4月28日(現地時間)、マチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)は、「シャネル(Chanel)」のファッション部門アーティスティックディレクター就任後、初めて手がけたクルーズコレクションを、フランスのビアリッツ・ル カジノ ミュニシパルで披露した。
ブレイジーは「パリのサロンから遠く離れたビアリッツで、ガブリエル・シャネルは新たな在り方や視点、動きや自由を見出し、彼女はそれらを自身のファッションの基盤にしました」とショーノートに記し、「アーティスト、労働者、貴族、水兵、そして自然——あらゆる人とものが同じ舞台で日常的に共存し、それぞれが役割を担っていました」と綴った。
ショーのフロントロウにはニコール・キッドマン(Nicole Kidman)、ティルダ・スウィントン(Tilda Swinton)、ソフィア・コッポラ(Sofia Coppola)、エイサップ・ロッキー(A$AP Rocky)らの顔ぶれが並ぶ。額装された絵画と錬鉄の手すり、海を望むバルコニー、砂の色を帯びたランウェイ。舞台設定そのものが、すでに一篇の物語の冒頭となっていた。
1915年、ガブリエル シャネル(Gabrielle Chanel)はこのバスクの街に最初のクチュールハウスを開いた。コルセットを脱ぎ、ジャージーをまとった女性たちのために、彼女が「リゾート」という概念そのものを発明したのは1919年のことである。1世紀を超えて、ブレイジーは今その記憶のなかへ足を踏み入れる。歴史を再現するためではなく、彼自身の語法でもう一度、語り直すために。
ファーストルックを飾ったのは、一着のブラックドレスだった。1926年、米VOGUE誌が「シャネル フォード(Chanel Ford)」と呼んだ伝説のドレスを、ブレイジーは細部まで読み解き、現代の身体に翻訳している。アーカイブのオリジナルスケッチに描かれながら、長く忘れられていた背中の大きなリボン。それが今、クラッチバッグへと姿を変えて甦った。
「『リベンジドレス』について多く語られますが、これこそがブラックドレスの元祖だと言えるでしょう」というブレイジーの言葉は、決して大仰ではない。使用人、修道女、販売員たちのものだった黒のドレスを、上流階級の女性たちが憧れて身にまとうように仕向けた、ガブリエルが100年前に成し遂げたあの静かな革命を、ブレイジーは確信に満ちた手つきで、もう一度ランウェイの上に置いてみせた。



そこからコレクションは、潮が引いては寄せるようなリズムで広がっていく。
セーラーのマリニエール由来のバスクストライプが何度も姿を変えて現れ、ブルー ドゥ トラヴァイユを思わせるウォッシュドコットンのスーツが続く。ラフィアのスカートが揺れ、シルクのスカーフが宙を舞う。ニットのスイムキャップには魚のヒレのようなディテールが添えられ、誇張されたサイズのストライプ柄ビーチパニエが砂の上を行く。




コスチュームジュエリーには貝殻のイヤリング、海藻を模したビーズ、そしてシャネルのコスチュームパール。アール デコ建築の幾何学が静かに息づき、ヒールキャップのシューズが、サロンとビーチを軽やかに往復していた。
フレンチワークウェアの慎ましさと、リゾートウェアの華やぎが、衝突することなくひとつの語彙のなかへ流れ込んでいく。






また、ダブルCは、このコレクションでロゴとしてではなく、衣服の構造そのものとして再登場した。1930年代、ガブリエルがその曲線を装いの内側へと織り込んだ史実を、ブレイジーは引き継ぐ。ブランドの記号を、もう一度クチュールの言語へと翻訳する作業である。
「身体の自由なくして美しさは存在しない。」
ガブリエルが残したこのフレーズは、コレクション全体に流れる通奏低音だ。働く女性の制服、水兵の縞模様、修道女の慎ましやかな黒。それらがクチュールの高みへと昇華されるとき、貴族とアーティストと労働者は、同じ砂浜の上を裸足で歩く。階層は溶け、装いは自由に呼吸を始める。


フィナーレが近づくにつれて、コレクションは深い水のなかへと潜っていった。オレンジとアクアマリンのスパンコールが魚の鱗のように煌めくマーメイドシルエットのガウン、海底の宝物のようなジュエリー、貝殻と珊瑚を映したビーズワーク。
モデルたちの髪は濡れたまま無造作に後ろへ流され、ちょうど波から上がってきたばかりの女神たちのように見えた。







これだけのレガシーを背負うメゾンで、初めてのクルーズに「自由」を主題として据える。その選択は、ある意味で大胆である。しかしブレイジーは、シャネルの記号を新しい身体性のなかで響かせる術を心得ている。装いは古びることなく、それでいて懐かしさのなかで深く呼吸していた。
シャネル 2026/27年 クルーズコレクションの全てのルックは、以下のギャラリーから。
Copyright © 2026 Oui Speak Fashion. All rights reserved.