リック オウエンス(Rick Owens)2027年春夏メンズ:「STONE」で問い直す現代のプロテクション

リック オウエンス(Rick Owens)2027年春夏メンズ
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6月25日(現地時間)、リック オウエンス(Rick Owens)は、パリのパレ・ド・トーキョーで2027年春夏メンズコレクション「STONE」を発表した。

不安定な世界情勢や社会に漂う緊張感を背景に、人は脅威とどのように向き合うのか。今季はその問いを出発点に、機能性とクラフツマンシップ、ブランド特有の彫刻的な造形美を融合し、防御、身体、権威というテーマを現代的なワードローブとして提示した。重厚なアーマーではなく、軽やかな素材と構築的なシルエットによって「プロテクション」という概念を再解釈したコレクションである。

現代社会への応答としての「STONE」

ショーに合わせて発表されたステートメントでは、リック・オウエンスは現代社会に対する自身の視点を次のように語っている。

「私たちは皆、脅威を処理している。

武装する者もいる。
鍛える者もいる。
目を背ける者もいる。
石になる者もいる。」

今季の「STONE」は、単に硬質な素材や無機質な美学を示すタイトルではない。不安や脅威と向き合う人間の在り方を象徴するコンセプトとして機能し、その思想は、構築的なシルエットや身体を包み込むボリューム、軽やかな素材使いを通して一貫して表現されていた。

権威をまとう、構築的テーラリング

中でも、今季のコレクションには、権威の象徴であるエポレット(肩章)が印象的なモチーフとして登場した。

オウエンスは、前シーズンでは重厚な存在感を放っていたエポレットを、春夏シーズンにふさわしい軽やかなディテールへと再解釈。シルクコットンポプリンで仕立てたコートやジャケットには取り外し可能なレザー製エポレットを採用し、権威や信頼の象徴を現代的なワードローブへと落とし込んだ。

また、シャープなショルダーラインが際立つテーラリングには、イタリア・ヴェネト州の老舗テキスタイルメーカー、ボノット(Bonotto)が織り上げた高密度のシルククレープを採用。構築的なシルエットと軽やかな素材使いを両立させることで、ブランドならではの建築的な美学を春夏らしい軽快さへと昇華していた。

Rick Owens fashion show in Paris, Spring Summer 2027 Menswear Fashion Week Photo by Valerio Mezzanotti

Rick Owens fashion show in Paris, Spring Summer 2027 Menswear Fashion Week Photo by Valerio Mezzanotti

クラフツマンシップが支える彫刻的な造形

ランウェイでは、伝統的なポリコットンジャージーに加え、軽量レザーやドイツで再生ナイロンから編み立てられたガードル素材など、多彩なテクニカルファブリックを用いたジョギングスーツが登場。スポーツウェアの機能性と、ブランドが得意とするフェティッシュな美学が融合したルックを披露した。

ボリューム感のあるキャバンには、再生ポリエステルやシルクデュシェスによる複雑な織物を採用。イタリア・コモ地方の伝統的な織機では1日に約25メートルしか生産できないという希少なファブリックを用いることで、彫刻のような立体感を実現している。

さらに、1920年代のビーズ装飾ランジェリーを思わせるシアータンクトップは、パリを拠点とするラテックスアーティスト、マティス・ディ・マッジオ(Matisse Di Maggio)が制作。1着の完成までに35時間以上を要し、4人の職人による手作業で仕上げられたという。ロンドンのフローレンス・ドルアール(Florence Druart)はラテックスケープを、ストレイトゥケイ(Straytukay)はフォームとラテックスによるテンセグリティ構造のチャップスを手掛けるなど、多様な専門技術がコレクションを支えた。

なお、テンセグリティとは、建築家・思想家バックミンスター・フラー(Buckminster Fuller)が1960年代に提唱した構造概念であり、圧縮と張力の均衡によって成立するシステムを指す。人体において骨が圧縮、結合組織が張力を担う構造にも通じる考え方であり、身体と構造美を結び付ける今季のクリエイションを象徴する要素となっている。

Rick Owens fashion show in Paris, Spring Summer 2027 Menswear Fashion Week Photo by Valerio Mezzanotti

Rick Owens fashion show in Paris, Spring Summer 2027 Menswear Fashion Week Photo by Valerio Mezzanotti

Rick Owens fashion show in Paris, Spring Summer 2027 Menswear Fashion Week Photo by Valerio Mezzanotti

アディダスとの協業で探る、機能性の新たな可能性

ランウェイのもう一つの柱となったのが、アディダス(adidas)との協業である。

リック オウエンスは、2027年発売予定となる高性能かつ手の届きやすい価格帯のテクニカルランニングシューズを発表するとともに、アディダスの「CLIMACOOL」システム技術をコレクションへ導入した。

内部ファンを備えたインフレータブルジャケットやショーツは、アイスベストと組み合わせることで個人用空調システムとして機能し、レース前のランナーの体幹を効率的に冷却することを目的として設計されている。パフォーマンスウェアの技術をラグジュアリーファッションへ取り込むことで、身体を支える機能性そのものをデザインの一部として提示した。

また、環境への取り組みについて、リック・オウエンスは次のようにコメントしている。

「私はアディダスの野心的な環境目標を称賛しています。同社は2年連続でCDP Climate A Listに選出され、世界で評価された企業の上位4%に入っています。私はこれまでも、環境危機への対応にはまだ長い道のりがある一方で、私たちは皆、どこかから始め、より高い目標を目指すことができると言い続けてきました。」

Rick Owens fashion show in Paris, Spring Summer 2027 Menswear Fashion Week Photo by Valerio Mezzanotti

Rick Owens fashion show in Paris, Spring Summer 2027 Menswear Fashion Week Photo by Valerio Mezzanotti

Rick Owens fashion show in Paris, Spring Summer 2027 Menswear Fashion Week Photo by Valerio Mezzanotti

恐怖や不安が日常となった現代において、リック・オウエンスが提示したのは、防御のための鎧ではない。軽やかな素材、卓越したクラフツマンシップ、そして最先端のテクノロジーを重ね合わせることで、現代を生きる身体の新たな可能性を提示した。今季の「STONE」は、未来のワードローブを構想するリック・オウエンスの思想を、静かな緊張感とともに映し出したコレクションであった。

リック オウエンス 2027年春夏メンズコレクションの全てのルックは、以下のギャラリーから。

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