックのスカートの組み合わせ。首からはウニッコが花開く、シルバーのネックポーチがぶら下げられた。

その後、コートやドレス、シャツとパンツのセットアップなどが続々と登場し、どのアイテムにもマリメッコの象徴である幾何学模様やウニッコ柄が反映された。日常で着回せるリアルクローズでありながら、一枚でぱっと目を引く存在感のあるデザインは、着る人々にポジティブで明るい気持ちを与えてくれそうだ。

ウニッコのモチーフを立体的に配したネックポーチの他にも、スクエアシルエットのポシェットやコンパクトなレザーのバゲットバッグも登場した。

また、このコレクションでは、ブランドにとって初となるデニムライン「マリデニム」が披露された。これらのデニム生地は、オーガニックコットンとリサイクルコットンを使用しており、水の量に配慮しながら、メタルパーツの使用を最小限に抑え、製品が終わりを迎えた際にできる限りリサイクルしやすいよう設計されている。インディゴとライトブルーのマリメッコ柄のデニムシャツやジーンズは、ワークウェアとしての着心地の良さだけでなく、着る人の個性を引き立ててくれるような印象だ。

現在マリメッコの世界での売り上げは、ブランドの生まれ故郷であるフィンランドに次いで、2位が日本市場となっている。

クリエイティブ・ディレクターのレベッカ・ベイ(Rebekka Bay)は、ショー後に行われたプレス・インタビューで「東京は私たちにとって故郷のようなもので、今回のショーはその繋がりを示す絶好の機会となりました。」と、その喜びを述べた。

Courtesy of Marimekko

なお、楽天では、マリメッコのファッションショー開催にちなんで、ユニッコ柄の生誕60周年を記念したアイテムや、春のムードを演出する桜カラーのホームコレクションなど「by R」特別商品の販売も実施された。

楽天グループ株式会社で常務執行役員コマース&マーケティングカンパニーのシニアヴァイスプレジデントを務める松村 亮氏は、「by R」にてマリメッコのショーを開催したことについて、「ブランド認知度が国内外で高いマリメッコの魅力を、今回初めて参加する東京のファッションウィークを通じて、新しい角度から訴求出来たと考えています。」と述べ、

「『by R』が掲げている『日本と世界をつなぐ、また、多くの人にとってファッションを楽しむためのきっかけとなるブランドを楽天が独自に選出し、その魅力を最大化することにより日本のファッションシーンをエンパワーメントする』という大義をもとに、マリメッコ様のショー開催支援や特別商品販売などのプロジェクトを通じて、今まで以上に幅広いユーザー様への認知拡大と新しいお買い物体験を提供することができていると考えています。」と、その手応えを語った。

 

日本のファッション業界へ生成AIがもたらす変化

「楽天ファッション・ウィーク東京」を主催する一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構(以下、JFWO)は、各ブランドの最新コレクションの発表だけに留まらず、会期中のスケジュールに様々なファッション関連イベントを盛り込んだ。

例えば、JFWOと協力関係を結んだパリの展示会「トラノイ(TRANOÏ)」のプレスイベントや、東京クリエイティブサロンと共催するデニムラントーキョー(Denim RunTOKYO)、日本の繊維産地の活性化と、純日本製品の拡大を目的に活動するJクオリティ(J∞QUALITY)によるスペシャルコレクション(J∞QUALITYSPECIALCOLLECTION)の展示などを開催。

中でも目新しかったものが、「株式会社 OpenFashion」が3月16日〜17日の2日間に渡り実施した、生成AIを通してファッションの新たな領域を切り開くイベント「TOKYO AI Fashion Week」だ。当イベントでは、生成AIで作られた作品のコンテストから、エキシビション、最新AI情報セミナーまでを網羅し、生成AIを活用したファッション産業の新しい未来を発信。また、AIファッションコンテストでは、来場者がモニターに展示された応募作品を見て、気に入った作品に投票出来るという機会も設けられた。

JFWOの事務局長である古茂田 博氏は、「本件は、一言で語れるものではないですが、これから避けては通れないことと受け止め、いろいろな不安や未知な部分もありながら、我々としても果敢にチャレンジしているところというのが本音です。」と、この取り組みについてコメント。

