トム ブラウン(Thom Browne)2027年春夏:ミラノで咲いた“春の庭園”、軽やかに進化するブランドコード

Thom Browne
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6月22日(現地時間)、トム ブラウン(Thom Browne)ミラノ・ファッションウィーク・メンズにて、2027年春夏コレクションを発表した。

連日35度を超える猛暑に見舞われたミラノ。その気候を反映するかのように、今季のトム ブラウンはブランドの代名詞であるテーラリングをこれまでになく軽やかに再構築した。

会場となったのは歴史的建築であるパラッツォ・セルベローニ。2008年以来となるイタリアでのランウェイショーとなった今季、ブランドは約400個のシアサッカー製フラワーポットを格子状に配置し、“トムの庭園”と名付けられた幻想的な空間を創出した。規則正しく並ぶ鉢植えは、会場の新古典主義建築が持つシンメトリーと呼応しながら、コレクション全体の物語を象徴する舞台となった。

ミラノで再確認したブランドの原点

近年のトム ブラウンは、クチュール的な造形や演劇的なランウェイ演出によって独自の世界観を発展させてきた。一方で今季は、ブランドの原点であるアメリカントラッドとプレップスタイルへ改めて立ち返る姿勢が見られた。

もっとも、それは単なるノスタルジーではない。

グレー、ネイビー、ホワイト、レッドというブランドを象徴するカラーや、クリケットニット、ストライプタイ、グログランテープといったコードを維持しながら、それらを春夏らしい軽快なワードローブへと変換している。

ブランドの核を守りながら、時代に合わせて更新する。その姿勢こそが今季のコレクションを貫くテーマであった。

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シアサッカーが主役となった軽量テーラリング

素材使いは今季を語る上で欠かせない。ランウェイにはシアサッカーを中心に、ウィンドウペーンチェックのクールウール、オープンウィーブのコットン、グリッドチェックのウールピケ、軽量カシミア、マドラスチェックなどが登場した。

従来のトム ブラウンのテーラリングは構築的で重量感のある印象を持つことが多かったが、今季は裏地を省いたジャケットや半裏仕様のコートが数多く見られる。ノースリーブのバルカラーコートや半袖スポーツコート、軽やかなサックジャケットは、ブランドが得意とする仕立ての美しさを維持しながらも、現代の気候やライフスタイルに寄り添う提案として映った。

特に印象的だったのは、スーツとショートパンツ、スカートを組み合わせたルックの数々である。トム ブラウンが長年探求してきたジェンダーレスな表現は、もはや挑戦的な提案としてではなく、自然なワードローブの一部として提示されていた。

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“庭園”を彩る生き物たち

今季の物語をより一層特徴づけたのは、庭園を舞台とした装飾表現の数々だ。

蜂の巣を登るミツバチ、睡蓮の上を跳ねるカエル、トンボ、蟻など、庭園に生息する小さな生命が刺繍やアップリケによって表現される。これらのモチーフは、自然界における循環や成長、再生といったテーマを象徴しており、コレクション全体に生命力を与えていた。

また、放射状の刺繍や金糸による装飾、手描き風のチェック柄、インターシャ、パッチワークなど、多彩なクラフト技法も投入された。衣服の一部にはダメージ加工も施され、季節の移ろいや時間の経過を示唆する表現として機能している。

トム ブラウンが長年培ってきたクラフトマンシップが、今季は庭園という詩的なテーマのもとでより有機的に表現されていた。

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色彩に宿る春の高揚感

コレクションの序盤にはホワイトやグレー、淡いブルーを中心とした穏やかな色調で構成されたが、ショーが進むにつれてイエローやピンク、グリーン、スカイブルーが徐々に増えていく。

鮮やかなグリーンのロングコートやレッドのダブルブレストコート、パステルカラーのチェック柄スーツなどが登場し、まるで庭園が少しずつ花開いていくような色彩のストーリーを描いた。

トム ブラウンらしい規律ある構成の中に、春ならではの高揚感が巧みに織り込まれていた。

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フィナーレに込めた再生のメッセージ

ショーの最後を飾ったのは、圧倒的な存在感を放つ純白のルックだった。

パールを手作業で施したチュールベールに包まれた花嫁は、グログランテープで縁取られたコットンスイスドットのテーラリングをまとって登場。巨大なケープ状のシルエットは会場全体を包み込むような迫力を放ち、コレクションを壮大なフィナーレへと導いた。

春の始まり、生命の誕生、そして新たなサイクルの幕開け。

庭園というコンセプトを通じて描かれた物語は、この最後のルックによって完結したのである。

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ブランドの成熟を感じさせたコレクション

2027年春夏コレクションは、トム ブラウンがブランドのアイデンティティを大きく変えることなく、その表現をさらに成熟させたシーズンとして記憶されるだろう。

近年のトム ブラウンはショーピースとしての創造性を追求してきたが、今季はその創造性を維持しながらも、現実のワードローブとしての機能性とのバランスを見出したように見える。

アメリカントラッド、卓越したテーラリング、ユーモア、そして職人的な装飾表現。そのすべてを維持しながら、より軽く、より着やすく、より現代的なワードローブへと昇華した。

また、2008年以来となるミラノでの発表は、ブランドの原点を再確認しながら、新たなフェーズへと歩みを進める意思表示でもあった。

ラグジュアリー市場が実用性への回帰を強めるなか、トム ブラウンはブランドのアイデンティティを損なうことなく、その進化の可能性を示した。今季の“庭園”は、過去を振り返るための場所ではなく、次の成長を育むための土壌だったのである。

トム ブラウン 2027年春夏コレクションの全てのルックは以下のギャラリーから。

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