米テクノロジー企業の「スナップ社(Snap Inc.)」は、6月16日(現地時間)、フランス・パリで開催されたテクノロジーイベント「Augmented World Expo 2026(AWE 2026)」において、新たな拡張現実(AR)グラス「スペックス(SPECS)」を発表した。
Summary
- スナップが新たなARグラス「スペックス(SPECS)」を発表し、2026年秋に米国、英国、フランスで発売予定
- AIアシスタント、空間コンピューティング、映像視聴、共同作業機能を搭載した完全スタンドアロン型デバイス
- 独自ディスプレイ技術やデュアルSnapdragonプロセッサーを採用し、7ミリ秒の低遅延を実現
- 開発者向けに新たなLens Studioツール群やAI開発支援機能を発表
- スティーブン・マイゼル撮影によるグローバルキャンペーンも始動
スペックスは、AIアシスタントや仕事用ツール、エンターテインメント機能を現実空間上に表示することで、人々がスマートフォンやPCの画面から視線を外し、周囲の人々や環境と関わりながら情報へアクセスできるよう設計されたウェアラブルコンピューターである。
同社はこれまで10年以上にわたり、AR向けのソフトウェア、OS、光学技術、ディスプレイ、コンピュータービジョン技術の開発を進めてきた。今回の発表は、その長年の研究開発を製品として具現化するものとなる。
「新しいコンピューティング時代の始まり」
スナップ共同創業者兼CEOのエヴァン・スピーゲル(Evan Spiegel)は発表に際し、次のように述べた。
「SPECSは、新しいコンピューティング時代の始まりです。これまでコンピューターは、私たちに下を向かせ、じっと座らせ、その瞬間から離れることを求めてきました。しかしSPECSは、私たちが生活し、働き、学び、創造し、人とつながる現実世界の中へコンピューティングを持ち込みます。」
また、「スマートフォンは私たちの生活をポケットの中に収めました。SPECSは、人生が実際に起きている場所である現実世界へコンピューティングを持ち込みます」とも語った。
AIグラスとヘッドセットの中間を狙う新カテゴリー
現在市場には、軽量で日常利用しやすい一方で機能が限定されるAIグラスと、高性能だが大型で装着負担の大きいヘッドセットが存在する。スナップはスペックスを、その両者の長所を組み合わせた新たなカテゴリーとして位置付けている。
本体はスイス製TR90ポリマー素材を採用し、47mmモデルで132グラム、52mmモデルで136グラム。外部バッテリーやケーブルを必要としない完全スタンドアロン設計となっている。
ディスプレイには独自開発のLiquid Crystal on Silicon(LCoS)技術を採用。51度の視野角と1,600万色表示に対応し、作業時には24インチモニター、映像視聴時には約115インチのホームシアターに相当する表示体験を提供するという。
さらに、ウェーブガイド技術を刷新したほか、ボーイング(Boeing)の787ドリームライナーに採用されている技術から着想を得た電気調光レンズも搭載。透明状態からサングラスモードへの切り替えを約10秒で行う。
現実世界を理解するAIとAR
スペックスには2基のSnapdragonプロセッサーが搭載されている。
1基はコンピュータービジョン処理を担当し、もう1基はARアプリケーションであるLensの実行を担当する構成だ。
これにより、高速なハンドトラッキングや低遅延な操作体験を実現。スナップによると、モーションから映像表示までの遅延は7ミリ秒であるという。
利用シーンとしては、
- 現実空間上へのナビゲーション表示
- 空間計測
- AIによるリアルタイム支援
- ホワイトボード利用
- PC画面共有
- 映像ストリーミング
などが想定されている。
また、ゴルフのパッティング支援や教育用途のARコンテンツなど、すでに数百種類のLensが開発されている。
AI機能についてスピーゲルは次のように説明した。
「SPECSにおけるAIは、チャットボックスに閉じ込められた知能ではありません。ユーザーが見ているものを見て、何をしようとしているかを理解し、その瞬間に支援する知能です。」
開発者向けツールを大幅強化
スナップはハードウェア発表と同時に、開発者向けプラットフォームの拡充も発表した。
同社は過去18か月間で10回のSnap OSアップデートを実施し、40以上の新機能やAPIを追加してきた。
今回新たに発表された主な機能は以下の通り。
- Claude Code、Codex、Cursorに対応したエージェント型開発機能
- AIモデルの空間認識性能を評価する「SPECS Spatial Benchmark」
- Unityプロジェクトの移行を支援する「Migration Agent」
- C/C++コードを利用可能にする「Native Development Kit」
- Lens内課金を実現する「Commerce Kit」
これらのツールにより、開発者は既存プロジェクトの移植や新規AR体験の開発をより迅速に進められるようになる。
プライバシーを重視した設計
中でもスナップは、ARデバイスの普及においてプライバシー保護が重要な要素であると強調している。
スペックスでは、機密情報へのアクセス前に明確な許可を取得する仕組みを採用。録画時にはLEDインジケーターが点灯し、データ処理は可能な限りデバイス上で行われる。
また、保存・共有・同期・削除するデータについてもユーザー自身が管理できる仕様となっている。
スピーゲルは、「人々がSPECSを信頼できなければ意味がありません。プライバシーは最初から組み込まれていなければならないのです」と述べた。
スティーブン・マイゼル撮影のキャンペーンも始動
さらに今回の発表に合わせて、スナップはグローバルキャンペーンも公開した。
撮影は著名フォトグラファーのスティーブン・マイゼル(Steven Meisel)が担当し、ジミー・バトラー(Jimmy Butler)、イモージェン・ヒープ(Imogen Heap)、ホヨン(Hoyeon)、ジャック・ハーロウ(Jack Harlow)、カイア・ガーバー(Kaia Gerber)が起用されている。
各クリエイターはスナップと協力しながら、スペックス向けの新たな体験コンテンツを開発しており、その成果は今秋以降に公開される予定だ。
スペックスは2,195ドルで予約受付を開始しており、2026年秋より米国、英国、フランスで出荷開始を予定している。




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