ビル・ゲイツ(Bill Gates)の娘、フィービー・ゲイツ(Phoebe Gates)とソフィア・キアニ(Sophia Kianni)が共同創業したAIショッピングプラットフォーム「フィア(Phia)」に、現在、オンライン購入の成果を不適切に自社へ帰属させていた疑いが浮上している。
ブルームバーグ(Bloomberg)が7月9日(現地時間)に報じた調査を受け、アフィリエイトマーケティングプラットフォームのインパクト・ドットコム(impact.com)は、フィアのアカウントを停止。影響を受けた可能性のある取引について調査を進めている。
Summary
- フィービー・ゲイツとソフィア・キアニが共同創業したAIショッピングプラットフォーム「フィア」に、アフィリエイト報酬を不適切に自社へ帰属させていた疑いが浮上
- 調査では、決済時にバックグラウンドで自社の紹介リンクを読み込み、他のメディアや広告のトラッキング情報を置き換える動作が確認された
- こうした行為は、購入成果を不正に自社へ帰属させる「クッキースタッフィング」に該当する可能性があると指摘されている
- フィアは、最近のコード変更によって発生した不具合が原因であり、問題はすでに修正したと説明
- アフィリエイトプラットフォームのインパクト・ドットコムはフィアのアカウントを停止し、影響を受けた可能性のある取引を調査している
価格比較で急成長したAIショッピングアプリ
フィアは2025年4月、フィービーとキアニが正式にローンチしたショッピングアプリだ。アプリとブラウザ拡張機能を通じて、ユーザーが閲覧しているファッションアイテムの価格を比較し、より安価な商品やリセール市場の選択肢を提示する。ローンチ時には、4万を超える小売・リセールサイトに対応していた。
同社の収益源の一つが、アフィリエイトマーケティングである。フィアを経由したユーザーが提携先の小売サイトで商品を購入すると、売上の一部が成果報酬として同社に支払われる仕組みとなっている。
2026年5月時点で、フィアは累計4,350万ドル(約64億円)の資金を調達し、企業評価額は1億8,550万ドル(約273億円)に到達。クロエ・カーダシアン(Khloé Kardashian)、ヘイリー・ビーバー(Hailey Bieber)、パリス・ヒルトン(Paris Hilton)、カーリー・クロス(Karlie Kloss)など、多数の著名人も投資家として名を連ねている。
決済画面の裏側で紹介コードを挿入か
問題の中心にあるのは、ユーザーがフィアのリンクを自らクリックしていない場合にも、同社のアフィリエイトコードが挿入されていた可能性だ。
ブルームバーグや競合サービスのキャピタル・ワン・ショッピング(Capital One Shopping)による検証では、ユーザーが小売サイトの決済画面へ進むと、フィアの拡張機能がバックグラウンドで別のタブを開き、同社の紹介リンクを読み込む動作が確認されたという。
その結果、ユーザーを最初に小売サイトへ誘導したメディア、広告、クリエイターなどのトラッキング情報が、フィアの紹介コードに置き換えられるケースがあったとされる。フィアが購入のきっかけを生み出していない場合にも、同社が販売成果を主張し、手数料を受け取る可能性が生じる仕組みである。
こうした行為は、一般に「クッキースタッフィング」と呼ばれる。ユーザーによる明確なクリックや操作がないままアフィリエイト用の追跡情報を付与し、購入成果を自社に帰属させる手法だ。
独立系研究者もコードを検証
さらに、アフィリエイトマーケティングを研究するベン・エデルマン(Ben Edelman)も、フィアのアプリとコードを独自に検証したという。
エデルマンによると、フィアのiOS版では、ユーザーの操作なしにアフィリエイトリンクを自動的に読み込む機能が確認された。外部のパブリッシャーがすでにユーザーを小売サイトへ誘導している場合には、自社のアフィリエイト情報を挿入しない「スタンドダウン」と呼ばれる業界ルールも、適切に機能していなかったと指摘している。
エデルマンはさらに、この機能が2025年12月13日に公開されたアプリのバージョン1.9.33で初めて導入されたと分析。問題が「最近のリリース」に限定された不具合だったとするフィア側の説明に対して、疑問を呈している。
フィアは「コードの不具合」と説明
フィアはブルームバーグの問い合わせに対し、問題は最近のコード変更によって発生したもので、外部から指摘を受けるまで把握していなかったと説明した。
同社の広報担当者は、次のようにコメントしている。
「過去24時間以内に、最近のリリースによって当社のコードベースが一部のユーザーにおいて誤った成果帰属を引き起こしていたことを把握しました。通知を受けると直ちに、チームは一晩かけて問題を特定し、影響を軽減し、現在は解決しています」
ブルームバーグがフィアへの連絡後に再検証したところ、それまで確認されていたアフィリエイトリンクの自動読み込みは停止していたという。
一方、インパクト・ドットコムは第三者からの報告を受けて調査を開始し、フィアの動作が「当社のプラットフォームポリシーと一致しない」と判断。同社との取引を停止するとともに、影響を受けた可能性のある取引を精査し、必要な是正措置を検討している。
問われるアフィリエイト市場の透明性
アフィリエイトマーケティングでは、どのメディア、広告、クリエイターが購入を生み出したのかを正しく記録する成果帰属の仕組みが、事業の根幹を支えている。
購入直前にブラウザ拡張機能が紹介コードを書き換えれば、商品を紹介し、消費者を販売サイトへ誘導したパブリッシャーに支払われるはずの報酬が、別の事業者へ渡る可能性がある。小売企業にとっても、本来は発生していない送客に対して手数料を支払うことになりかねない。
急成長を続けてきたフィアにとって、今回の問題は単なる技術上の不具合にとどまらない。AIを活用したショッピングサービスが拡大するなか、ユーザーから見えない場所で行われる追跡や成果判定を、どのように監査し、透明性を確保するのか。
フィア側の修正を受けてもなお、問題となった取引の規模や期間、他のパブリッシャーの収益に与えた影響など、明らかになっていない点は多い。インパクト・ドットコムをはじめとする提携企業の調査結果と、フィアによる今後の説明が注目される。
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