併せて「生成AIとファッションが共存していくことで、日本のファッション業界にどのようなインパクトが齎されるか」という概ねの予測を尋ねたところ、「作業の効率化などポジティブな面もあり、AIとの共存により新たに生まれるメリットや職業もあると思っています。日本のファッションの最高峰のプラットフォーマーとして、一つの企業が何かをトライするということより、業界への気付きや興味関心をもっていただける機会を創出するべきと思い、その役割を果たしていけたらと考えています。」と、今後の可能性を述べた。

 

未来を見つめ、進化していく「楽天ファッション・ウィーク東京」

また、2024年度の「楽天ファッション・ウィーク東京」では、年間スローガンである「OPEN, FASHION WEEK」に基づき、より多くの人たちが日本のデザイナーズ・ファッションに触れる機会が設けられた。今シーズンからJFWOは、本格的に海外からのバイヤー・プレス誘致も開始した。

海外からの来客の一人であったシンガポール繊維・ファッション業界の公式団体であるシンガポール・ファッション協議会(Singapore Fashion Council)の代表を務めるティンティン・ジャン(Ting-Ting Zhang)氏は、今回初めて東京で各ブランドのショーを観覧。

当ファッション・ウィークの感想をジャン氏に尋ねたところ、「東京のファッション・ショーは、単なるランウェイ・ショーではなく、アートやエンターテイメントなど多角的な要素を融合させたプレゼンテーションを行っており、とても見応えがありました。また世界各国の都市からインスパイアされた物語をコンセプトやデザインに落とし込んでいたブランドもあり、とても興味深かったです。」と、興奮気味に話してくれた。

では、当ファッション・ウィークのタイトル・スポンサーであり、長年日本のファッション業界をリードしてきた楽天グループは、今後のファッション・ウィークについて、どのような展望を掲げているのだろうか。

同グループの松村氏は、次のように述べる。「日本と世界をつなぐ、また、多くの人にとってファッションを楽しむためのきっかけとなるブランドを中心に、引き続きショー開催の支援だけではなくEC支援を行っていき、ブランドのビジネスの成長も支援していくことで業界や産業支援にもつなげていきたいと考えています。ユーザー様には、「by R」プロジェクトを通して新たなブランド様との出会いを、ブランド様には新たなユーザー様との出会いの場を提供し、ひいてはそれがファッション業界の拡大に繋がることを目指しています。」

さらに、今後のグローバルを意識した戦略や、来シーズンのファッション・ウィークの取り組みについては、「ラグジュアリー、デザイナーなど百貨店系のブランドの参加を促すほか、より多くのユーザーに利用いただけるよう、魅力的なコミュニケーション、プラットフォームへエンゲージメントを高めていくことに対して引き続き注力していきたいと考えており、その中で、ファッション・ウィークとの連携を一層強化してまいります。」と続けた。

また、JFWOの古茂田氏は、楽天ファッション・ウィーク東京 2024年秋冬の会期を終え、今季を以下のように振り返った。

「『Rakuten Fashon Week TOKYO』というプラットフォームを主催する立場としては、常にデザイナーファーストであるべきと考えると、やはり、海外を視野にいれずには成り立ちません。が、開催のタイミング、物理的な距離などを考えるとヨーロッパ内の地続きのように簡単にはいきません。そのために支援プログラムの充実、とくに『TOKYO FASHION AWARD』や『FASHON PRIZE OF TOKYO』といった東京都との共催企画により、パリにてショールームに参加できるチャンスを提供したり、パリで新作コレクションを発表できる機会をつくったりするデザイナーサポートプログラムを実施し、欧州での日本のブランドの認知や興味関心につなげてきました。そいういった一定の期間を得て、ブランドの実力の向上あわせて、今回の海外ジャーナリストの誘致や、Tranoiのような海外の展示会を日本で展開することなどは、多少なりとも意義のあるものだと思っています。」

一方で、こうしたグローバルへ向けた取り組みはまだまだだ始まったばかりだと説明し、「今回来日された海外ゲストの方からの貴重な意見なども踏まえ、来季以降に活かしていきたいと考えています。 そして、東京が独自に培ってきたファッションカルチャーは世界的にも高い関心があると思っていますので、今後しっかりとTOKYO FASHIONの魅力を世界に向けて発信していきたいと思っています。」と来シーズンに向けた展望を述べた。

年間を通して、多岐にわたる新たな試みが実行された2024年度の「楽天ファッション・ウィーク東京」。こうした取り組みによって、今後はさらに世界のファッション関係者が注目をしていくビッグ・イベントへと飛躍していくことに期待が寄せられる。